有鉤骨鉤疲労骨折(ゆうこうこつこうひろうこっせつ)

手関節を構成する手根骨と呼ばれる積み木のような骨の中で、

スポーツ外傷が比較的起こりやすいのが今回御紹介する有鉤骨です。この骨は有鉤骨鉤(ゆうこうこつこう)と呼ばれる突起が存在する特殊な骨で、その部分が折れてしまうことがよくあります。

このページでは、完全骨折に至る前に早期発見ができて競技復帰が可能であった例をあげて、本骨折について御説明させていただきたいと思います。

上の図のように、手のひらの小指側(×印のところ)を押さえて痛い場合に有鉤骨鉤骨折を疑います。右図の赤い線で囲んだ骨が有鉤骨です。青い丸で示した部分が有鉤骨鉤と呼ばれる突起の部分です。

有鉤骨鉤というのは、上の図にあるように、手を輪切りにしたCTの画像で見ると、角のように骨が突起状になって突出している部分のことです。それが、下の図のように折れてしまうことがあります。

赤い丸で囲んだ部分が有鉤骨鉤の骨折部分です。一回の外力で折れてしまうケースもありますし、繰り返しかかるストレスで骨折する場合もあります。

どういう場合に骨折が起こるか

上の図のように、テニスのラケットを持った際や、野球のバットを握りしめた状態で、
衝撃を手のひらに受けた場合に、この骨折が起こります。テニスのような、繰り返しボールの衝撃やグリップエンドから受ける圧力が手のひらにかかり続けると、疲労骨折として、この骨折が起こることがあります。また、野球のファールチップを打った際に、バットにボールが当たった衝撃が、手のひらのグリップエンドの当たる有鉤骨部分にかかって、この骨折が起こります。

以下に実際の症例を紹介します。

16歳の男性です。右手関節尺側の痛みを訴えて来院されました。

1ヶ月前より徐々に痛みが出現し、4日前に卓球のプレーでスマッシュを打った際に激痛が生じました。その後、近隣の接骨院を受診されテーピング処置を行ったのちに当院を紹介されて受診されました。

上の写真は初診時の外観写真です。バツ印の場所に圧痛を認めます。

上の写真は初診時のレントゲン写真です。軸写像では骨折線を確認することはできませんでした。

上の写真は実際にラケットを用いて痛みが出る場面を再現しています。ラケットのグリップエンドがちょうど有鉤骨鉤付近を抑えるような形になっていました。このことから、今回の痛みは繰り返し機械的刺激が有鉤骨鉤に加わり続けていたことが原因で発症したものと捉え、有鉤骨鉤の疲労骨折と考えました。

上の写真はMRIとCTを比べた画像です。MRIで輝度変化を認めた箇所(赤丸印)とCTで得た画像所見を比べるとCTでは明かな骨折線を認めていません。以上のことから有鉤骨鉤の疲労骨折と診断しました。

上の写真は同時期のMRI画像で、有鉤骨体部の輝度変化を捉えています。(赤丸印)

その後、運動中止を指示し2ヶ月後に再度MRIを撮影しました。

上の写真は初診時のMRIと2ヶ月後のMRIを比べたものです。2ヶ月後のMRIでは初診時に比べ輝度変化が消失していることを確認できました。この時点で完全に治癒したものと考えました。同時期に握力の改善と圧痛の消失も確認できたため、競技復帰を許可しました。

以上のように早期発見、早期診断によって有鉤骨鉤が完全骨折に至らずに治癒することができました。長期にわたる有鉤骨鉤付近の違和感や痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。

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