踵周辺の痛みから少し場所はずれますが、アキレス腱は踵の後部に付着していますので、
運動などの後に、痛みが生じて当初踵周辺だと思っていた痛みが、
実はアキレス腱の痛みであったという場合があります。
下の図は足を後ろから見た図で、アキレス腱が腫れているのを表したものです。
また、アキレス腱全体が腫れてしまった場合を「アキレス腱周囲炎」といいます。
多くの場合、アキレス腱周囲が下の写真のように腫れる「アキレス腱周囲炎」の方が多く見られます。
上の写真では、左アキレス腱全体が腫れていて、「アキレス腱周囲炎」になっています。
このページでは、
「アキレス腱炎」「アキレス腱周囲炎」
について詳しく御覧いただきたいと思います。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
17歳のサッカー部に所属している男性です。
踵の上が痛くなって来院されました。
練習時に痛くて走れなくなったということで、
足を後ろから見てみると、右のアキレス腱が腫れていました。
(赤丸で囲んだ部分です。)
レントゲンを撮って、踵周辺に骨性の原因がないか調べてみましたが、特に、問題はありませんでした。
しかし、アキレス腱の影を見比べてみると、健側(青色矢印の部分)と患側(赤色矢印の部分)を見比べると、
アキレス腱の形が違い、患側は腫れていることがわかります。
エコーを撮ってみると、赤矢印で示したように、
左の輪切り状態のエコーでも、右の縦切りのものでも、
どちらにも炎症の画像が見受けられました。
この方は、痛みがなくなるまで練習を休止し、
ヒールパッドを入れて、アキレス腱にかかる負担を軽減することで、2週間ぐらいで症状が改善しました。
63歳の女性です。
介護施設でお仕事をされていますが、階段を降りるときに踵の後ろが痛くなり、来院されました。
後ろから見てみると、アキレス腱の腫れと、扁平足傾向があることがわかりました。
エコーを撮ってみると、
左のアキレス腱(腱側、青○の部分))は腫れていませんが、右のアキレス腱(患側、赤○の部分)は腫れて大きくなっています。
靴に土踏まずができるようなアーチパッドと、
アキレス腱の負担を軽減するためにヒールパッドを処方することで、症状は改善しました。
24歳の女性です。
陸上競技部に所属しておられて、1週間前より痛みあがり、走れないということで来院されました。
後ろから見ると、赤○で囲んだ部分が腫れていることがわかります。
エコーを撮ってみると、
赤矢印で示した部分に炎症を起こしている画像がありました。
(左は輪切りにした画像で、右は縦切りにした画像です。)
この方も、練習を休止して、ヒールパッドを処方して経過を見ました。
約2週間で症状は改善しました。
36歳の男性です。
踵の後ろが痛いということで来院されました。
よく見てみると、右のアキレス腱が少し腫れていました。
エコーを撮ってみると、右のアキレス腱周囲(赤○部分)が炎症を疑う画像が見えました。
ヒールパッドを処方して、経過を見ることで、症状は改善しました。
多くのケースが、練習量の軽減と、
上の写真のようなヒールパッドを処方することで良くなります。
炎症がある間は、歩くのもつらいケースもありますが、アキレス腱の伸び縮みを少なくして、
歩行が楽になるようにするのがヒールパッドの効果です。
ヒールパッドは、症状に応じて枚数を増やしたり、減らしたりして加減します。ぜひ、 試してみてください!
アキレス腱炎・アキレス腱周囲の痛みに対する
テーピング
運動時に痛みがあり、ヒールパッドで違和感がある場合にはテーピングをしてアキレスけんをサポートするような方法があります。
以下で、ご紹介します。
皮膚を保護するために、アンダーラップを巻きます。
しかし、足周辺は可動性が大きいので、アンダーラップをすることで、
テープが逆にずれてしまうと思われる場合は、
直接テープを巻く場合もあります。
アンカーテープを、上と下に巻きます。
素材は伸縮性のあるテープを用いて、動かした時に、あまり違和感が出ないように、心持緩めに巻きます。
次に、アキレス腱をサポートするように縦にテープを巻きます。
このとき、やや足先を下に向けるようにしてテープを巻きます。
左の写真にあるように2通りの方法があります。
いずれもアキレス腱をサポートする目的で行いますが、
テーピングしてもらった人の感触の良い方で、巻いてもらうといいと思います。
さらに、アキレス腱を支えるように足の裏から始まって、8の字に上がり、アンカーテープのところで止めます。
横から見た写真です。
足の裏から始まったテープが、踵もサポートしているのがわかります。
このように、踵のぶれによって生じる
アキレス腱の伸長も止めることができます。
巻いたテープがずれないように、
アンカーテープを上部と、下部に巻いて仕上げます。
前に体重を乗せたときに、
アキレス腱が引っ張られて痛みが出ないか
チェックします。
また、蹴りだした際に、
アキレス腱が収縮する際の痛みが出ないかチェックします。
スポーツを行う際には、こういったテーピングも試してみてください!
アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎はオーバーユースによるものがほとんどです。
1~2週間の練習休止と、ヒールパッドでほとんどが良くなります。
アキレス腱の痛みが出るぐらいの人は、それぐらい一生懸命動いているということです。
ですので、痛くならないように運動前後のケアーが大切です。
運動前後には、しっかりストレッチを行い、
アキレス腱にかかる負担を日頃からケアーすることで軽減しておくことも非常に大切です。
アキレス腱に痛みが出た場合には、早い目に整形外科へご相談ください!