尺側手根伸筋腱脱臼(小指側の手首がカクカクする!)

尺側手根伸筋腱とは?

尺側手根伸筋腱とは、以下の図で示すように、手関節の尺側(赤丸印の部分)にある腱をいいます。

尺側手根伸筋腱は第6区画というトンネルの中を通っており、尺骨の腱溝(少しくぼんだ部分)の上を通っています。

尺側手根伸筋腱脱臼はなぜ起こるのか?

尺側手根伸筋腱脱臼は、前腕回外・尺屈で力を入れた際、尺側手根伸筋腱が収縮し脱臼する場合や、
前腕回内を強制されて、生じる場合などがあります。

以下は、尺側手根伸筋腱脱臼のイメージ図です。

第6区画を構成している膜様組織が骨膜からはがれてできた仮性嚢(ポケット)の部分に尺側手根伸筋腱が逸脱し、

脱臼した状態となります。

尺側手根伸筋腱脱臼とは?

尺側手根伸筋腱脱臼は、以下の動画のように外観でも脱臼しているのがわかります。

以下の動画は、尺側手根伸筋を脱臼させたり元に戻したりをしている外観とエコーです。

以下でエコー画像を詳しくご説明します。

左は、尺側手根伸筋腱が腱溝に収まり、正常な位置にあることがわかります。

脱臼させると、腱溝から尺側手根伸筋腱が逸脱し、仮性嚢認められます。

このように、尺側手根伸筋腱脱臼はエコー検査で診断できます。

尺側手根伸筋腱脱臼の治療

尺側手根伸筋腱脱臼は受傷後3~4週以内なら、ギプス固定による保存療法が有効です。

ギプス固定は、手関節を含めて上腕部分までと、少し不便はありますが、手関節の回内・外の制限も行うようにします。

固定期間は、約6週間です。

ギプス固定のポイントは、ギプス内での尺側手根伸筋腱の脱臼を防ぐことが大切です。

そのため、左のギプスの外観写真のように仮性嚢をふさぐように腱溝をモールドし、再脱臼を予防します。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

21歳の男性です。

左手関節、尺側部の痛みを訴えて来院されました。

昨日、腕相撲の試合に出場しており、終わってから、
尺側手根伸筋腱の脱臼に気づいたそうです。

左の写真は、初診時の外観です。

赤色丸印で囲んだ部分が腫れていることがわかります。

左の動画は、手関節を背屈すると尺側手根伸筋腱は脱臼し、
掌屈すると、整復位に戻っていることが確認できます。

左のレントゲンは初診時のものです。

赤丸印の部分に痛みがあるのですが、
レントゲンでは、骨や関節部分に以上は認められませんでした。

尺側手根伸筋腱の脱臼を確認するため、
エコー検査を行いました。

脱臼を確認するため、動態撮影を行ったものが、左の動画です。

エコー動画をわかりやすく静止画にしたものが、左の写真です。

正常な位置のエコー画像では、
尺側手根伸筋腱は腱溝に収まっていますが、
脱臼位のエコー画像では、
尺側手根伸筋腱は腱溝から逸脱していることがわかります。

治療のため、ギプス固定による保存療法を提案したのですが、
仕事に差し支えないようにするため、通常より短いギプスになりました。

また、近く腕相撲の大会があるため、
それに出場するために、固定期間も短くなりました。

左の赤色矢印で示した部分は、脱臼が生じないように、
尺側手根伸筋腱溝をモールドしてあるところです。

左のエコー画像は3週間後のものです。

痛みはほとんど消失してきていますが、エコーで確認したところ、脱臼が生じたままでした。

ギプス固定を継続して行いたかったのですが、
大会にどうしても出場しなければならないということで、
治療を継続することができませんでした。

しかし、痛みは消失しており、
無事に腕相撲の大会にも出場できたとのことでした。 

尺側手根伸筋腱脱臼は非常にまれな疾患です。

知らずに放置されたまま痛みをお持ちの方や、スポーツ中止などができずに慢性的な痛みとなっている方もいらっしゃいます。

早期に治療を行えば、保存療法で治る怪我ですので、上のような症状がある場合には、
早い目にお近くの病院へいかれることをお勧めいたします。