橈骨遠位端骨折の保存療法

当院では、橈骨遠位端骨折を以下のように、できるだけ手術をしないで治療(保存的治療)を行っています。

できるだけ手術をしないといっても、やみくもに保存的治療を行っているわけではありません

当院では、日本整形外科学会の「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」に則って治療を行っています。

「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」はさまざまなケースに対して、
以下の表のようなエビデンスレベルに基づき、治療方法を推奨しています。

以下で、橈骨遠位端骨折に対する概要をご説明します。橈骨遠位端骨折は以下の図のように、橈骨部で起こる骨折です。

橈骨遠位端骨折は、上の図のような骨折の仕方もありますが、いろんな骨折の型も含まれています。

以下の図は、色々なタイプの骨折型名称です。

実際は上の図のような典型的な骨折ばかりではありません。

以下の図のように、型にはまらないような多種多様な骨折も多く見られます。

上記の総ての骨折の総称が「橈骨遠位端骨折」です。

「橈骨遠位端骨折の診療ガイドライン」では、橈骨遠位端骨折の治療について以下のように推奨されています。

まず、以下で簡単に「関節外骨折」と「関節内骨折」についてご説明したいと思います。

左の図のように手の関節は橈骨・尺骨と舟状骨・月状骨などの手根骨で関節を構成しています。 

「橈骨遠位端骨折の関節外骨折」とは以下の図のように
手関節まで骨折が及んでいないものをいいます。

 一方「関節内骨折」とは、
手関節まで骨折が及んでいるものをいます。

「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」では、上記の質問に対して、以下のように推奨しています。

上記の不安定型骨折とは、徒手整復を行いギプス固定による整復位の保持が困難である場合を言います。

青壮年者の不安定型骨折は、変形が残存すると臨床症状が残る可能性が高いため、手術的治療が推奨されています。

しかし、高齢者の場合、変形が残存しても、患者さんの主観的評価は良好という報告があります。

また、高齢者に対して手術的治療と、保存的治療を比較したところ、有意差がなく、
手術的治療は保存的治療より有効であるとはいえません。

当院でも、その治療指針に沿って、高齢者にはできるだけ経済的・身体的負担の少ない保存的治療を行っています。

上記の質問に対して、ガイドラインでは以下のように推奨されています。

橈骨遠位端骨折の治療を行うポイントは、関節外骨折と関節内骨折、高齢者と青壮年に分けて考えることが大切です。

関節内骨折に関しては、年齢にかかわらず、関節内に2mm以上のギャップがある場合、
変形性関節症を生じる可能性が高いため、手術的治療が推奨されています。

ただし、近年、関節内骨折の整復が不十分であっても、変形性関節症を生じるとは限らないとも示唆されてきています。

当院では、関節内骨折に対して保存療法を行い、整復位を保持した状態でギプス固定を行う工夫をしています。

また、関節面のギャップがあったとしても、患者さんの主観的評価は良く、
必ずしも手術的治療が必要というわけではないと考えています。

上記の質問に対して、ガイドラインでは以下のように推奨されています。

高齢者であっても、活動性の高い患者さんや、高度の転位を伴う橈骨遠位端骨折については、
機能的・美容的観点から徒手整復を行うべきであると推奨されており、
外固定によるギプス固定が必要であることは言うまでも無いといわれています。

当院でも、高齢者に対してフィンガートラップを用いて徒手整復とギプスによる固定を行っています。

骨粗鬆症が基盤にあるため、若干の短縮転位など認められる場合もありますが、
患者さんの主観的評価と、機能的評価は良好である場合が多く見受けられます。

上記の質問に対して、ガイドラインでは以下のように推奨されています。

青壮年者の不安定型骨折で高度な変形が残存すると、臨床症状が残る可能性が高いため、手術的治療が推奨されています。

しかし、高齢者における報告では、変形が残存しても患者の主観的評価は良好であるとされ、
高齢者の不安定型骨折に対する手術的治療と、保存的治療と比較した最近の報告においても臨床成績に有意差がなかったことから、
高齢者では上記の値(レントゲン画像の角度)以上の転位があっても、許容範囲とされています。

以下で簡単ではありますが、レントゲンで計測する部分の名称と角度の説明をしたいと思います。

いろんな角度を計測することで、短縮転位や、背側転位などがどれぐらい生じているのか、客観的に把握します。

当院では、2枚目の図のPalmar tiltの角度が治療後の主観的評価に影響していると考えており、
徒手整復によるギプス固定時に、この角度を正しく保ち、できるだけ元の位置に戻すことに重点を置いています。

上記の質問に対して、ガイドラインでは以下のように推奨されています。

手関節の関節面のギャップが2mm以上の場合も、変形性関節症を生じる可能性が高いため、
手術的治療が推奨されていましたが、近年、関節内骨折の整復が不十分であっても、
問題となるような変形性関節症が生じるとは限らないことが示唆されてきています。

特に、高齢者では、変形性関節症の症状が出にくい可能性が高く、限界となる転位程度の結論は出ていないというのが現状です。

以上のように、橈骨遠位端骨折は必ず手術をしないといけないという場合は少なく、
保存的治療が可能であり、患者さんにも満足していただいております。

どうしても手術をしたくないなどといった場合には、このページを参考にしていただければと思います。