「円板状半月板」とは、膝関節痛を訴えて来院されるお子さんに見られる半月板の形態異常のことをいいます。この疾患は痛みのない時期もあって来院されたときに偶然発見される場合があります。また、クラブ活動の中で運動量が増えたり、膝を捻ったりをきっかけに外傷を契機として円板状半月板が損傷することにより膝関節痛を訴えて来院される場合もあります。
このページでは、円板状半月板の症状や診断について御紹介し実際の患者さんの経過についても述べていきたいと思います。
半月板の位置と形態

上の図は右膝関節を正面からみたものです。円板状半月板は外側半月板の形態異常であり、組織学的に先天異常とされています(赤丸で囲んだ部分)。無症状の時期もあり、診察中に偶然に発見される場合もありますが、正常の半月板と比べると荷重に対して脆弱な部分があるとされ、一旦損傷すると半月板のなかで歪が生じて痛みの原因となります。
下の図は膝関節を上から見たものです。

上の図のように通常の外側半月板は中がくりぬかれたような形状になっています。外側半月板は内側半月板に比べて、膝関節内での可動性は大きいとされています。

上の図は円板状半月板の形態を図にしたものです。右の写真のように円板状半月ではその名の通り円板状になっています。円板状半月板には脛骨の軟骨面を完全に覆う完全型(completeType)と正常よりも大きいが脛骨軟骨面の被覆が80%未満である不完全型(incompleteType)に分けられます。また、症状のあった円板状半月板では反対側の膝にも円板状半月板が発見されることがありますが、必ずしも症状が出るとは限らないともいわれています。
分類

円板状半月板損傷の病態
下の図は円板状半月板が損傷し症状を有するまでの状態を示したものです。

①膝関節の屈伸動作を繰り返すうちに円板状半月板に力学的負荷が加わり続けます。②負荷のかかった円板状半月板の中において部分的な変性や断裂が生じて、さらに屈伸を続けることによりその傷が広がり続けます。③損傷した円板状半月板では正常な支持性が失われるうえ、屈伸動作においてスムーズな可動性を失うことになります。そして症状として膝関節の可動域制限や膝の屈伸で音がなる(snapping)が生じます。
円板状半月板損傷の症状

上の写真は円板状半月板損傷の方の膝関節可動域を示したものです。屈曲した際の角度はおおよそ100°まで曲げることができていますが、伸展では膝が完全に伸びきらずに痛みが生じます。このように円板状半月板損傷では膝関節の伸展制限がみられます。
円板状半月板損傷の画像所見
下の写真は両膝を曲げた状態で撮影したレントゲン写真です。

患側の膝関節と健側の膝関節を比較してみると、左右ともに外側の関節裂隙が拡がっているようにみえます。実際に症状があるのは左側の膝なので有症状の外側円板状半月板損傷と考えます。一方で右側は無症状ではありますが、円板状半月板の存在を疑います。

上の写真は同じ患者さんのMRI画像です。損傷した円板状半月板が確認できます(赤矢印で示した部分)。正面から見た画像(前額断)と横からみた画像(矢状断)の両方に半月板内に高輝度変化を認めているので、円板状半月板の水平断裂と診断できます。
円板状半月板損傷の治療
膝関節の機能障害や症状が軽度で日常生活動作上でも支障が少なければ、経過観察でも問題ありません。しかし、多くの場合運動中に膝のひっかり感や屈伸障害を伴っているので、外科的な治療を選択します。治療の方法としては、関節鏡視下での外科的治療を行いまます。円板状半月板の形態にもよりますが、部分的に切除して正常な半月板に近い形に形成する方法があります。また、損傷部位によっては半月板を縫合する術式もあります。このように損傷した円板状半月板の状態をみながらそれぞれの術式の利点を活かして、最善な術式を選んでいきます。
円板状半月板損傷に合併する膝離断性骨軟骨炎
円板状半月板が存在する膝関節においては、円板状半月板損傷の有無に関わらず約15%に大腿骨外側顆に離断性骨軟骨炎が発症しているとの報告もあります。離断性骨軟骨炎と外側円板状半月板との関係性は円板状半月板の構造による過剰なストレスが起因となり、関節軟骨や軟骨下骨への力学的負荷がかかることで発症すると考えられています。
以上のように、お子さんがスポーツ活動を続ける中で膝が伸びない、膝が痛いといった症状を訴えておられて、中々治らないケースは膝関節内の円板状半月板が起因している場合も考えられます。
そのような症状でお困りの際は、近隣の整形外科を受診してみてください。