橈骨遠位端骨折とは

橈骨遠位端骨折は骨折の中でも、比較的多く見られる骨折です。

しかし、「橈骨遠位端骨折とうこつえんいたんこっせつ」と聞いてもピンとこない方がほとんどだと思います。

では、橈骨とはどこの骨で、どんな骨折なのでしょうか?

上の絵にあるように、手首での骨折で最も多いのが「橈骨遠位端骨折」です。

手首にある2本の骨のうち、太い方を「橈骨(とうこつ)」といいます。

特に、高齢者の方の場合には、複雑な骨折になるケースが多いので、
治療が難しくなる場合も見受けられます。

そこで、このページでは、当院で行っている治療法について御説明します。

橈骨遠位端骨折は転んで手をついたときに多く見られる骨折で、
手首の付け根のところの骨が折れてしまうことをいいます。

特に、高齢の方の場合、骨が弱くなっているので、
単純な折れ方ではなくて、複雑な折れ方をする場合があります。

手をついたときの衝撃は、
手首にある積み木のような骨の突き上げ(青矢印)を通じて、橈骨を粉砕します。

さらに、自分の体重が手首にかかることで(赤矢印)、橈骨に骨折が生じます。

多くの場合、骨が上に向いてずれるような変形をします。

正面から見たレントゲン写真
横から見たレントゲン写真

レントゲンを撮ると、橈骨が短くなって写っています。

横から見ると、橈骨は手首が上にずれたような形で変形し、折れてしまっています。

上の図にあるように、橈骨の折れ方には大きく分けて2通りあります。

手首の関節にまたがらない折れ方と、手首の関節に骨折がまたがった折れ方の2通りです。

骨のずれ方の度合いにもよりますが、ほとんどの場合、ギプスを使った固定療法で治ります。

しかし、関節内での骨折は粉砕骨折になっている場合が多く、手術を選択するケースが見られます。

そして、高齢者の場合には、骨粗鬆症による骨の弱さがもともとあるので、
軽い外力でも簡単に骨折してしまうことが多いのです。

まして、強く手をつくような場合、一つだけの骨片だけでなく、
いくつかの骨片ができるような粉砕型の骨折形態になる場合が多いのです。 

高齢の方の場合には、この図のように骨折した部分がいくつかの骨に分かれ、
赤丸で囲んだように、細かく粉砕されてしまうことが多いのです。

ギプス固定を行い、できるだけもとの形に戻そうと修復を試みても、
細かい骨片や、骨粗鬆症によって骨の強度が弱いので、骨折部分に隙間が生じ、結果的に段差ができてしまいます。

できるだけもとの形に戻して、ギプス固定をすることが第一の選択肢です。

しかし、上記のような理由で、段差があまりにも著しい場合や、
仕事やスポーツなどで、手首の障害を避けたい場合、手術療法が選択されます。

手関節の動き

ここで、手首の動きを考えてみましょう。

手首を上に上げたり、下に下げたりするときには、

橈骨と連結している骨が受け皿のようになって、なめらかな動きに役立っています。

また、親指側と小指側に手を動かすと、橈骨の上で、積木の様な小さな骨が
動いていることがわかります。

ですので、骨折が生じると、スムーズな動きが損なわれることになります。 

もうひとつ、手首で大事な動きは、ドアノブを開けたり、ねじまわしを回したりする「ねじり」の動作もあります。

この図のように橈骨の周りには、靭帯によってつなぎ止められているいくつかの骨があります。

橈骨が骨折すると、隣の尺骨の関節に影響が出るだけでなく、
舟状骨、月状骨へも影響が出て痛みが続くケースもあります。

ですので、骨折後の治療の最大目標は折れた骨を元通りの位置に戻すことになります。

この図にあるように、握力は橈骨を含め、手首や指の骨を中心に伝達されていきます。

橈骨が骨折することで、手関節に何らかの支障が出ている場合、握力の回復が妨げられます。

では、以下で、実際の治療の方法について御覧いただきたいと思います。 

以前行っていたギプスによる固定治療

こちらの写真は、数年前に橈骨遠位端骨折で御来院になった患者さんのレントゲン写真です。

左手の手首の骨が若干上向けになっていて、
折れているのがわかります。

正面から見ると、橈骨が短くなって写っていることがわかります。 

もとの位置に戻すようにして、ギプスを巻きこんで固定療法を行いました。

レントゲンも途中で何回か撮りながら、骨折部分を確認していました。

そこで、ギプスも緩みが生じてくれば、巻きなおしをして、できるだけ骨折部分が動かないように固定し続けました。 

ところが、3週間たった時点で、再びレントゲンを撮ってみると、固定期間中はずれていなかった骨が固定を外した時点で少しずれてしまっていました。

これは、骨粗鬆症があると、骨自体がもろくなっているので、いくら元通りにしたところで、地盤沈下をおこすように、骨が崩れてくるためです。 

正面から見ても、橈骨が短縮してしまっていることがわかります。

この方は手首を動かしたり、日常生活上は問題がありませんでした。

しかし、変形して骨折が治ると、手首を動かすと痛みが続いたり、動きに制限がでるので、できることならば、骨ができるだけもとの位置に戻って、なおかつ、つぶれないようにするにはどうしたらいいのか、当院では考えました。 

