大腿外側皮神経痛(だいたいがいそくひしんけいつう)

足の神経痛という言葉で思い浮かべるのは、坐骨神経痛が多いと思いますが、
「大腿外側皮神経痛」は太ももの外側のみで生じる足の神経痛です。

このページでは、足の神経痛の一つである「大腿外側皮神経痛」についてご説明させていただきます。

上の図は、大腿外側皮神経が担当する知覚の領域を示したものです。

水色の部分で表してある大腿部の中央からやや外側と側面部を担当しています。

この神経は、皮膚の知覚を担当する神経なので、足の動きが麻痺して足が上がらないとか、筋肉が痩せていくなどということはありません。

まさに、上で水色で示した領域だけの痺れ感や、痛みだけが自覚症状として現れます。

大腿外側皮神経の走行を表したが上の図です。

この神経は、第2、3の腰椎の傍から出ている神経が骨盤の内側を通り、
股関節の前面部で鼡径(そけい)靭帯の下をくぐって縫工筋の間に出てきます。

上の図で赤丸で示した部分は、大腿外側皮神経が絞めつけられやすい場所です。

鼡径(そけい)靭帯や、縫工筋の間を通るので、
狭い空間の中を通る神経がその部位で外部からの圧迫を受けることが原因で、神経痛を発症します。

上の写真は、大腿外側皮神経痛の症状を示したものです。

発症時は、大腿の外側に灼熱感を伴う痛みが出現します。

また、大腿外側皮神経が鼡径(そけい)靭帯の下をくぐるところあたりで、
Tinel sign(ティネル・サイン[兆候])と呼ばれる叩くとひびく場所があります。

さらに、上の写真で斜線を入れた部分に、感覚の低下と痺れ感があります。

では以下で、実際の患者さんについて御覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

50代の男性です。左大腿の外側の痛みを訴えて来院されました。

3週間前から、左の大腿部の前面に灼熱感があったそうです。

歩くときに、痛みが増強し、灼熱感が強くなるそうです。

腰痛はありません。

写真の赤丸で囲んだ部分が強くしびれる範囲でした。

同じく赤丸で示した部分が、座っていると灼熱感がきつくなり 、その領域から、大腿の痛みは大腿外側皮神経痛によるものであると考えました。

所見をとってみると、×印で示した部分に叩くとひびくポイントがあり、その場所で大腿外側皮神経が圧迫されていることが疑われました。

腰椎に問題があって神経が圧迫をうけているのか否かを鑑別するために、レントゲンを撮ってみました。

すると、第5腰椎と、仙骨のレベルで椎間板の厚みは薄くなっているものの、今回の大腿部がしびれる原因とは関係ない場所なので、腰椎由来のしびれではないことがわかりました。

今回のしびれが出た原因は、何かと考えた時に、この方は3か月前から、急に体重が13kgほど増えたそうです。

仕事が事務なので、座ることが多く、お腹が出てきたせいで、ズボンが鼡径(そけい)部のあたりにくいこんできたそうです 。

そういうわけで、外的な神経の圧迫要因はこれであると判断しました。

血液検査の結果でも、内臓脂肪の増加に関わるコレステロールなどの数値が高い値を示していました。

ですので、具体的な治療としては、減量を勧めました。

大腿外側皮神経痛は、鼡径(そけい)部を圧迫することになる原因、すなわち肥満・妊娠・ベルトやコルセットの絞めすぎ、
あるいは窮屈なズボンや下着を付けることなどによって起こるといわれています。

ですので、太ももの横がしびれたり痛む場合には、
今回ご紹介した大腿外側皮神経痛を疑ってみてください。

また、こういった症状が思い当たる場合には、
整形外科を早い目に受診されることをお勧めします。

PAGE TOP