骨性マレットフィンガーに対する 整復位を保持するための固定法

このページでは、当院で行っている骨性マレットフィンガーの治療についてお伝えしたいと思います。

骨性マレットフィンガーは、関節面の3分の1以上を占める大きな骨片を伴い、
転位が大きな物は、観血療法が選択されることが多く見られます。

しかし、今回第26回日本柔道整復医学界学術大会で、
当院スタッフの佐野順哉先生が「骨性マレットフィンガーに対する整復位を保持するための固定法」という演題名で、
骨性マレットフィンガーに対する保存療法の発表をされましたので、このページでご紹介したいと思います。

当院では、観血療法の適応とされている骨性マレットフィンガーに対して、
MP・PIP関節90度屈曲位、DIP関節伸展位で固定する保存療法を行い、
良好な結果が得られたので、ご紹介したいと思います。

対象となった患者さんは、以下の図の通りです。

方法は麻酔下にて、徒手整復を行い、
背側または、掌側シーネでMP・PIP関節90度屈曲位、DIP関節伸展位にて整復位を保持するように固定を行いました。

背側シーネ固定

掌側シーネ固定

結果、すべての患者さんは整復位を保持したまま、4~5週間で骨癒合が得られました。

以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。

45才の男性です。当院受診前日、お酒を飲んでいて、段差につまずき転倒し、右手をついて受傷されたそうです。 

初診時のレントゲン画像では、右小指末節骨に関節面の3分の1以上を占める骨片が認められ、マレットフィンガーⅢ型と診断されました。

麻酔下にて徒手整復を行い、アルミニウム副子を用いて
MP・PIP関節90度屈曲位、DIP関節伸展位で
背側シーネによる固定を行いました。

固定後のレントゲン画像で、整復位が保持できていることを確認しました。

4週間後のレントゲン画像で、骨癒合が確認できました。

その後は、可動域制限があったため、2週間MP関節を含む掌側シーネ固定良肢位で行った後、固定を除去しました。

半年後のレントゲン画像でも、再受傷や再転位は認められませんでした。

35才の男性です。
当院受診前日、仕事でいらいらして、左手で壁を殴って受傷されたそうです。

初診時のレントゲン画像で、左示指・中指末節骨に関節面の3分の1以上を占める骨片が認められ、マレットフィンガーⅢ型と診断されました。

麻酔下にて徒手整復を行い、アルミニウム副子を用いMP・PIP関節90度屈曲位、DIP関節伸展位で掌側シーネによる固定を行いました。

固定後レントゲン画像で整復位が保持できていることを確認しました。4週間後のレントゲン画像で、骨癒合が確認できました。

その後は、可動域制限があったため、2週間MP関節を含む掌側シーネ固定を良肢位で行った後、固定を除去しました。

受傷6週間後のレントゲン画像でも、再受傷や、再転位は認められませんでした。

54才の男性です。

1週間前、バケツを殴って右小指を受傷されたそうです。

初診時のレントゲン画像で、右小指末節骨に関節面の3分の1以内の骨片が認められ、マレットフィンガーⅡ型と診断されました。

麻酔下にて、徒手整復を行い、熱可塑性プラスティック材を用い、MP・PIP関節90度屈曲位、DIP関節伸展位で、
小指シーネによる固定を行いました。

固定後のレントゲン画像で整復位が保持できていることを確認しました。4週間後のレントゲン画像で、骨癒合が確認できました。

その後は、可動域制限があったため、2週間MP関節を含む掌側シーネ固定を良肢位で行った後、固定を除去しました。

受傷7週間後のレントゲン画像でも、再受傷や再転位は認められませんでした。

手指の伸展機構

手指の伸展機構の最も主要な骨組みを形作っている物は、指伸筋腱、骨間筋腱、虫様筋腱です。

これらの筋腱の運動をさらに円滑にするために、矢状索、骨間筋腱膜、支靱帯、三角靱帯があります。

指の伸展運動は、上記の筋腱および腱膜がお互いに複雑かつ巧妙なバランスを保ちながら、その運動を行っています。

骨性マレットフィンガーの整復位を保持する固定のポイントの一つ目は、MP関節を90度屈曲位にすることです。

上の左の図のように、MP関節伸展位であれば、骨間筋はIP関節を伸展させる働きがあります。

しかし、上の右図のようにMP関節を90度屈曲位をとることで、骨間筋のIP関節伸展作用は抑制されます。

次に整復位を保持する固定をポイントの2つめは、PIP関節を90度屈曲位にすることです。

以下の図で示すようにPIP関節90度屈曲位は、伸筋腱側索および、深指屈筋が弛緩し、両方の筋作用が全く働かなくなり、
「解放された指」現象が生じ、DIP関節の屈曲伸展作用を抑制します。

整復位を保持する固定のポイントを押さえておけば、骨片に牽引作用が働かないため、
整復位を保持できる固定であると考えられます。

今回行った固定方法で、注意が必要なのは2点あります。

1つめは、背側シーネ固定の場合、こまめにまき直しを行わないと、
固定がずれて褥瘡ができることがあるため、注意が必要です。

2つめは、指を曲げた状態での固定になるため、
長期間の固定は屈曲拘縮を引き起こす可能性があるため、
定期的に固定の管理を行うことが大切です。

以上のことから、MP・PIP関節90度屈曲位・DIP関節伸展位での固定は、
整復位を保持したまま、骨癒合が可能である有効な固定法であると考えます。

このように当院では、骨性マレットフィンガーは観血療法の適応と言われる場合でも、
固定の方法を工夫し、保存治療を行っております。