変形性肩関節症

一般に、変形性関節症といえば、体重がかかる膝や股関節に多いとされています。

しかし、肩関節にも変形性関節症は生じます。

肩関節は体重をかけない関節と考えられていますが、手を挙げる動作をすることで肩に圧縮力がかかり、

関節症を引き起こすことがあります。

このページでは、変形性肩関節症の症状や、レントゲン画像などの説明を詳しくご覧いただきたいと思います。

変形性肩関節症の原因

変形性肩関節症は大きく分けて2つに大別されています。

一つは一次性骨関節症といい、明らかな原因が認められないもので、高齢の方に多くみられるタイプです。

もう一つは、二次性骨関節症といい、その原因には、外傷後脱臼や骨折後に生じるものと、非外傷性、たとえば関節リウマチ、化膿性関節炎などによるものがあります。

二次性骨関節症では、腱板損傷(腱板断裂)後の変形性肩関節症も多く見られます。

以下のレントゲンは、陳旧性の腱板損傷のものです。

陳旧性の腱板損傷では、ピンク色の矢印で示したように、肩峰骨頭間距離が狭くなり、

緑色矢印で示した関節裂隙(れつげき)が狭小化して行きます。

そうすると、赤色矢印で示した軟骨下骨部分に骨硬化像が見られ、変形性肩関節症を発症することとなります。

変形性肩関節症の症状

変形性肩関節症の症状としては、腕を上げるときの運動時痛があります。

また夜中に痛みで目が覚めたり、肩を動かしたときに痛みを伴って音が鳴ったりします。

そのため、肩関節の動きが制限されていき、肩関節周囲の筋委縮や、筋力低下がみられてきます。

変形性肩関節症の進行程度の変化はレントゲン画像では、以下の図のように分類されています。

レントゲン画像では、症状が進行していくにつれて、関節裂隙の狭小化や、軟骨下骨の硬化像や、

上腕骨頭での骨棘の大きさが変化していくことが見て取れます。

治療は、荷重する関節でないため、ほとんどの場合、可動域訓練や、

筋力トレーニングによる保存療法を行い、経過を見ていきます。

しかし、痛みのため、睡眠障害などが生じる場合は、人工骨頭を使用した、手術を行う事もあります。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

80歳代の女性です。

右肩の痛みを訴えて来院されました。

特に誘因なく、右肩の痛みが強く、夜間痛があるとのことでした。

こちらのレントゲンは初診時のものです。

赤色矢印で示した部分に、上腕骨頭部での骨棘が確認できました。

また、肩関節を動かすことで、轢音とともに痛みが出現するとのことでした。

こちらのレントゲンは初診時より、約1年後のものです。

赤色矢印で示した骨棘は1年前のものより大きくなっており、徐々に可動域制限も出現してきていました。

また、肩関節外旋時のレントゲン画像では、肩関節の狭小化がはっきり確認できました。
(青色矢印の部分)

可動域制限改善のため、滑車などを用いた可動域訓練も開始しました。

こちらのレントゲン画像は、初診時より約2年後のものです。

前回のレントゲン画像より、赤色矢印で示した骨棘はさらに大きくなり、青色矢印で示した関節裂隙も狭くなっています。

さらに、緑色矢印で示した肩関節の関節面は骨硬化像が見られます。

この時点で、轢音は強く認められ、痛みも強いと訴えておられました。

こちらのレントゲン画像は、初診時から約3年後のものです。

赤色矢印で示した骨棘は、初診時のものと少し大きくなり、遊離体となり、少し場所が移動していることがわかりました。

また、外旋時のレントゲンでは、緑色矢印の部分で著明な骨硬化像も認められました。

可動域訓練などの保存療法を行っていましたが、この時点で、手を完全に上に上げられなくなりました。

しかし、どうにか痛みとうまく付き合いながら日常生活を過ごしておられます。

〜症例2〜

71歳の男性です。

右肩関節の挙上障害を訴えて来院されました。

3日前、滑って転倒した時、右肩を強打してから肩の挙上ができないとのことです。

こちらの写真は、初診時の外観写真です。

肩を挙上していただいたのですが、患側である右肩は上がりません。

右肩をよく観察してみると、赤色矢印で示した肩甲骨の周辺(棘上筋と棘下筋)の筋肉が萎縮していることがわかりました。

以上より、以前から部分的に腱板断裂があり、今回の受傷で再び大きく断裂したものと考えました。

レントゲン検査を行ったところ、肩峰骨頭間距離(赤線部分)の狭小化が認められ、さらに、関節裂隙の狭小化もあり、軟骨下骨部に骨硬化像が認められました。

以上より、以前から腱板断裂があったため、肩関節が変形してきていることがわかりました。

今回の痛みは、肩を強く打ったために腱板が再び大きく断裂して、起こった痛みではないかと考えられました。

腱板損傷の既往が長い場合、変形性肩関節症を引き起こしてしまうという例でした。

肩関節の疾患の中では、変形性肩関節症は少ないのですが、年齢を重ねるにつれて、徐々に進行していきます。

多くの場合は、リハビリ治療で経過を見ますので、予後の良い疾患です。

一見、症状が似ているために、五十肩や腱板損傷などと思われがちですが、
レントゲンを撮ってみると、違いがはっきりとわかります。

ですので、腕が上がらないとか、痛みで夜中に目が覚めて苦痛であるなどの場合には、一度整形外科にご相談ください!

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