子供さんが、股関節の痛みや、大腿部や膝に痛みを訴える病気に、大腿骨頭すべり症があります。
突然変な歩き方をしているのに気がつき、初めて子供の股関節の痛みに気がつく親御さんもいらっしゃるかと思います。
子供が股関節や膝の痛みを訴える病気はいくつかありますが、このページでは、「大腿骨頭すべり症」について、
レントゲンの見方や治療法などについて詳しくご紹介していきたいと思います。
大腿骨頭すべり症とは?
大腿骨頭すべり症とは、成長期の子供にみられる病気です。
好発年齢は、男性で平均12歳、女性で平均11歳といわれています。
子供の股関節の病気の中では、頻度は少ないものの、長期間罹病すると、滑りが行動にある傾向が強いので、
早期発見、早期治療が大切です。
特徴的なのは、子供さんは大腿骨頭すべり症で、股関節の病気なのにもかかわらず、
大腿部や、膝の痛みを訴え、大腿部や膝の治療を受けるケースがしばしば見受けられます。
成長期の子供さんで、膝の痛みを訴える場合には、大腿骨頭すべり症も鑑別すべき疾患であるといえます。
なぜ大腿骨頭すべり症が起こるのか?
大腿骨頭すべり症が起こる原因は、2つ考えられています。
一つ目は、ホルモンが原因となり、骨端線(成長軟骨)の力学的強度の低下(脆弱化)をひき起こしているといわれています。
その原因となるホルモンは成長ホルモンと、性ホルモンです。
成長ホルモンは、骨の先端にある軟骨細胞を増やし、骨を成長させる働きがあります。
一方性ホルモンは、これらの増えた子供の骨(軟骨細胞)を硬い大人の骨に成熟させる働きがあります。
これらのホルモンの分泌が不均衡(成長ホルモンの旺盛な分泌と、性ホルモンの不足)が
力学的強度の低下を引き起こしているといわれています。
二つ目は、力学的負荷の増加が原因であるといわれています。
体重の増加や、運動量の増加が関与しているとされており、比較的肥満体形の子供さんに多く発症している傾向があります。
大腿骨頭すべり症のレントゲン画像(タイプと重症度分類)
大腿骨頭すべり症は大きく分けて3つのタイプがあります。
1、急性型(acute slip) 経過が2週間以内のもので、激痛のため歩行が困難となることが多い。
2、慢性型(chronic slip) 症状発症から2週間以上経過しているもので、骨端部はゆっくりと滑る。
3、慢性型から急性型への進行(acute on chronic slip)
慢性型の経過中に急に外力が加わって、さらに激しく滑り急性症状を呈する。
この場合は滑りが大きくなることが多いようです。
最も多くみられるのは、2の慢性型であり、次いで1の急性型です。
慢性例では、数日の安静で消失するような軽い症状が繰り返されていることが多いようです。
大腿骨頭すべり症の重症度は、レントゲン画像で分類されています。
レントゲン画像では、大腿骨頚部と骨頭の正確な側面像を描出するために
Lauensteinc肢位(股関節90°屈曲位、45°外転)で撮影を行います。
この撮影方法のレントゲン画像から、以下の図で示した後方滑り角度を計測します。
このレントゲン画像から測定した後方傾斜角度で重症度を分類しています。
また、以下の図のように滑りの大腿骨頚部の横径に対する割合で表す場合もあります。
治療に関しては、基本的に保存療法の適応がなく、手術の適応となることがほとんどです。
骨端線が閉鎖していない限り、滑り始めでもそこで滑りが停止するという保証がないことが理由です。
以下で実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
12歳の男の子です。
左股関節の痛みを訴えて来院されました。
学校で友達と走っていて、転倒し、受傷されたようです。
転倒してから痛みのため、歩けなかったので、車いすに乗って当院を受診されました。
レントゲン撮影を行ったところ、左大腿骨頭に滑り像が認められていたこと、
転倒して痛みが強いことから、急性期の大腿骨頭すべり症と考え、
すぐに手術を目的に病院への紹介となりました。
左の写真は、手術後のレントゲン画像です。
左大腿骨頭すべり症に対して、ピンニング固定を行っており、
骨頭が整復されていることがわかります。
子供さんの人口が多い時代では、よく見られた疾患ですが、
少子化に伴い、大腿骨頭すべり症も少なくなってきているように感じます。
しかし、大腿骨頭すべり症で生じる股関節の痛みは、自然によくなるものではありません。
股関節の痛みが、なかなかよくならないといったことがあれば、大腿骨頭すべり症も疑い、
お近くの整形外科へ、できるだけ早く受診されることをお勧めいたします。