踵の骨脆弱性骨折 (踵骨骨脆弱性骨折)

主に体重のかかる部分に骨脆弱性骨折は生じますが、
最終的に地面からの衝撃を受ける中足骨や踵骨にも骨脆弱性骨折は見受けられます。

このページでは、比較的多くはみられる、踵骨の骨脆弱性骨折をご紹介します。

下の絵にあるように、
体重を支えるために分散された力と、地面からの反力によって中足骨や踵骨の後方に負担がかかります。

骨粗鬆症が基盤となって骨の強度が弱くなった所に、
上記のような力が加わり続けることで、骨脆弱性骨折が生じます。

実際、レントゲンを撮ってみると、初診時にはわからない骨折線が、
時間の経過とともに骨硬化像(赤矢印の部分)としてあらわれてきます。

下の写真は右踵骨(向かって左)の骨脆弱性骨折の一例です。

踵骨の骨脆弱性骨折は、痛み始めはレントゲンで異常が見られないことがほとんどです。

しかし、痛みが引き始めてくる1ヶ月前後で、赤色矢印で示したように新しい骨ができてきて、初めて骨折だとわかります。

以下で、実際の患者さんについて御紹介したいと思います。

〜症例1〜

68歳の女性です。

両方の踵の痛みが強く、歩くときに増強するので来院されました。

人工膝関節の手術のため入院し、術後しばらくしてから踵の痛みを訴えておられましたが、入院先の病院ではレントゲン検査もせず、放置されていました。

退院後も、痛みがあったので、当院に来院されました。

初診時には右の踵の骨のレントゲンには何も写っていません。

しかし、左側の踵骨には骨硬化像を認めたので、踵骨の骨脆弱性骨折であると判断しました。

当日の処置としては、踵用の足底板を処方し、靴に入れて、経過を見ました。

後日右側のレントゲン写真を撮ってみると、骨硬化像があり、右の踵も骨脆弱性骨折と判断できました。

この時点で、痛みもなく、歩くのにも問題がなかったので、治療は終了しました。

〜症例2〜

67歳の女性です。

左の踵が痛いということで来院されました。

1週間前から思い当たる怪我もなく、歩き始めが痛くなり、徐々に痛みが増強し、体重をかけることができないぐらいまで痛みが強くなったので、来院されました。

外観でも、左の踵が腫れているのがわかりました。

MRIを撮ってみると、赤色矢印の先に示した部分に骨折線を認めたので、踵骨の骨脆弱性骨折と判断しました。

足底板を処方することで、症状が軽快し、その後も痛みは出ませんでした。

〜症例3〜

78歳の女性です。

左踵の痛みを訴えて来院されました。

9日前、歩いているときに左踵に痛みが出てきたそうです。

思い当たる誘因もなく、痛みが出てきて、1週間ほど様子をみておられたのですが、 症状は治まるどころか、ひどくなってきており、腫れも出てきたため、来院されたそうです。

こちらの外観写真は初診時のものです。

赤色矢印の部分に痛みがあり、限局した圧痛が認められました。

こちらのレントゲン画像は初診時のものです。

レントゲン画像では骨などに特に異常は見られませんでした。

こちらのレントゲン画像は踵骨を正面から見たものです。

角度を変えて撮影したレントゲン画像でも、骨に異常は見られませんでした。

しかし、痛みが強いことと、思い当たる誘因がなく踵が痛くなったこと、ご年齢などから、踵骨骨脆弱性骨折を疑い、MRI撮影を行いました。

こちらのMRI画像は初診時より約10日経過してから撮影したものです。

赤色矢印の踵骨側面でのMRI画像で輝度変化がみられ、圧痛部位と一致することから、踵骨骨脆弱性骨折であると判断しました。

こちらのレントゲン画像は約1ヶ月後のものです。

赤色矢印で示した踵骨の部分に骨硬化像(仮骨)が認められました。

この時点で、痛みも消失していました。

こちらのレントゲン画像は別角度から撮影したものです。

赤色矢印の部分に骨硬化像(仮骨)が認められました。

痛みのある間の治療としては、踵にクッション付きのサポーターをして過ごしていただきました。

〜症例4〜

76歳の女性です。

左踵の痛みを訴えて来院されました。

約1ヶ月前より、痛みがあり、しばらく様子をみられていたそうです。

こちらの外観写真は初診時のものです。

赤丸印で囲んだ左足関節は、全体的に腫れているのがわかります。

こちらのレントゲン画像は初診時のものです。

赤丸印で囲んだ部分が痛みを訴えている左踵骨の部分です。

はっきりとした骨硬化像がわかりにくかったため、MRI撮影を行うことにしました。

こちらのMRI画像は初診時より約1ヶ月後のものです。

踵骨の部分に縦に輝度変化が認められました。

思い当たる誘因なく、長期間痛みが続いていることや、体重をかけると痛むことや、限局した圧痛が左踵骨に認められることから、骨脆弱性骨折であると判断しました。

こちらのレントゲン画像は約1ヶ月後のものです。

痛みが出てからは、この時点で約2ヶ月程度たっていました。

赤色矢印で示した踵骨部分に2カ所骨硬化像が認められ、ようやく歩行時の痛みも消失しました。

この方は、踵のクッションと免荷を目的に杖を使用して治療を行いました。

踵骨の骨脆弱性骨折は、最初はレントゲン写真ではっきりとわからないのですが、
足底板処置などをして、患部にある程度負担がかからないようにしながら様子を見ます。

それでもなお痛みが完全にとれず、長引いている場合は、
再びレントゲンを撮ったり、MRIを撮ることで、
骨脆弱性骨折を発見することができます。

骨粗鬆症があって、原因不明の足部の痛みが続いている場合、
骨脆弱性骨折を疑ってみてください。

また、そういった場合には、痛みを我慢せずに
早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします!

PAGE TOP