MRIによる経過
レントゲン写真による経過
先のページでは、運動を休止して経過観察をすることで、骨癒合が得られるということを御説明しました。
以上のことから、分裂膝蓋骨の成因は先天性といわれていましたが、
多くの患者さんの治療に実際に関わっていくうちに、
筋の牽引力により生じた裂離骨折であるとわかりました。
骨癒合の可能性が残されている若年層の患者さんには、
骨癒合を目的とした保存療法(固定療法)を行い、ほとんどの方が骨癒合しています。
以前は、先天性といわれていたために、子供たちが膝の痛みを訴えていても、処置することなく放置し、
痛みをこらえながらスポーツを行っていました。
しかし、裂離骨折であるので、適切な固定を行い、スポーツを一時中止すれば、骨癒合が得られます。
以下で、裂離骨折によって生じる分裂膝蓋骨について詳しくご説明いたします。
疼痛発生の成因
上の図は上から膝のお皿を見ている絵です。
分裂部分に外側から靭帯や筋肉が付着しています。
膝を曲げたり、ジャンプで着地したりすると、
矢印①・②・③のような力が働き、③の矢印の部分を支点として、分裂部分が広がるような力が働きます。
上の図は、右膝を正面から見た図です。
外側広筋が分裂骨片を斜め上に引っ張るような作用が生じます。
以下で装具療法にて分裂部の骨癒合を得られた方の経過をご紹介します。
9歳男性 右膝の痛みを訴えて来院されました。
2022年の12月に右膝を鉄パイプにぶつけた際に痛みを覚え、他院を受診したところ先天性の分裂膝蓋骨といわれ、その後2週間様子を見ていた。しかし、痛みが変らないので別の病院でMRIを撮影したところ骨挫傷と診断されました。さらに2か月経過を見ても痛みが消失しないので病態と治療方針を相談しに当院に受診されました。
当院を受診されたのは3月でした。以下でレントゲン写真とMRI画像を経時的に御紹介します。
(2022年12月の画像と2023年1月のものは他院の画像です。)
当院を再度受診された6月の時点では右膝の痛みが消失していました。
MRI画像にて輝度変化が消失し、レントゲン写真では骨癒合が確認できました。この時点で体育の授業と水泳クラブへの参加を許可しています。
さらに、8月に来院されたときには、分裂部の亀裂が完全に消失していました。その後10月に撮影したMRI画像では完全に輝度変化もなかったことから骨癒合が完成したものと判断しました。
この方は当院へ来られてから約4カ月間の装具療法を行って最終的に骨癒合を得ることができました。
続いて、ギプス固定を行い、骨癒合が得られた方の経過をご紹介します。
11歳の男の子です。
左膝の痛みを訴えて来院されました。
3か月前より、痛みがあり、近くの病院を2件回って、
分裂膝蓋骨との診断を受けました。
3日前に、サッカーをしていて転倒し、左膝を強打し、
痛みが強くなったので、当院を受診されました。
左のレントゲンは正面から撮影した初診時のものです。
痛みを訴えている赤色矢印の部分に分裂した骨片が認められました。
痛みを訴えていない右膝の青色矢印の部分にも、
分裂した骨片が認められました。
左のレントゲンは膝を立ててとったレントゲン写真です。
左膝蓋骨の外側に分裂した骨片がありました。
右膝蓋骨の外側にも分裂した骨片がありますが、
痛みのある左膝にギプス固定を行い、
スポーツの中止を指示しました。
左のレントゲンは、分裂部を拡大したものです。
赤色矢印の部分で分裂しているのがわかります。
詳細に分裂部を確認するため、CT撮影を行いました。
それぞれの方向から撮影した写真で、
はっきりと分裂部の状態が確認できました。
初診後1カ月のレントゲン写真です。
赤色矢印でしめした分裂部は
初診時のレントゲンより不明瞭になってきていることがわかります。
初診時より2ヶ月後のCT画像です。
赤色矢印で示した分裂部の間隙は消失し、
