遠位橈尺関節脱臼(転倒し、手をついてから手首が痛い!)

転倒して手をついてから手首が痛くなる疾患は、骨折や捻挫など数多くありますが、

手の関節付近で脱臼して、痛みを伴うことがあります。

手首の骨がでてる!?

以下の写真は転倒して手をついて受傷された方の外観です。

赤色矢印で示した部分(尺骨頭)の骨が、左右を比較すると出ていることがわかります。

この場所に痛みと腫れもあります。

このような状態の怪我のことを「遠位橈尺関節脱臼」といいます。

以下で、遠位橈尺関節の構造などを詳しくご説明していきたいと思います。

遠位橈尺関節とは?

遠位橈尺関節とは、手関節付近の橈骨と尺骨から構成される関節です。

以下の図は遠位橈尺関節の構造を示した図です。

遠位橈尺関節は、主に関節包、三角線維軟骨複合体(以下TFCC)、

関節周囲の方形回内筋、伸筋腱、伸筋支帯などから構成されています。

遠位橈尺関節脱臼は尺骨が背側や掌側に脱臼し、同時にTFCCの損傷も合併することが多く見られます。

以下で、実際どのように脱臼するのかを見てみたいと思います。

遠位橈尺関節脱臼とは?

遠位橈尺関節脱臼は以下の図のように、尺骨が背側もしくは掌側に脱臼します。

以下の図で示したように、脱臼方向(程度)によって呼び方も変わります。

以下の写真は、実際の遠位橈尺関節脱臼のレントゲン画像です。

正面からと側面からとでは、少し見え方が違いますが、赤色矢印で示した部分で脱臼していることがわかります。

わかりにくい場合は、健側のレントゲン画像と比較すると、わかりやすいかと思います。

また、以下のレントゲン画像の状態と外観写真を比較して見ました。

このような遠位橈尺関節脱臼しているレントゲン画像が見える場合には、外観は下側の写真の様になります。

正面像 

側面像

手術しないで治るの?

遠位橈尺関節脱臼は、まれに手術をしないといけない場合もありますが、ほとんどが固定による保存療法で治療が可能です。

当院では、以下の写真の様に肘を90度曲げ、掌を上に向けた状態で固定を行います。

このように固定をすることで、脱臼した尺骨は元の位置に戻ります。

およそこの固定は、4~6週間行い、固定後は可動域訓練や、筋力トレーニングを目的にリハビリを行います。

以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。

25歳の男性です。
右手関節の痛みを訴えて来院されました。

受診日当日の朝、自転車に乗っていて、転倒し、左手をついたそうです。

その後、仕事へ行かれたそうですが、痛みのため、仕事を続けてできなくなったそうです。

左のレントゲン写真は初診時のものです 。

痛みを訴えていた手関節尺側に赤色矢印で示した遠位橈尺関節の離開が認められました。

左のレントゲン画像は手関節を側面から撮影したものです。

赤色矢印で示した尺骨の背側脱臼が認められました。

治療は前腕回外位でギプス固定を約1ヶ月行いました。

左のレントゲン画像は初診時から1ヶ月後のものです。

遠位橈尺関節でみられていた離開はなく、整復位であることが確認できました。

左の側面から撮影したレントゲン画像でも、
赤色矢印で示した背側脱臼していた尺骨は整復位であることが確認できました。

12歳の女の子です。

右手関節の痛みを訴えて来院されました。

1週間前、ドッチボールをしていて前方へ転倒し、手をつき受傷されたそうです。

左の外観写真は初診時のものです。

赤色矢印で示した手関節尺側部に、腫脹が認められました。 

初診時の外観写真で少し角度を変えて見たものが左の写真です。

健側と比較して、患側の赤色矢印で示した尺骨頭が隆起していることがわかります。

診時は左の写真の様に前腕の回内、回外制限が認められました。

左のレントゲン画像は初診時のものです。

赤色矢印で示した尺骨頭が背側に脱臼していることがわかりました。

前腕の回外制限がありましたが、徒手整復を行い、上腕より手関節まで、前腕回外肢位でギプス固定を行いました。

左のレントゲン画像は、ギプス固定を約5週間行った後、
側面からレントゲン撮影したものです。

赤色矢印で示した背側脱臼していた尺骨頭は、整復位にあることが確認できます。

左の外観写真は治療終了後のものです。

初診時の外観写真と比較すると、
尺骨背側脱臼していた尺骨頭の隆起は消失しており、
痛みも無く手がつけるようになったそうです。

20歳の男性です。

右手関節の痛みを訴えて来院されました。

トレーニングでバーベルを持ちあげたとき、右手関節に痛みと音がしたそうです。

その後、右前腕の回内・回外ができなくなったそうです。

左の外観写真は初診時のものです。

赤色矢印で示した部分に、痛みを訴えておられました。

左の外観写真は少し角度を変えて撮影したものです。

赤色矢印の尺骨頭の部分で隆起が認められ、押さえると痛みがあるそうです。 

左のレントゲン画像は初診時のものです。

赤色矢印で示した遠位橈尺関節は、健側と比べると、
すこし離開していることがわかります。 

左のレントゲン画像は側面から撮影したものです。

健側と比較すると、明らかに赤色矢印で示した尺骨頭が背側に脱臼していることがわかります。

治療は、新鮮例であるため、左の写真の様に前腕回外位で、ギプス固定を約4週間行いました。 

左のレントゲン画像は4週間ギプス固定を行った後に撮影したものです 。

背側脱臼していた尺骨頭は赤色矢印で示したように、
整復位であることが確認できます。

痛みも消失し、再びトレーニングが行えるようになったとのことです。

20歳の男性です。
右手関節の痛みを訴えて来院されました。
10日前、空手の練習中倒れて、右手をついて受傷されたそうです。

ただの捻挫と思い、様子を見ていたそうですが、痛みが引かないとのことでした。

左の外観写真は初診時もものです。
赤色矢印で示した尺骨頭の部分で隆起が確認でき、押さえると痛みも伴います。

左のレントゲン画像は初診時のものです。

赤色矢印で示した右遠位橈尺関節は、健側に比べ、患側は離開していることが確認できます。 

左のレントゲン画像は側面から撮影したものです。

赤色矢印でしめした尺骨頭は背側に脱臼していることがわかりました。

左の写真の様に前腕の回内、回外の制限が見られました。

前腕回外位でギプス固定を約5週間行いました。

左のレントゲン画像はギプス固定後のものです。

赤色矢印で示した、遠位橈尺関節の離開は消失しており、背側脱臼していた尺骨頭も整復位にあることが確認できました。

治療後、日常生活も、支障なくすごせているそうです。 

遠位橈尺関節脱臼は、手術をせずに治せる可能性のある怪我です。

上記でご説明したように、手関節の外観で骨が飛び出ているような変形が見られた場合には、
お早めにお近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。