フィンガートラップ牽引整復法

できるだけ、骨折部分をもとの位置に戻すために、こちらの写真のように、指に網の様な指サックをつけて、その先を紐で吊るし、引っ張り上げるようにします。

腕の方には、おもりをかけて、上と下から手を引っ張るような形にします。

このようにして、持続的に骨折部分を引っ張ることにより、短縮してしまった橈骨を引き上げる作用が働きます。

その状態で、折れた部分をもとの位置に戻すように、手技を加えます。 

横から見ると、上にずれた骨を下に押し込むような形で整復します。 

手をつったままの状態でギプスを巻き、さらに、骨折部分がずれないように押さえこんでおきます。

もちろん、この時には、骨折部分を押さえると痛いので、医師の立会いの下、部分麻酔をかけて整復を行います。

まっすぐな状態になってギプスを巻いた手です。

ギプスをとった時点で、せっかく骨折部分が治っても、他の機能に支障をきたしたままでは何にもなりません。 

そこで、骨折部分はしっかり押さえこんで、他の部分は使えるように、指先ができるだけ出るように、ギプスをカットしています。

この利点は、指が使えるだけでなく、手のむくみ予防にもなりますし、固定を外した後に、いち早く日常生活に復帰できるように、リハビリ期間も短縮できることにあります。

ギプスが緩み始めたら…。

最初にギプスを巻いてから腫れも引いてきて、手の部分でゆとりがどうしても出てきます。

この絵のように緩みが出てきて、隙間が生じてしまいます。

その結果、せっかく押さえこんだ骨折部分が緩みのために、そこを支点として骨が動いてしまいます。

そこで、当院では、再び上で示した様なフィンガートラップをして、固定を再度行っています。 

押さえこむポイントも、赤矢印で示したように3点で支えるようにして、整復位を保つようにしています(3点支持固定)。

そして、腕から手にかけて、しっかりと押さえこむようにしています。
(こういう技術をモールディングと言います。)

ギプス固定の期間中、だいたい1~2回ぐらい巻き直します。

当院で行なっている治療の取り組みについて

2010年9月に富山県で行われた「第19回日本柔道整復接骨医学会」において、
塩田桃子先生が当院で取り組んだ「橈骨遠位端骨折」の成績を報告されました。

演題名は「高齢者不安定型橈骨遠位端骨折に対する保存療法の治療成績」です。 

当院で2008年5月から、2010年4月までの間に、 
来院された60歳以上の橈骨遠位端骨折の方を対象としてアンケート調査しました。

アンケート内容は、痛み・動き・手の指の力・変形の有無・手の腫れ・神経障害の
6項目について調査しました。

その結果、18点を満点として、16点以上であったものを優とすると、
8割の方が優に入っていました。

元通りの形にできるだけ近づけるために、
レントゲン写真で評価をするためにいくつかの計測方法があります。

上の写真にあるように、橈骨の関節部分の角度(A)と、
橈骨の短縮度合いを示す(B)が指標になります。

一般に、角度Aは正常範囲が26°~30°ぐらいが正常といわれていますが、
10°以下で治療成績不良といわれています。 

また、橈骨の短縮度合いを横にある尺骨の位置関係と比べて調べた場合に
5mm以上段差があれば治療成績不良といわれています。

そこで、当院での結果では角度Aが平均16.2°、段差Bが平均2.6mmと良好な成績でした。

横から見たレントゲンでは、橈骨の関節面の傾斜角度を指標とします。

正常範囲は7°~12°といわれていますが、
成績不良例では、この角度がマイナスになってしまい、
橈骨の関節面が上を向いてしまうような状態になります。

当院の成績では、平均5.6°でした。

A、B、Cのそれぞれの数値を総合的に判断すると、
ギプスをとって最終的に調査した時点の値は
全体的に良好であると判断できました。

手首の機能を調べた結果は、手首を上に上げる動作は平均52.7°、下へ下げる動作は平均53.6°でした。

当院では、橈骨遠位端骨折に対して保存療法をおこなっており、様々な工夫をして取り組んでおります。