骨癒合していることが確認できました。
骨癒合が認められたため、スポーツ復帰を許可しました。
11歳の男の子です。
左膝の痛みを訴えて来院されました。
4か月前、サッカーをしていて膝を地面にぶつけてから、
痛みが続くという事で来院されました。
左のレントゲンは初診時のものです。
赤色矢印で示した膝蓋骨外側部に分裂した骨片が認められました。
左のレントゲンは膝を立ててとったレントゲン写真です。
赤色矢印で示した部分に分裂した骨片が確認できます。
レントゲンでは分裂部をより詳しく見るために、CT撮影を行いました。
左の写真はCT画像です。
赤色矢印の部分ではっきりと分裂部の状態が確認できました。
治療は、ギプス固定とスポーツ中止を行いました。
左のCTは初診時より2ヵ月のものです。
赤色矢印で示した分裂部の間隙は消失しており、
骨癒合していることがわかります。
骨癒合が認められたため、スポーツ復帰を許可しました。
11歳の男の子です。
両膝の痛みを訴えて来院されました。
2ヵ月前、サッカーをしていて左膝が痛くなり、
近隣の整形外科で分裂膝蓋骨と診断されました。
2日前より右膝にも痛みが出現してきたため、
当院を受診されました。
左のレントゲンは初診時のものです。
赤色矢印の部分に分裂した骨片が認められます。
左のレントゲンは膝を立ててとったレントゲン写真です。
赤色矢印の部分で分裂していることがわかります。
しかし、はっきりとした状態がわかりにくいため、
CT撮影を行いました。
左のCTは正面から撮影したものです。
分裂部の状態がはっきりと確認できます。
別の角度から撮影したCT 画像でも、
分裂部の状態が、はっきりと確認できます。
痛みが強かった左膝にギプスの固定を行い、
スポーツ中止を指示しました。
左のレントゲンは、初診時より2週間後のものです。
赤色矢印の部分で、
分裂した部分が不明瞭になってきていることがわかります。
左のレントゲンは、違う角度から撮影したものです。
赤色矢印で示した分裂部は不明瞭になってきており、
骨癒合に向かっているということがわかります。
初診時より2ヶ月後のCT画像です。
赤色矢印で示した分裂部の間隙は消失しており、
骨癒合していることがわかります。
違う角度から撮影したCT画像でも、骨癒合していることが確認できたので、 骨癒合と判断し、スポーツ復帰を許可しました。
左の写真は当院初診時の外観です。
右膝の外側の痛みを訴えて来られました。
2日前に、運動会でカーブを走っている際、
他の人の膝が右膝の外側に当たって受傷したもようです。
(転倒したりしたわけではありません。)
その後、膝の腫れがひどくなり膝の曲げ伸ばし時の痛みが増強したため近隣の整骨院を通じて当院を紹介され、来院されました。
左のCTの画像で赤丸がついている部分の骨が、
左上から側面にかけて割れているのがわかります。
分裂膝蓋骨であると判断して、経過を観察することとしましたが、
痛みも強く、膝の腫れも著しいので、ギブス固定を行なうことにしました。
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初診時のレントゲン写真を拡大したものです。
ギプス固定して、1ヵ月後のレントゲン写真です。
当初あった分裂部分の線が消えて、
骨癒合が得られた(骨がくっついた)ことがわかります。
上の写真と同じ1ヵ月後の膝を左右比較したレントゲン写真です。
右側の膝は、ほぼ分裂している線はみられません。
しかし、左側にはまだ分裂した線が見られます。
(痛みなど自覚症状は無いようです。)
上記の時点で、ギプス固定からサポーター療法に変わりました。
このサポータは写真で分かるように、前開きのサポーターです。
U字型のパットは本来右外側についているのですが、
外側広筋の伸展を止める為に、あえて膝の斜め上に移動させました。
