前足根管症候群(深腓骨神経麻痺)ぜんそくこんかんしょうこうぐん

 手足がしびれたりする原因には頚椎や腰椎疾患を由来とするものもありますが、
腕や足の末梢神経が通過する途中で神経が圧迫されておこるものもあります。

このような疾患を「末梢神経絞扼性(まっしょうしんけいこうやくせい)障害」といいます。

末梢神経の絞扼性障害は手に多くみられるのですが、
腰椎由来の神経痛だと診断された疾患の中には、足の末梢神経の絞扼性障害だったということもあります。

そこでこのページでは、足の末梢神経絞扼性障害の一つである、「前足根管症候群」という障害がどういう疾患なのか、
また、どのようにして治療が行われていくのかについて御覧いただきたいと思います。


「前足根管症候群(深腓骨神経麻痺)」は
下の図の赤色斜線の部分が痺れます。


これは、スポーツに限らず、日常履いている靴が原因で起こる障害です。

足がしびれて困っている方の中には、
実は「前足根管症候群」の方が多いのです。

前足根管症候群の病態

  上図の黄色の線が「深腓骨神経」です。この神経はピンク色に塗られた部分の感覚を司っています。 

水色の部分は「伸筋支帯」と呼ばれるバンド状のもので、深腓骨神経はこの下をくぐって出てきます。

図1の部分で圧迫を受けると、ピンク色の部分がしびれてきたり、感覚異常が生じたりします。

こういった愁訴では「前足根管症候群」を疑います。

また、「深腓骨神経」は図2の部分でも圧迫を受けます。

図2の赤い部分は「短趾伸筋」という筋肉です。
深腓骨神経の一部がこの筋肉を支配しているので、
深腓骨神経が圧迫を受けると、稀にこの筋肉の力が低下することもあります。

図3で示したように、
靴の紐で足が圧迫を受ける↓の部分はちょうど部分にあたっており、
その結果、この障害がおこると考えられます。

 

以下で、実際の症例をみていただきたいと思います。

この患者さんは、足指の先の痺れ感を訴えて来院されました。

理学所見としては写真の×印のところを軽くたたくと足先にひびきます。

左の写真にある様に、足先の斜線部分に感覚異常を訴えておられました。

靴を履いてレントゲンを撮ってみると、靴が足を圧迫している部分が良く分かります。

靴紐をきつく締めると、さらに圧迫が強くなり、足先が痺れてきます。

 

靴上に→がついていますが、ちょうどこの部分で神経の通り道が圧迫されています。

この患者さんには、靴紐をきつく締めないことと、
圧迫部分にパッドを入れる事を指導して、1~2週間で症状が消え、プレーにも支障なく、スポーツ復帰しました。

左は50歳のマラソンランナーの方の事例です。

靴紐の締めすぎが原因で、×部分が強く圧迫され、斜線の部分がしびれています。

そこで、圧迫を受ける部分の圧力を軽減するように厚さが5㎜程度のパッドを処方しました。

このパッドはリハビリスタッフが馬蹄形にパッドをくりぬいて作ったものです。

これで、症状は軽減し、問題なく走る事ができるようになりました。

本疾患の多くは、パッドを処方してからしばらくすると症状が軽減します。

経過観察を続けていくうち、約2~3週間程度で痺れ感が焼失するので心配は要りません。

しかし、長期の及んで症状が取れない場合は他の原因があるかもしれませんので注意が必要です。

次はサンダルによる圧迫で症状が出た方の症例です。

サンダルの紐が足の甲を圧迫しています。

×印をたたくと、足先にひびきます。

また、斜線の部分が痺れています。

レントゲンをかけてみると、上の写真の×印をつけた部分が腫れている事が分かります。

この方の場合は、このサンダルをはかないようにしていただきました。

スポーツ以外でも、日常の靴による圧迫でこの疾患は起こります。

ですので、足先が痺れたという場合には、靴による圧迫を疑ってみてくださいね。

左の写真は、足ゆびの痺れを訴えて御来院になった患者さんの足の写真です。

営業職で、靴を履いて歩く事が多いので、いつも赤丸の部分が靴に当たって、指が痺れていたそうです。

横か見てみると、足の甲の部分が少し腫れているのがわかります。

原因を探るために、日頃履いておられる靴について質問したところ、靴を履いた際に圧迫されて痛みが生じてることが分かりました。

上の写真の赤丸部分周辺をエコー検査してみると、黒い影が見られ、ガングリオンができている事がわかりました。

そこで、注射器でガングリオンの中の液体を抜きました。

注射器で液体を抜いた後、さらに、上からガングリオンを圧迫してつぶしました。

治療後、ガングリオンがなくなっています。

神経を圧迫していたガングリオンがなくなったので、痛みは徐々になくなって歩きやすくなりました。

靴などで深腓骨神経が圧迫され、前足根管症候群になる場合がほとんどですが、この患者さんのように、ガングリオンなどのほかの原因で症状が出る方もいらっしゃいます。

足の先がしびれるなど、足に問題がある場合には、お早めに病院で御相談ください。


「前足根管症候群(深腓骨神経麻痺)」は、御覧の通り、
比較的簡単な治療ですぐに治る場合がほとんどです。

圧迫している原因がはっきりしている場合には、
手術で圧迫因子を開放するという方法もあります。

しかし、靴が原因であることが大部分です。


ですので、痺れが出る原因をまず考えて、
靴ではないかと疑ってみてください。

靴が原因ならば、
靴をきつく締めないとか、
違う靴を履いたりすればほとんどの場合治ります。


足の痺れは放置されがちですが、

原因を早く特定すれば早く治る場合が往々にしてあります。

ですので、足の痺れでお悩みの方は
まずは靴を緩めたり、変えたりしてみて、
それでも症状が軽快しない場合には、
専門医に御相談ください。