手の腱交叉症候群 (インターセクション症候群)

手関節周辺の腱鞘炎ではドケルバン病がよく見られますが、
実は、良く見ると今回御紹介する「インターセクション症候群」という疾患である場合があります。

では、「インターセクション症候群」はどこで起こる疾患なのでしょうか?

上の絵にあるように、手首から少し離れた×印のところに

腫れと痛みが出る腱鞘炎のことを「インターセクション症候群」といいます。

では、ドケルバン病とどのように違うのかというのを比べたのが下の二枚の写真です。

インターセクション症候群の場合

ドケルバン病の場合

腫れている場所の違いがお分かりいただけますか?

腱鞘炎という点では同じですが、起こる場所が違います。

どうしてこのような違いが生じるのでしょうか?

上の図は、「インターセクション症候群」の発症原因を図に表したものです。

親指を伸ばしたり、外へ開いたりする動作に関係する腱のグループと、
手首を返す動きに関係する腱のグループは赤丸印のところで交叉しています。

ですので、手作業やスポーツ動作で指や手首を返す動作を繰り返すことにより、
交叉部で生じた腱鞘炎が「インターセクション(交叉)症候群」です。

この疾患は大工仕事や、手作業が多いデスクワークなどの職業の方に良く見られます。

症状としては、手首を返す時の痛みと、親指でキーボードなどを打つ時の痛みなどがあります。

治療方法は親指と手首の動きを制限するように装具を装着します。

この装具は、スタッフが患者さんの手に合わせて、すぐにおつくりします。

軽い樹脂でできていて、取り外し可能です。

基本的に寝ている間装着していただき、
邪魔にならない範囲で、日中も装着していただき、手を休めます。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

51歳の男性です。

左手首を動かした時の痛みを訴えて来院されました。

来院される2週間前に病院を退院して、
再び手作業の仕事を開始してから痛みが出たそうです。

手首を動かす動作と同時に、
親指を外へ開くような動作をすると痛むとのことでした。 

別の角度で見てみると、
手関節から離れた前腕部分に腫れがあり、
患部を圧迫しながら、親指を動かすと、布がすれるような感覚がありました。

以上のことからインターセクション症候群と判断しました。 

レントゲンでの所見では、骨に異常はありませんが、

軟部陰影では、左の赤矢印部分に腫脹が確認できました。 

エコーを撮ると、明らかに患側では炎症による腫脹のために、幅が広く映って見えます。

治療としては、痛む場所に注射をして、痛みを和らげ、
親指と手首の動きを制限するために装具を処方しました。 

41歳の男性です。

右手首を動かすことで痛みが生じたので来院されました。

普段から手を良く使っておられて、
来院する少し前に、電動ドライバーを使ってから、
痛みが増強したとのことです。

左右を比較してみると、
右手関節のやや下に腫れがあり、
親指を返す動作でさらに痛みが増強しました。

これらの所見から、インターセクション症候群と考えました。 

レントゲンでは、骨には異常はありません。

赤矢印で示した部分の腫脹が確認できます。

処置としては、固定装具を処方して、
仕事時に、患部の負担にならないような動作を指導しました。 

39歳の女性です。

両前腕の痛みを訴えて来院されました。

お仕事で、手作業をしておられましたが、
急に忙しくなったため、痛みが強くなったそうです。

特に左側に痛みが強いとのことでした。

左右を比べてみると、明らかに左前腕が腫れていました。 

レントゲンを撮ってみると、
明らかに左の前腕部に軟部陰影の肥厚が認められました。 

エコーを撮ってみると、腱鞘周囲に炎症像が認められました。

インターセクション症候群と考えて、患部に痛み止め注射を行って、同時に、
装具を処方し、手を休めていただくようにしました。 

42歳の女性です。

右の前腕部が痛いということで来院されました。

赤丸で囲んだ部分が腫れていました。

2週間前から作業の内容が変わり、
手関節をはげしく使うようになってから痛みが出たそうです。

×印のところで押さえながら、親指を動かすと、
こすれるような感覚がありました。

エコーを撮ってみると、
親指を動かしながらの映像で、
赤矢印の母指の腱と、青矢印の手関節の腱が動き、
×印の部分でこすれていることがわかりました。 

交差部での腱鞘炎と考えて、痛み止め注射をした後、装具を処方しました。

インターセクション症候群は親指や手首を使う動作が多い方によく見られます。

上の図や写真で示した部分が腫れるので、すぐにわかります。

治療は痛み止め注射と、固定療法をすることになります。

その後の経過は、2~3週間もすれば腫れも引き、痛みもなくなります。

前腕部が痛み、レントゲンで異常がなく、いつまでも痛い場合、
インターセクション症候群を疑ってみて下さい。

早めに処置をすることで、辛い痛みから解放されますので、
痛みを我慢せずに、整形外科を受診されることをお勧めします。

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