豆状骨骨折(転んで手をついてから、てのひらが痛い!)

手根骨のなかで、手首の小指側に位置する丸い骨を「豆状骨」と言います。

手を強く付いた際に、この部分の骨折が生じることがあります。

このページでは、比較的稀とされる豆状骨骨折の例について御紹介させていただきたいと思います。

上の図は、豆状骨骨折が生じた時の圧痛部位を示しています。

豆状骨は手首の小指側に位置していて、上から触れてもはっきりとわかる骨です。

豆状骨の働き

上の図は豆状骨に付着している筋肉の作用を表したものです。

握りしめた手をそのまま小指側に倒すような動きをするときに最も働くのが尺側手根屈筋です。

また、小指を外に開く動作をするときに、最も動くのが小指外転筋です。

それらの筋肉は豆状骨を起点として作用しています。

また、上の図のように、有鉤骨鉤との間で尺骨神経管(Guyon管)を形成しています。

このように、小さな豆状骨ですが、いろんな重要な役割を持っています。

豆状骨骨折の発生機序

豆状骨骨折が発生する機序には、以下の2通りのケースがあると考えられています。

上の図のように、手を強く地面などについたとき、豆状骨に直接体重がかかり、
その圧によって骨の真ん中付近で折れたり、粉砕骨折に至るケースがあります。

また、同じく、手を強く地面などに付いたとき、手関節に急激に返す様な力が加わり、
豆状骨に付着している筋肉や靭帯が引っ張り合うことで、豆状骨の付着部での裂離骨折が起こります。

豆状骨骨折の骨折型

豆状骨骨折には、上の表で示すような骨折型があります。

過去の報告例では、横骨折の頻度が最も多いとされています。

では、以下で実際の患者さんについて御覧いただきたいと思います。

55歳の女性です。

右手首の痛みを訴えて来院されました。

数日前に椅子にあがり作業中に姿勢を崩し、
転んで、手をついて受傷されました。

捻挫だと思って、様子を見ておられましたが、
痛みが変わらないので、来院されました。 

右手関節周辺は腫れて、皮下出血を認めました。

さらに、赤矢印で示した豆状骨に限局した圧痛を認めました。 

レントゲンを撮って左右のの手を比較してみると、
赤矢印の先で示した様に、
豆状骨の一部で、はっきりと輪郭が見えなくなっていました。 

ですので、豆状骨骨折と判断しました。

骨折部の状態をさらに詳しく見るためにCTを撮影したところ、
豆状骨にはっきりと骨折線が入っていました。 

3DCTで骨折線の入り方を確認したところ、
赤矢印で示したように1本の骨折線が見えました。 

治療としては、ギプス固定を手首から前腕まで行い、
3週間たった時点で、取り外し可能なギプスシャーレ固定に移行しました。

受傷時と、1ヶ月後のレントゲン写真の比較をしてみると、
豆状骨の輪郭が戻ってきて、
豆状骨内に骨癒合を認める骨硬化像が見えました。 

さらに、受傷から4ヶ月後の健側と患側を比較したレントゲン写真です。

患側の豆状骨の形状は、健側の形状と同じになっていることがわかります。

この時点で、日常生活も支障なく過ごしておられました。 

42歳、男性の方です。

左手掌部の痛みを訴えて、来院されました。約2週間前に転倒をした際に、左手をついて受傷されています。

他院を受診し、骨折はないと診断されましたが、いつまでも痛みが続くため当院に受診されました。

この写真は、初診時の外観です。

丸(○の部分)の箇所に圧痛を強く認めました。

レントゲン写真を撮影しました。通常の撮影方法では異常所見は認めませんでした。しかし、別の角度から撮影したところ、豆状骨に明らかな骨折線を認めました。(赤矢印の部分)

1枚目のレントゲン写真の赤い丸で囲んだ部分を拡大したものが2枚目のレントゲン写真です。

以上の所見から、豆状骨の骨折であることがわかりました。

さらに、骨折部の状態を詳しく診るためにCT撮影も行いました。

1枚目の3D画像では、はっきりと骨折線がみられます。また、手関節を輪切りにした角度では、豆状骨が完全に折れていました。

読影した画像から、豆状骨の完全骨折であることがわかり、さらに骨折部は偽関節でないことから固定療法で骨癒合が得られると判断しました。

そこで、ギプス固定を3週間程度行うことにしました。

2ヶ月後のレントゲン写真です。

初心時に比べて、骨折線が不明瞭になっているのがわかります。この時点で、完全に骨癒合が得られたと判断しました。

本人の自覚症状としては、物を握る際に少し痛む程度で、日常生活上の支障はほとんどありませんでした。

豆状骨骨折は、ほとんどが固定療法で治ります。

ですので、手をついて受傷した時に、捻挫と過信せず、
早めに整形外科へ行って、早期に固定療法を始めれば、
治癒することが可能です。

手を強くついて、手の小指側が痛む場合には、
早めに整形外科を受診されることをお勧めいたします。