蜂窩織炎(急な腫れと熱があり、痛い!)

「急に足が腫れて痛い!」、「けがをした記憶も無いのに、腫れて熱がある!」など

原因不明の痛みが生じる疾患に、蜂窩織炎があります。

蜂窩織炎という言葉は、聞き慣れないものだと思いますが、わかりやすくいうと、細菌の感染症です。

細菌の感染が起こることで、患部の腫れや熱感、皮膚の発赤や、痛みが生じます。

蜂窩織炎は足に起こることが多いのですが、膝関節や下腿部、肘などにも起こります。

このページでは、いろいろな部位に起こっている実際の症例をご覧いただき、詳しくご説明していきたいと思います。

蜂窩織炎とは?

蜂窩織炎とは、皮膚とその下の組織に炎症が生じる、細菌による感染症のことです。

感染により、膝関節や、足関節、下腿部や足部、手などあらゆる場所で生じます。

以下の写真は蜂窩織炎で見られた実際の外観です。

赤丸印で示した部分は、発赤や熱感、圧痛、腫脹が見られます。

中には、感染による発熱など全身症状が生じる場合もあります。

蜂窩織炎はどのようにして起こるのか?

蜂窩織炎は、細菌による感染症と述べましたが、いろいろな感染の仕方があります。

水虫や、擦り傷、虫刺されなどが原因で、細菌が侵入し、化膿性の炎症を起こすことがあります。

しかし、傷口などがなくても、打撲後などに毛穴から細菌が感染することもあります。

骨折や軟部組織の損傷と違うところは、レントゲンで異常が無く、皮下出血が出現しないことです。

また、似た疾患に滑液包炎などがあげられます。

下の写真は、蜂窩織炎と滑液包炎の方の膝を比較したものです。

蜂窩織炎の場合

滑液包炎の場合

蜂窩織炎は膝だけでなく、貼れている場所が広範であり、発赤や腫脹、圧痛、熱感が認められるのに対して、
滑液包炎は、腫れは局所的にあるものの、発赤や熱感、圧痛は認められません。

