肩関節脱臼(あっ!肩を脱臼した!)

スポーツによって発生する関節の脱臼で多いのは、肩関節脱臼であるといわれています。

特に、ラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツにおいては、
繰り返し脱臼をする可能性もあります。

上の写真は、アメフトの試合中に脱臼してしまった患者さんです。

赤矢印の部分が少し窪んでいますが、本来あるはずの上腕骨頭が移動しているために、このようにへこんで見えるのです。

レントゲンで見ると、赤矢印の先にあるべき上腕骨頭が移動していることがわかります。

繰り返し脱臼をしていると、スポーツ活動だけでなく、
日常生活での何気ない動作でも脱臼してしまう事があります。

このページでは、肩関節で脱臼が繰り返し見られる理由を見ていただき、
その治療についてもご覧いただきたいと思います。

肩関節の脱臼を防止する機構

肩関節の脱臼を防止するためには、さまざまな組織が働いています。

1、関節上腕靭帯の役割

肩関節は非常に動きの大きい関節なので、周囲は関節包や関節上腕靭帯と呼ばれる

バンドの役割をする組織でつなぎとめられています。

それらの中でも、下の表にある3つの関節上腕靭帯が重要な役割を果たしています。

下垂外旋位

 腕を垂らしている状態では上関節上腕靭帯に緊張があり腕が下へ下がろうとする力に対して制動効果を持っています。一方で、下関節上腕靭帯は緩んでいて、ポーチ状にゆとりを持っています。

45度外旋位

腕を上げるにつれ、下関節上腕靭帯は徐々に緊張を増していきます。上・中関節上腕靭帯はやや弛緩していきます。 

90度外旋位

肩が脱臼する肢位に近い状態では、下関節上腕靭帯は強く緊張し、上腕骨頭の安定を高めます。 

上記の表にあるように、肩関節の脱臼を制動する役割を担うものの一つに下関節上腕靭帯が重要であることがわかります。

上の図は、肩関節を上から見たものです。

上腕骨頭が前方へ移動しようとした際に、関節上腕靭帯が緊張し、制動していることがわかります。

2、関節唇の役割

上の図は、肩の関節をゴルフボールとティーに見立てた模式図です。

ご覧の通り、上腕骨頭のほうが大きく、それを受け皿として支える肩甲関節窩は小さい構造になっています。

その受け皿側をさらに補強するものとして、関節唇が存在して、少しでも安定できるようにしています。

ボール(上腕骨頭)がティー(肩甲関節窩)の真上にあるとき、骨頭中心は関節窩の中心と同じ延長線上にあり、安定しています。

脱臼しそうな時、上腕骨頭が外れないように支える役目を関節唇はしています。

上の図は、肩関節を横から見て、肩甲関節窩周辺を見たものです。

関節唇は肩甲関節窩の面積を補うかのように周りを取り巻いています。

どうして肩関節の脱臼は繰り返しやすいのか?

スポーツや何らかの事故などの外傷によって初めて脱臼をした場合、これを外傷性脱臼と言います。

初回に脱臼した際に、何らかの組織が傷ついたままになって、再び脱臼をしてしまう事を反復性脱臼と言います。

この状態がどうして起こるのか、以下で説明していきたいと思います。

肩関節脱臼が生じるときの肢位

上腕骨の位置と骨頭の位置

上の図は、腕を水平に上げて後ろにもっていき、さらに手のひらを上に向けた姿勢での上腕骨の位置です。そこへさらに外力が加わると上腕骨頭は前方へ移動するような力が加わります。これが脱臼の起こる肢位です。

損傷される部位

脱臼肢位では、おもに肩関節の前方やや下の部分が損傷します。これは上の赤い丸で示したように下関節上腕靭帯や関節唇、時には関節窩 まで損傷することがあります。

上の図で示したように、単に肩が脱臼したということだけでも、いかにいろんなところが損傷するのかがわかります。

肩関節脱臼の際に見られる骨の損傷

上の図は、正常な肩関節を上から見た図です。

以下でご紹介する脱臼を起こした場合の図と比較してご覧いただきたいと思います。

上の図は、脱臼が生じた際に肩甲関節窩の一部が欠けてしまった場合を示しています。

関節唇が損傷した場合も似たような状態になりますが、ときには骨までもが欠けてしまうこともあるのです。

これの状態を骨性Bankart lesionと言います。

上の図は、上腕骨頭側の骨欠損を示しています。

ちょうど上腕骨頭の後ろ側にあたる部分が関節窩との接触で欠けてしまいます。

この状態をHill Sachs lesionと言います。

脱臼が生じたら、すぐに整復しますが、元の位置に整復されたのちでも、
上記のような骨の損傷があれば、損傷の傷が溝のようになって、
脱臼が再び起こる可能性を残してしまいます。

日常生活上で脱臼しやすい姿勢

反復性脱臼になってしまうと、外傷だけに限らず、日常生活での些細な姿勢ですらも再脱臼してしまう事があります。

上の図にあるように、肩甲骨関節窩の面(赤い点線の部分)から腕が後ろの位置にあるときに

再脱臼を起こしやすいといわれています。

具体的には、以下のような例があります。

上の図にあるように、肩関節が後ろ方向へ開くような肢位は特に注意が必要です。

自然と日常生活の中でしてしまいそうな姿勢ですが、1度脱臼された方は、上記のような肢位にならないよう注意が必要です。

肩関節の脱臼は再発しやすいものです。

少しでも再発しないようにするには、日頃からの注意も大切です。

また、脱臼に対する治療も再発防止には重要です!