一般的に言えば痛風は、足指の関節が腫れて痛む疾患だと
認識されているようですが、実際には手指や手関節などの
上肢などにも発症します。
このページでは、上肢に発症した痛風の症例をご覧いただきたいと思います。
手指に発症した痛風の外観
上の写真は、突然左中指の痛みを訴えて来院された患者さんです。
明らかな外傷歴がないにもかかわらず、痛みが出現しました。
ご本人は関節リウマチではないかと思い受診されました。
しかし、診断の結果は違う疾患でした。
では、どんな疾患だったかといいますと、、、
手指に発症した痛風の特徴
上の写真の赤印○印で示した部分に腫脹と発赤が認められました。
また、左中指は痛みのため可動域制限もありました。
血液検査の結果では、尿酸値は、9.0と高値を示しており、
痛風による指の痛みということがわかりました。
多くは足指に見られる痛風ですが、手指肘などの上肢にも見られます。
なぜ手足に痛風がみられるのか?
痛風は、足の母指MTP関節痛で発症することが多いとされています。
先にご紹介した患者さんは手指に発症していましたが、
なぜ四肢末梢に痛風発作が生じるのでしょうか?
その理由となる根拠を示すものが下の図になります。
上の図は、体の内部の仮想温度分布を示した図です。
四肢末梢の部位は、他の部位に比べて低温になっています。
上の表は、体温と尿酸結晶の溶解度を表した表です。
体温が高いと尿酸結晶は血中に溶け、
体温が低いと尿酸結晶が溶けにくくなります。
以上のことから、手足は他の部位に比べて28℃と低温状態にあるので、
尿酸結晶が溶けにくく関節に結晶として蓄積されやすい部位と言えます。
このような条件のもとで、さらに手先を使う動作の頻度が増えることで
関節運動やストレスによって、関節内に尿酸結晶が剥がれ落ちて
炎症が起こると考えられます。
他の関節疾患との鑑別は?
変形性関節症
左の写真は、変形性関節症(ブシャール結節)の方の外観です。赤矢印の先で示した関節が他の指と比べて腫れています。しかし、関節の熱感や発赤は認めません。
同じ方のレントゲン写真を撮ってみると関節裂隙が狭まって骨硬化像も見られます。このように変形性関節症の方は、徐々に関節内の変化が生じます。
痛風
左の写真は、痛風の患者さんの外観です。関節の腫脹と発赤と熱感が見られます。
痛風の方のレントゲン画像です。
関節症の変化は見られず他の指と比べても骨硬化像はありません。
高尿酸血症の罹患歴が長い方の場合は、骨の透亮像が見られるなどして関節自体も変形がしてしまうこともあります。
肘関節で見られた痛風発作の患者さん
左の写真の患者さんは、突然肘の腫れと痛みを訴えて来院されました。
外観上、右肘関節の発赤と腫脹が認められます。また、肘関節を曲げ伸ばしすると痛みのため制限がありました。
レントゲン写真を撮ってみると尺骨の融解像が見られました。(赤矢印の部分)
今回の急性の関節痛の原因が何であるかを診断する目的で血液検査を行ないました。
左の写真は、その検査を示しものです。尿酸が10.5とCRPが、3.1と高値でした。
以上のことから、痛風関節炎と診断されました。
痛風は、足に起こる病気と思われがちですが、手指でも起こり得る疾患です。
関節の腫れや痛みが急に生じた場合は、
一度血液検査を受けることおすすめします。