中節骨基部裂離骨折(つき指と思っていたら、骨折だった!)

バレーボールやバスケットボールでは競技中に指の怪我が生じることが多く見られます。

中でも、最初は指の捻挫もしくはつき指程度に思っていたら、
関節の腫れが強くなって、痛みを伴うので、病院へ行ったら、骨折していたという事がわかることがあります。

特に、今回ご紹介する中節骨基部では、そういったケースで来院される方が多いように思われます。

このページでは、中節骨基部裂離骨折の症例をご覧いただき、その治療法についてご説明していきたいと思います。

中節骨とは、どこの骨ですか?

上の図の、赤い線で囲んだ骨が中節骨です。

青い丸で囲んだ部分がPIP関節と呼ばれる中節骨と基節骨で構成される関節です。

この関節の中節骨側で生じる関節内骨折の一つが「中節骨基部裂離骨折」です。

中節骨基部裂離骨折とは?

下の写真は、中節骨基部裂離骨折が生じる受傷機転をイメージしたものです。

バスケットボールなどに強く指がはじかれたり、
バレーボールのブロックの際に、スパイクされた強いボールが当たってはじけたような場合に受傷することが多くみうけられます。

上の写真の赤丸印の部分のようなPIP関節が過伸展されるような場合にこの骨折が起こることが多いのです。

上の写真は、実際の患者さんの外観写真です。

赤い丸印で囲んだ関節が健側に比べて、非常に腫れていることがわかります。

関節の捻挫との違いは、腫れているだけでなく、皮下出血を伴う場合、この骨折を疑います。

中節骨基部裂離骨折のタイプと治療法

下の図は、中節骨基部裂離骨折を分類したものです。

①の骨折は、中節骨基部に骨折線を認めますが、骨折部は離開していないタイプです。

②の骨折は、中節骨基部の骨片が離開していて、指を曲げると、骨片がより接近するようなタイプです。

上の写真は、①の骨折型をレントゲンで実際にみたものです。

左の写真は初診時のレントゲンです。赤矢印で示した骨片が離開していなかったので、

そのまま軽く指を曲げた状態でアルミ副子で固定を行いました。

その結果、右の写真のように、骨癒合が得られました。

上の写真は、②の骨片の離開を伴うタイプのレントゲン写真です。

左の写真は初診時のレントゲンで、赤色矢印の先で示した部分に小骨片を認め、それが離れていることがわかります。

アルミ副子を用いて、指を曲げた状態で保持することで、右の写真のように骨片が近寄り、元の位置に戻っています。

このように、中節骨基部裂離骨折には骨折型によって治療法が異なります。

では以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。

16歳の女性です。

右小指PIP関節の痛みを訴えて来院されました。

バスケットボールをしていて、ボールが指に当たり、受傷されたそうです。

左の写真は初診時のレントゲンです。

黄色矢印で示した部分に骨折が認められ、骨片の離開も確認できます。 

骨片の離開が認められたため、指を深く曲げて骨折部分が離開しないようにして、
アルミ副子で固定を行いました。

左のレントゲンは固定後のものです。

離開していた骨片が元の位置に近づいていることが確認できました。 

しかし、1週間後にレントゲンを撮った時点で、アルミ副子では緩みが生じて、副子がずれるので、患者さんが不快感を訴えられていたことから、ギプス固定に変更しました。

左の写真は、ギプス固定をした後で撮影したものです。

骨片が離開せず安定していることが確認できました。

左のレントゲンは受傷後1カ月のものです。

ギプスを除去し、指の曲げ伸ばしをしながら、レントゲン撮影を行いました。

指を伸ばしても骨折部の離開は認められなかったので、骨癒合と判断しました。

21歳の女性です。

左小指PIP関節の痛みを訴えて来院されました。

アルティメットスポーツをしていて、フリスピーが左小指に当たり、受傷されたそうです。

左のレントゲンは、初診時のレントゲン画像です。

赤色矢印で示した部分に骨折が認められ、骨片の転位も確認できました。

骨片の離開がったので、アルミ副子を用いて指を深く曲げる固定を行いました。

左のレントゲンは、固定後のものです。

赤色矢印で示した骨片が元の位置に戻っていることが確認できました。 

受傷後1カ月のレントゲンです。

固定を除去し、レントゲン撮影したところ、骨片は元の位置に戻っており、骨癒合していることが確認できました(赤色矢印の部分)。 

中節骨基部骨折の患者さんの中には、つき指などと思って、医療機関を受診されず、

そのままで過ごしておられる場合も多く見受けられます。

痛みが強く、皮下出血などみられる場合や、しつこい痛み続く場合には、
今回ご紹介した中節骨基部骨折である場合があるので、
早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。

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