2018年11月29日 / 最終更新日時 : 2019年10月2日 佐野古東整形外科 全身の疾患 平滑筋腫、良性の腫瘍です(押したり、触れたりするとめっちゃ痛い!) 「押したら痛い!」「触れると激痛!」「冷えると痛い!」といった症状があり、足や膝に生じるできもの(腫瘍)に平滑筋腫があります。このページでは、あまり聞き慣れない、「平滑筋腫」がどういったものか、病態や症状、治療法など、実際の患者さんの症例をご覧いただきながら詳しいご説明していきたいと思います。 平滑筋腫とは? 平滑筋腫は、下肢(膝、足関節周辺など)の皮下に発生する硬い小さなできもの(腫瘍)です。良性の腫瘍ですが、押したり、触れたりすると痛く、寒冷時や運動時などに憎悪し、しばしば発作性疼痛を起こすことがあります。好発年齢は30歳から50歳であり、女性に多いといわれています。 平滑筋腫の画像診断 平滑筋腫の検査を行う手段として、エコー検査とMRI検査があります。以下の図がエコー画像とMRI画像です。 エコー画像 MRI画像 エコー画像は赤色矢印で示したように、境界が明瞭な低エコー像が見られます。MRI画像は赤色矢印で示したようにT1強調像(左側)では低輝度の変化が見られ、T2強調像(右側)では、高輝度の変化が見られ、エコーと同じく境界は明瞭です。治療は、手術で腫瘍の摘出を行います。予後は、良好であり、再発はほとんどありません。以下で実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。 44才の女性です。左膝の痛みを訴えて来院されました。6年前に、左膝に小さな腫瘤があることに気づいたそうです。その腫瘤に触れると激痛が走り、冷えると痛むそうです。左の写真は初診時のものです。赤色矢印で示した部分が痛むそうです。 左のレントゲン画像は初診時のものです。レントゲン画像では、特に異常所見は見られませんでした。 左の写真は初診時のエコー画像です。赤色矢印で示した部分に腫瘤があり、境界は明瞭であることが確認できました。 左の写真はMRI画像です。MRIでは左のT1画像では、赤色矢印で示した腫瘍部分は低輝度に、右のT2画像では高輝度に写っています。MRI画像でも、境界は明瞭であることがわかりました。 左の写真は膝を上から見たものです。赤色矢印で示した部分に腫瘍が確認できました。以上のことから、良性の腫瘍と考え、腫瘍の摘出手術を行いました。 左の写真は手術時のものです。黄色矢印で示した物が腫瘍です。病理検査を行った結果、この腫瘍は平滑筋腫であるとわかりました。 70才の男性です。右アキレス腱部の痛みを訴えて来院されました。約1年前から右アキレス腱内側に腫瘤があることに気づいたそうです。放置していたらしいですが、徐々に大きくなってきたため来院されました。 左の絵は初診時のものです。赤色矢印で示した部分に腫瘤がありました。皮膚の上から触れるだけで、腫瘤が確認できました。この腫瘤を押さえると痛みがあるそうですが、安静時などの痛みは、特に無いそうです。 左の写真は手術時のものです。黄色矢印で示したものが腫瘍です。約1cm大の腫瘍を摘出し、病理検査をおこなったところ、平滑筋腫であるとわかりました。 44才の女性です。左膝の痛みを訴えて来院されました。約1ヶ月前より左膝に触れると激痛があるとのことでした。左の写真は手術時のものです。黄色矢印で示したものが腫瘍です。約7mm大の球状の硬い軟部腫瘍が発見され、摘出されました。 71歳の女性です。左中指指腹部(赤矢印で示した部分)の痛みを訴えて来院されました。2年前よりものが触れると痛みが出現するとのことです。近隣の皮膚科でグロームス腫瘍ではないかということで、当院を紹介されました。左の写真は初診時のものです。赤色矢印の部分が触れると痛いそうです。 左のレントゲン画像は初診時のものです。赤色丸印で示した部分が痛みを訴えている部分です。骨のScalloping(侵食像)などは認められなかったのですが、石灰像のようなものがうっすら確認できました。 左のエコー画像も初診時のものです。赤色矢印で示した部分に、腫瘍と思われる低エコー像が認められました。 左の写真は、MRI画像です。上の写真は中指を側面から撮影したものです。下の写真は、指を輪切りにしたものです。赤色矢印で示した指腹部分に境界明瞭の腫瘍と思われる像が確認できました。また、中心部分は小さな結節影も認められました。グロームス腫瘍は完全に否定できませんが、良性の腫瘍であると言うことで手術を行いました。 手術では、MRI画像と同じように、指腹部分に境界明瞭な腫瘍が赤色矢印部分に認められ、摘出しました。病理検査を依頼したところ、左中指指腹部分の平滑筋腫ということがわかりました。 症状や、画像だけでは確実に平滑筋腫と決めつけることはできません。この症状やエコー、MRI画像に似た疾患に「グロームス腫瘍」があります。グロームス腫瘍は爪周辺に発生することが多く見られますが、爪周辺以外にも発生することがあります。平滑筋腫とグロームス腫瘍を鑑別するには、腫瘍の病理組織検査を行うことで判断できます。自分でできものに触れることができ、激痛を伴う場合は我慢せずに、お近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。 関連する参考資料 Facebooktwitter