こうすることで、外側広筋によって、
膝のお皿の骨が引っ張られるのを防ぎ、骨をサポートします。
初診時から2ヶ月経った時点でのレントゲン写真です。
完全に分裂していた部分の骨融合がみられます。
(骨がちゃんとくっついています。)
痛みなどの自覚症状も無く、
膝の屈伸も問題なくできるようになっていましたので、
クラブ活動も許可されました。
左のレントゲン写真は、13歳の野球部所属の男性です。
2ヶ月前に徐々に痛み始めて、
1か月前の運動会で走って、激痛をおぼえて病院へ行かれました。
近くの整形外科で分裂膝蓋骨と診断されて、
シップと痛み止めの注射で様子を見ておられましたが、
痛みが無くならないので、
当院のホームページをご覧になって御来院になりました。
赤色矢印の先が示している部分で、
膝蓋骨が割れていることがわかります。
より詳しく見るために、CT撮影をしてみると、
膝蓋骨の外側に分裂骨片が見られました。
別の角度から見てみると、
少し分裂部分の隙間が開いているように写りましたが、
怪我をしたきっかけがはっきりわかっていて、
なおかつ、以前の方とよく似た分裂部分の形態をしていたので、
ギプスを半分にして、取り外しができるような状態にして、
固定を行いました。
しかし、取り外しが可能であったら、患部の安静が図れないと判断して、ギプス固定に切り替えました。
その結果、初診時から約4週間ギプス固定を行いました。
固定中のリハビリに関しては、
当院リハビリスタッフOBの整骨院にて行っていただきました。
ギプス固定を始めてから2週間後のレントゲンです。
初診時に比べて分裂部分の隙間(赤色矢印の先)が
ぼやけて埋まって来ているように見えます。
経過がいいので、ギプスを巻きなおして、
固定療法を続けました。
初診時から約2月後のレントゲンです。
完全に分裂部分の骨が埋まり(赤色矢印の先)、
骨癒合が確認できました。
運動時はサポーターをつけていただいています。
しかし、プレー自体には問題なく、
痛みも消失してクラブ活動に復帰しておられます。
痛みが再び出るようなら、
運動量を減らすなどの指示を出し、
その後も経過を見ています。
9歳の男の子です。
右膝の痛みを訴えて来院されました。
1ヶ月前に 体育のリレーをしていて、急に痛くなったそうです。
普段、サッカーを週に3回行っていて、今回初めて痛みが出たそうです。
左の写真は初診時の外観です。
左の写真は初診時のレントゲン写真です。
右膝蓋骨の外側に赤色矢印で示した分裂像が確認できます。
右膝の有痛性分裂膝蓋骨と考え骨形態を把握し、
骨癒合の有無を確認するためCT撮影を行いました。
左の写真は、CT画像です。
左の画像は膝蓋骨の軸車像です。
分裂部がはっきり確認できます。
右の画像は膝蓋骨の正面像です。
今回の分裂膝蓋骨は、SaupeⅡ型とわかりました。
年齢から骨癒合が期待できると考え、骨癒合を目的とした保存療法を行い、スポーツ中止とギプス固定を行いました。
左のレントゲン画像は1ヶ月後のものです。
分裂部は少しずつうまってきていることがわかります。
左のレントゲン画像は2ヶ月後のものです。
初診のレントゲン画像と比べて分裂部は埋まってきており、
痛みや圧痛も消失していたため、この時点でスポーツを許可しました。
痛みなくサッカーもできていたとのことです。
その後もレントゲン画像のみ、経過観察させていただきました。分裂部は骨癒合していることがわかります。
スポーツをしても全く痛みがないとのことでした。
このように早い時点で分裂膝蓋骨が発見できれば、
手術無しで骨癒合する可能性がかなり高いことが分かります。
早期発見が、早期治療につながります。
スポーツをやっておられるお子さんで、膝周りの痛みがある場合には、
早い段階で医療機関へ行かれ、適切な治療を受けられることをお勧めします。