むずむず症候群とは、あまり聞きなれない疾患名かと思いますが、むずむずとした異常感覚を訴える疾患のことです。
とりわけ、足にむずむず感がでることから、「むずむず脚症候群(RLS:Restless Leg Symdrom)」、
または「下肢静止不能症候群」ともいわれています。
しかし、本疾患の原因は、神経間で見られる伝達機能の障害であるため、足に限らず手や体幹にも起こりうると考えられます。
このページでは、むずむず症候群とは、どんな病気で、見た目では分からないこの病気の特徴などについて、
ご紹介していきたいと思います。
むずむず症候群とは?
「むずむず」という言葉にあるように、じっとしていられないような、落ち着かないような症状を有するのがこの疾患です。
具体的なイメージを持っていただくために、下にこの疾患の診断基準を示しておきますので、ご覧ください。
むずむず症候群の診断基準はあくまでも患者さんが訴える症状が元であり、
レントゲンや、血液検査などの特別な検査で診断するものではありません。
このように、外から見て腫れているとか、赤くなっているとかいうような外観上の変化も無く、
上記の4つの症状を総て満たす場合に「むずむず症候群」であると診断します。
むずむず症候群の症状
むずむず症候群の症状は、診断基準にも示したように、さまざまな症状を訴えるのが特徴的と言えます。
そこで、特徴的な症状を、具体的に挙げていきます。
① 不快な感じ。
不快な感じは必ずしも「むずむず」ではなく、皮下に虫が這うような感じであったり、
説明しがたい不快感があったり、あるいは、痛みとして感じることもあります。
また、上肢にも異常な感覚を伴うことがあります。
したがって、むずむず症候群は「むずむず」といった表現以外にも、以下のようないろんな訴え方をする場合があります。
② 安静により症状の増悪。
むずむず症候群は長時間座っていたりすることによる安静などで症状が強く出現します。
安静と言っても、肉体的な安静と、精神的安静の双方があります。
たとえば、じっとしていても、パソコンなどで頭を使って作業などをしていると、気がそれ、肉体的には安静状態ではありますが、
精神的な安静状態ではないため、不快感は軽減するといわれています。
③ からだ(四肢)を動かすことにより、症状の改善がみられる。
不快な感覚を取り除くために、脚を常に動かしたくなったり、もんだり、たたいたり、
歩きまわるなどの行為が症状の軽減につながります。
動かすことで、不快感からは解放されますが、静止すると、また再燃するといったことを繰り返します。
症状が重度になると、このような動作を行っても完全に改善しないこともあります。
④ 日中より、夕方・夜間に症状の増悪が見られる。
むずむず症候群は夕方から夜にかけて不快感が出現したり、強くなることが、もっとも特徴的な症状と言えます。
そのため、睡眠の妨げになり、医療機関を受診されることが多く見受けられます。
症状が増悪するピークは真夜中です。
むずむず症候群がおこる原因
以下の図は、むずむず症候群が起こる原因を図にしたものです。
その原因は、神経細胞の間で、ドーパミン(神経の情報伝達物質)と、
それをキャッチするレセプター(受容体)のやり取りがうまくいかないことであるとされています。
正常な場合は、情報を送る側の神経からドーパミンが放出され、
情報を受け取る側の神経のレセプターでキャッチし、
情報を伝達を行います。
むずむず症候群の場合は、情報を送る側の神経から放出されたドーパミンが情報を受け取る側の神経のレセプターでうまくキャッチできずに情報の伝達がうまくいきません。
こういったむずむず症候群を改善するための治療は、ドーパミンをキャッチするために
レセプターを活性化させる事を目的とした投薬治療が主なものとなります。
このように、投薬を行う事で、神経細胞間での情報伝達が活性化され、
不快感やむずむずするといった状態は改善します。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
77歳の女性です。
両足の痺れを訴えて来院されました。
2年前より、じんじんと熱い感じが両足部にあり、
痺れも訴えておられました。
現在、他の疾患で投薬治療を受けておられます。
最近、痺れ感が強くなってきたため、
原因を突き止めたいという事で、受診されました。
脚の痺れなどを訴えておられたので、
腰の疾患なども念頭に置き、問診などを行いましたが、
間欠性跛行も無く、知覚低下もありませんでした。
以上のことから、むずむず症候群を疑い、
左の図の診断照らし合わせて問診を行ったところ、
すべての項目に当てはまりました。
むずむず症候群と診断し、投薬治療を行ったところ、
症状は改善しました。
83歳の男性です。
両足の痺れ、むずむず感を訴えて来院されました。
4か月前より、両下腿の脱力感があり、
歩きにくさを訴えておられました。
また、夜は両足がむずむずして、じっとしてできず、
睡眠障害があるとのことでした。
左のレントゲンは、腰を横から見たものです。
腰椎の加齢的な変化は見られますが、
腰が悪いという所見は特にありませんでした。
夜間にむずむず感が増悪したり、
じっとしていられないなどといった症状と、
診断基準を照らし合わせたところ、総ての項目に該当したため、
むずむず症候群であると診断しました。
むずむず症候群に対して、投薬治療を行ったところ、
むずむず感は軽快し、睡眠が可能となりました。
80歳の女性です。
胸背部が5年前よりむずむずするという事で来院されました。
内科を受診されたそうですが、症状は改善しないとのことでした。
むずむずだけではなく、チクチクといった痛みもあるようで、
夜に横になると、むずむず、チクチクといった症状が強くなるそうです。
しかし、昼間は以上のような症状はほとんど感じないという事でした。
左の写真は、胸背部のレントゲンです。
脊椎由来の痛みを疑うような所見はありませんでした。
また、内科的な疾患もこのレントゲンからは確認できませんでした。
以上のことから、胸背部に発症したむずむず症候群と考え、
投薬治療を行いました。
1週間後には、夜間のむずむずするような症状は消失し、
ぐっすりと寝られるようになったそうです。
76歳の男性です。
半年前より右手がむずむずするという事で来院されました。
左の図で示した水色で示した部分にむずむず感があるとのことでした。
他の疾患で投薬治療を受けておられるとのことです。
右手のむずむず感は夜間に強くなり、睡眠障害をきたしているとのことでした。
左の写真は頚椎のレントゲン画像です。
レントゲンでは異常はなく、手のむずむずが頚椎由来による痺れなどではないという事がわかりました。
また、むずむず感を訴える範囲と、末梢神経障害で訴える痺れの範囲との一致する所見は見られませんでした。
以上より、右手のむずむず症候群と考え、投薬治療を行ったところ、1週間後にむずむず感は消失したとのことでした。
また、睡眠障害も消失したとのことでした。
むずむず症候群は、はっきりと目に見えてわかる疾患ではないので、わかりにくい疾患です。
上記にもあったように、足に限らず背中や手にもむずむずした症状がみられ、
その訴えをキャッチすることで、この疾患であることが確認できます。
原因がわからず、むずむずするということで、お困りの方がいらっしゃれば、
このページを見て、ご自身の症状と照らし合わせてご覧になってみてください。