踵骨不顕性骨折(踵の打撲だと思っていたら、 いつまでたっても痛みがひかない!)

高いところから飛び降りて踵を強く打ったり、

階段を踏み外して踵に強い衝撃が加わったときなどに、
踵が腫れて痛くなり、打撲かなと思っていたが、

いつまでたっても痛みが引かない。

そこで、病院に行ってレントゲンを撮ってみたが、レントゲンでは異常は見当たらない。

しかし、痛みが続いてどうしようもない・・・。

などという場合、「踵骨不顕性骨折」が疑われます。

踵骨不顕性骨折の起こる部分は下の絵にある赤い点線で示したあたりです。

踵を打撲したときでも、同じような部位が痛くなるので、
受傷直後は骨折したかどうかはわかりません。

後になって、赤い点線で示した部分に骨折を示す線が出てきます。

では、どうしてそのようなことが起こるのでしょうか?

踵骨不顕性骨折はこのようにしてわかります!

図を見てわかるように、
踵の骨は中が海綿状になっていて、
細かい骨の組織によって成り立っています。

高いところから落ちて、踵をついたときの衝撃は、
踵の後ろの部分あたりに強く伝わります。

そして、踵の骨の形が崩れない程度に、
衝撃が組織を破壊していきます。

しかし、この時点でレントゲンを撮っても、
何も異常は写りません。

一旦壊れた骨の構造は、
体の修復しようとする力によって、
新しい骨として置き換わるように再構築されていきます。

これが骨が修復されていく過程です。 

この修復が完成すると、新しい骨に置き換わって、線状の跡が残ります。

この所見が出て初めて骨折であったのだと判断できます。

③の状態になったとき、
実際のレントゲンでは、左の写真のように
「骨硬化像」といって、線が見えます。

この線が見えると、
骨折が完全に修復されたことがわかります。

ですので、この時点で、骨折であったとわかるのです。 

では、以下で、実際の患者さんの状態がどのようであったのか御覧いただきたいと思います。

14歳の男性です。

高さ3mのところから飛び降りて、
着地したときに、左の踵に強い痛みを覚えたそうです。

様子を見ておられましたが、痛みも強く、陸上部の練習も十分にできなかったため、
受傷後1週間たって、当院へ来院されました。 

初診時、踵を横から撮ったレントゲンです。

この時点では、異常は何も見えません。

初診時、足の後ろから踵を撮ったレントゲンです。

後ろ側から見たレントゲンでも、異常は見当たりませんが、
受傷機転や、触診した結果などから、
「踵骨不顕性骨折」が疑われたので、
1週間後に再び来院していただくようにお伝えしました。 

上の写真は、1週間後に来院された時のものです。

青色矢印の先に白い線が見えます。

この線が「骨硬化像」といって、
骨折した部分が修復されたことを表しています。

この画像によって、骨折していたのだとわかります。

後ろから撮ったレントゲンにも、青色矢印で示した先の部分に 「骨硬化像」の白い線が見えます。

この状態になった時点で骨折は修復され治っています。

ですので、今までの生活に完全復帰が可能です。

クラブ活動再開の許可も、この時点で出ました。

35歳の男性です。

階段を降りていてすべり、6段ほど落ちて、左の踵を強く打ったそうです。

受傷してから1週間後に来院されました。

写真は初診時のものですが、異常は見受けられません。 

左の踵をレントゲンで拡大して見たものでも、異常は見受けられません 。

しかし、外観で少し腫れていて、押さえると、踵に痛みがあったので、骨折が疑われました。

ですので、2週間後に再びレントゲンを撮るために、
来院していただくことをお願いしました。

上の写真は、2週間後のレントゲンです。

青色矢印で示した先に、白く「骨硬化像」が見えます。

この時点で、骨折は治っています。 

左の踵を拡大して見たレントゲンです。

「骨硬化像」が青色矢印の先にはっきりと見えます。

この時点で、お仕事にも完全に復帰されました。

踵骨不顕性骨折は、

受傷した早い段階では、レントゲンでは異常が見つからない場合が多く、
病院へ行っても異常なしといわれて、何の治療もおこなわれず、

しかし、痛みがいつまでも続き、
患者さんが不信を抱く場合が多々見受けられます。

当院では、こういった場合には今までの患者さんの経過から、
「踵骨不顕性骨折」を疑い、治療を行っております。

踵を強く打って、何も骨に異常はないといわれたが、なかなか腫れや痛みが引かない、
踵を押すと痛いなどといった症状がある場合には、再び病院へ行かれることをお勧めします。

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