踵骨骨端症

小学生ぐらいのスポーツをするお子さんで、
踵が痛いという場合に見られる疾患の一つに「踵骨骨端症」があります。

別名「シーバー病」ともいわれています。

下の図の赤丸で囲んだ部分が痛くなるのが特徴です。

下の2枚の写真は大人と子供の踵の骨のレントゲンです。

比較するとわかるように、
子供の踵の骨には骨端核と呼ばれる丸みを帯びた分裂した骨が写ります。

あたかも別々の様に見えますが、
骨端核の周りは軟骨の成分があるのでレントゲンに写らないだけです。

そして、15~16歳で踵の骨として、癒合します。

子供の踵

踵骨の骨端核は男子で7~8歳で見え始めます。
女子では、それよりも1~2年早く見え始めます。

大人の踵

15~16歳で踵骨体部と癒合して骨が完成します。

発症メカニズム

骨端核が存在するような年齢の時に繰り返される踵部分でのストレスが
この疾患が発生する原因だといわれています。

もともと、軟骨成分の多い子供の骨は衝撃にも弱く、
腱による強力なけん引力がかかると軟骨部分では容易に骨がはがれてしまいます。

膝においてはオスグッド病がよく聞かれますが、
それとよく似た病態だと考えていただくと、
わかりやすいかと思います。

上の図は踵骨骨端症が発症すると考えられる原因をいくつか取り上げました。

一回の外傷によって発症することは少なく、
明らかな原因が無い中で、
運動中に痛みを訴えることが多いようです。

しばらく様子を見ていますが、
痛くて踵をつけることができないような状態になることもあります。

やはり、運動によるアキレス腱の張力と、
繰り返される踵への衝撃が発症する原因であると考えられます。

また、アップシューズで練習しているときはさほどでもないのですが、
スパイクを使用中には特に突き上げによる痛みで、
さらに痛みが増強するという特徴もあります。

治療としては、
一時的に運動や体育を控えて様子を見ることで、
痛みは楽になってきます。

ですので、将来的にスポーツができなくなるなどといった心配はありません。

では、以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。

痛みのない足(右足)

痛みのある足(左足)

左の写真は、11歳のサッカーチームに所属している
男の子の踵部分のレントゲン写真です。

4月に御来院になった時のものですが、
痛みのある足(左足)の矢印の先あたりに、
痛みと腫れがありました。

クラブを休むことで痛みは楽になっておられました。

ところが、10月になって、
再び同じ場所が痛くなり、来院されました、

レントゲンを撮ってみると、
上の写真と比べて、
骨端核の一部分に分節している箇所がみつかりました。

このことから、アキレス腱によって
徐々に踵にストレスがかかってきていることがわかります。

二度目に来院された時の外観は、
踵の後方に×印を付けた部分が痛んで、
腫れていました。

治療としては、クラブの練習量を2週間ぐらいの間少なくし、
同時に靴にヒールパッドと呼ばれるクッションを入れてみました。

そうすることで、痛みもやわらぎ、再びスポーツ復帰できました。

左の写真はまた別の患者さんのものです。

サッカーチームに所属している10歳の男の子です。

×印で示したところが、押さえると痛く、
2週間前から走ると痛みが増強するとのことでした。

レントゲンを撮ってみると、
矢印の先で示した部分に踵骨骨端核の分節化が見られました。
ですので、「踵骨骨端症」と判断しました。

スパイクをはくと痛みが出るようでしたので、
しばらくスパイクを履かずに練習するように指示しました。

痛みが和らいでスポーツに復帰する際は、
ヒールパッドをアップシューズとスパイクシューズに入れて、
参加していただくことにしました。

治療には、左の写真のような足底板を靴に入れます。

もちろん、土踏まずや
足の横アーチをサポートする足底板も用意しています。

患者さんの状態に応じで使用する足底板を決めていきます。

他にリハビリとしては、
左の様なアキレス腱を伸ばすストレッチボードに乗って、
アキレス腱の柔軟性を高めていきます。

ストレッチボードを使わなくても、
御自宅でもアキレス腱を伸ばすようにしていただくと、効果的です。

その他の足の骨端症

第1ケーラー病

左の写真は、
足を上からと横から撮影したレントゲンです。

赤い丸で囲んだ部分の骨は舟状骨と呼ばれる骨です。

何らかの原因で、舟状骨への血行障害が生じると、
骨自体が扁平化してしまいます。

そこで、運動時の痛みが生じ、足が腫れたりします。

しかし、この骨端症は、
自然経過でよくなる疾患だといわれています。

3~5歳ぐらいに多く見られるといわれていますが、
1~2年後には元の通りに戻ります。

治療としては、土踏まずのサポートを目的とした
足底板をつけて、激しい運動や、
長距離の歩行などは控え目にすることなどで、
対処できます。

上の写真と同じ患者さんの
2年後のレントゲン写真です。

上の写真に比べて、赤丸で囲んだ舟状骨が、
大きくなっていることがわかります。

 第2ケーラー病(フライバーグ病)

第2ケーラー病は、足の第2中足骨頭の
血行障害により骨が変形してしまう病気のことです。

体重負荷が大きいこの部分に関節の変形が生じます。

左の図の赤丸で囲んだ部分が痛くなります。

左の図は第2中足骨頭の部分を示しています。

この骨端症の進行度合いをステージ0からⅣまでの
5段階に分けています。

数字が大きくなるにつれ、
中足骨頭部の変形度合いが強くなっていることを示しています。

レントゲン写真

MRI写真

レントゲンを撮ると、骨頭の変形が見られ、
MRIでは他の骨頭に比べて、
輝度が暗く写り、血行障害があることを証明しています。

この疾患も足底板によって、治療していきますが、
ヒールの高い靴や、
足の先が窮屈な靴を履かないようにして、
中足骨に力がかからないようにします。

経過は保存療法することで良好ですが、変形が著しかったり、
足底板療法でも痛みが軽減しない場合には、
手術療法になることもあります。

以上の様に、足の骨端症は保存療法で十分対処できます。

スポーツをしていて踵が痛いというお子さんは、
踵骨骨端症が疑われます。

最初のうちは気にならないとしても、
運動時に支障を来し、運動できなくなってしまう様では問題になります。

早期治療が早期治癒につながることは、
どんな疾患でも同じです!

こういう症状に心当たりがある場合は、
早い目に足の専門医にご相談ください。

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