肋骨の骨折と言えば、ぶつけたとか、転んだとか外傷によるものがすぐに想像できますが、
肋骨にも疲労骨折は起こります。
このページでは、稀な肋骨疲労骨折について、ご覧いただきたいと思います。
肋骨の疲労骨折の報告は、スポーツでは、ゴルフや野球のピッチャーのように、
繰り返す体幹のねじり運動が必要な競技で起こりやすいといわれています。
肋骨疲労骨折の発症メカニズム
肋骨疲労骨折はスポーツでいえば、ゴルフによるスポーツ障害としてよく見られます。
上の図は、背中から見た肋骨です。
赤い丸で示したように、肋骨疲労骨折は左側の肋骨の後ろの方に多くみられるといわれています。
これはあくまで右利きの方が、ゴルフスイングをして発症したという事に基づいています。
つまり、利き手と反対側に発症するという報告例が多いのです。
なぜこのようなことになるのか、以下の図で説明したいと思います。
肋骨疲労骨折の構造上の問題
脊椎と胸骨にまたがって、左右の肋骨は胸郭を形成します。
肋骨角から肋骨結節にかけては、肋骨の構造上弱い部位であると言われています。
その部位に疲労骨折が多いのは、以上のような構造上の理由が原因の1つであると言われています。
動作による疲労骨折の原因
ゴルフスイング時の肋骨の動きをイメージしたのが上の図です。
バックスイングするときは肋骨に付着している筋肉の作用により、胸側に大きく肋骨が引っ張られるような力が働きます。
そこから、急にフォロースルーまでねじる力が働くことで、肋骨のカーブの強いところに応力がかかります。
繰り返し、この動作を続けると、頻繁に肋骨の側面から後方部にかけてストレスがかかり、最終的にその部分に疲労骨折が生じます。
こういうストレスの原因となることの一つとして、筋肉のストレッチ不足が挙げられます。
また、急にゴルフの練習場に通い始めて、慣れない練習を過度にやりすぎたりすることで起こることもあります。
では、以下で実際の患者さんについてご覧いただきたいと思います。
〜症例1〜
20代の男性です。
2週間前より、胸が痛むという事で来院されました。
痛みのある左胸のレントゲン写真を撮りましたが、胸には異常は見られませんでした。
しかし、圧痛部位が限局性ではっきりしていたので、レントゲンで写らない部分での原因があるのではないかと思い、エコーを撮ることにしました。
エコーを撮ってみると、左の第5肋骨の圧痛部位に一致して、肋骨の表層に仮骨と思われる映像が見えました。
この方は、2か月前よりゴルフを始められ、毎日練習場に通っておられたそうです。
それらの問診の情報や、エコーの画像所見から、左第5肋骨疲労骨折であると診断しました。
〜症例2〜
40代の男性です。
左胸の痛みを訴えて来院されました。
ゴルフの練習を続けてから、痛みが出だしたそうです。
レントゲン写真を撮ってみても、骨の異常は認められませんでした。
この方は、以前からせきが続くために、内科で胸部CTを撮っていただいたところ、そのCT画像に肋骨の骨折画像が見えました。
問診の情報や、画像所見から左肋骨の疲労骨折であると診断しました。
肋骨疲労骨折とわかってからの治療としては、約2カ月ぐらいのスポーツ休止で良くなります。
復帰に際しては、体幹の柔軟性を向上させることやストレッチングが大切になります。
肋骨疲労骨折は単純レントゲン撮影だけではなかなか診断できません。
競技特性や、長引く胸部の痛みで、圧痛部位が限局しているなどの臨床症状から肋骨疲労骨折であると推察できます。
最終的に確認するためには、レントゲンに写らない早期においてはエコー検査が有効です。
また、はっきりとした画像所見を得るにはCT撮影が有効です。
以上の様に、体幹をねじるスポーツによって胸に痛みが出た場合には、肋骨疲労骨折であることを疑ってみる必要があります。
また、そういう場合には早期に整形外科を受診されることをお勧めいたします。