写真を見ていただくと、症状の判別がはっきりわかると思います。

以下の写真は蜂窩織炎の場合の手と、骨折の場合の手の外観を比較したものです。

蜂窩織炎の場合

骨折の場合

打撲による蜂窩織炎の場合は、皮膚の表面に腫脹や発赤、熱感、圧痛が認められます。

打撲による骨折の場合は、蜂窩織炎と同じように腫脹や熱感が見られますが、
右側の写真のように、掌側に皮下出血が出現したり、限局した圧痛が見られます。

蜂窩織炎では、皮膚の表面だけが炎症を起こしているので、掌側には異常は見られません。

一見、打撲後に腫れていると、骨折している様に思いますが、実は蜂窩織炎である場合もあります。

以下で、いろいろな部位で生じている蜂窩織炎の症例をご覧いただきたいと思います。

45才の男性です。

左肘の痛みと腫れを訴えて来院されました。

2日前より、外傷無く急に腫れて、痛みを覚えるようになったそうです。

左の写真は初診時のものです。

赤色矢印で示した部分に発赤が見られ、
その周辺が腫れていることがわかります。 

左の写真は側面から見たものです。

肘の腫れている部分だけ、赤くなっていることがわかり、
体温が38.5度と、発熱もありました。

血液検査を行ったところ、白血球は高値を示しており、
炎症反応を表すCRPも基準値以上でした。

よくお話を聞くと、鉄工所に勤務していて、
肘をつきながら溶接作業をしているとのことでした。

エピソードから、蜂窩織炎と考え、
抗生剤を投与したところ、症状は軽快しました。 

51才の男性です。

左膝の痛みと腫れを訴えて来院されました。

昨日、仕事で作業中、左膝に鉄材がぶつかったそうです。

痛みは軽かったのだそうですが、翌日痛みが強く、
歩きにくいとのことでした。

左の写真は初診時のものです。

赤丸印で示した部分が赤く腫れ上がっていることがわかります。 

左の写真は側面から見たものです。

赤色矢印部分は鉄材がぶつかった場所で、
その周辺で赤く腫れています。 

局所の熱感も感じられたため、血液検査も行いました。

左の写真は血液検査の結果です。
炎症反応を示すCRP、白血球の項目で高値を示していました。

打撲後の蜂窩織炎と考え、抗生剤を投与しました。

77才の女性です。

右足の痛みと発赤を訴えて来院されました。

3日前にジュースの瓶を足に落とし、
2日前の夜から晴れて痛みがあるとのことです。

昨日より、発赤と熱感および痛みが強くなってきたとのことでした。

左の写真は初診時の外観です。

赤色矢印で示した部分に瓶を落としたとのことです。

レントゲン検査では、骨折など骨に異常はありませんでした。

左の写真は翌日、来院時の外観写真です。

腫れはさらに強くなっており、
こぶのような物が赤色矢印のところに見られます。 

エピソードから、打撲による蜂窩織炎と考え、
膨隆部を切開し排膿しました。

膨隆部は、消失し、痛みは数日でなくなりました。

52才の男性です。

左足関節外果部の痛みを訴えて来院されました。

2日前、フローリングの床で、
あぐらをかいて長時間資料を整理されていたそうです。

その後、痛みを覚えるようになり、外果部に発赤が出現したそうです。

左の写真は初診時の外観です。

赤色の丸印で示した部分が赤く腫れていることがわかります。

けがなどで痛くなったわけではなく、腫脹や局所熱感、
エピソードなどから蜂窩織炎と考え、血液検査を行いました。

左の写真は、血液検査の結果です。

血液検査では、炎症反応を示すCRPが高値となっており、
白血球の数値も高くなっていることから、
外果部は蜂窩織炎による化膿と考えられました。

抗生物質を投与後は、5日で腫脹は軽快していきました。

55才の男性です。

右小趾の痛みと腫れを訴えて来院されました。

4日前、靴擦れをしてから足が腫れて痛くなったそうです。

左の写真は初診時の外観です。

赤色矢印で示した部分は、靴擦れした部分です。

足背から足関節のあたりまで、腫脹と発赤、熱感が認められました。

靴擦れによる傷口から、感染した蜂窩織炎と考え、
抗生物質を投与しました。

投薬後は、症状が徐々に軽快していきました。

51才の男性です。

右下腿部の腫脹と発赤に気づいて来院されました。

外傷などの思い当たる誘因無く、右下腿部が赤くなってきたそうです。

左の写真は初診時のものです。

赤色の丸印で示した部分に腫脹と発赤、熱感が認められました。

はっきりとした原因はわかりませんでしたが、
症状より、 蜂窩織炎と考え、血液検査も行いました。

左の写真は、血液検査の結果です。

炎症反応を示すCRPと白血球が高値になっており、
蜂窩織炎による発赤や腫脹、熱感であるとわかりました。

抗生物質により、症状は軽快していきました。 

17才の男性です。

右手背部の痛みを訴えて来院されました。

剣道部に所属されており、2日前部活中、
竹刀が右手背部に当たったそうです。 

その後、熱感と腫脹が出現してきたそうです。

左の写真は初診時の外観です。

赤丸印で示した部分に腫脹と発赤、熱感が認められました。

17才の男性です。

右手背部の痛みを訴えて来院されました。

剣道部に所属されており、2日前部活中、
竹刀が右手背部に当たったそうです。 

その後、熱感と腫脹が出現してきたそうです。

左の写真は初診時の外観です。

赤丸印で示した部分に腫脹と発赤、熱感が認められました。

蜂窩織炎は身体の様々な部位で起こる可能性があります。

けがなどしていないのに、熱感や腫れが出現する場合や、
打撲の後、レントゲンに異常が無いのに腫れが続いている場合には、蜂窩織炎を疑ってみてください。

蜂窩織炎であれば、化膿性の炎症ですので、血液検査で炎症を示す数値(CRPや白血球)が高くなります。

治療は抗生物質の投与で、症状が軽快します。

治療を開始する時期によって、症状が軽快する期間も変わってくるので、
できるだけ早い目に医療機関の受診をお勧めします。

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