関節注射で最も多いのが、膝関節に対するヒアルロン酸注射です。
これは変形性関節症でみられる変性した軟骨に対して、潤滑剤を入れる注射です。
この注射は定期的に行うことになるので、そのたびにいつも痛い思いを患者さんがされるのでは続けていただけません。
そういうわけで、当院では、なるべく痛くないように注射をして、
患者さんに継続して注射を受けていただけるように工夫しております。
膝の内側が痛いのに、なぜ外側に注射するの?
変形性膝関節症では、下の図にあるように膝の内側の軟骨がすり減ってくることが多いのですが、
実際に注射をする部位は膝の外側にしているので、
患者さんから「どうして内側が痛いのに、外側に注射をするの?」ときかれます。
上の図は、膝関節注射のイメージ図です。
関節腔は膝蓋骨の上方まであり、その部分は膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)と呼ばれます。
そこは関節液で満たされていて、関節腔全体とつながっています。
そこへ注射することで、注射液が関節腔全体にいきわたります。
上の写真は実際に膝関節に注射をしているものです。
膝関節の注射の場合、刺入部位は膝蓋骨の外上方部分にしています。
膝の外側は、血管や感覚神経が疎なので、注射されても痛みが少なくて済みます。
膝関節注射は局部の痛み止めではないので、痛い場所に直接注射を打つのではありません。
関節腔内にヒアルロン酸液を注入するのが目的なので、このように注射しても十分に関節腔全体に注射液がいきわたります。
また、外上方部は、皮下組織が薄く、注射針が容易に関節腔内に達するので、
皮下に薬剤が漏れることが少なく、痛みも少なくて済みます。
では、次は別の部位でみてみましょう!
肩関節内注射の場合
肩関節の場合も、関節腔や、肩峰下滑液包に対してヒアルロン酸注射を行います。
肩の前方部は肩関節疾患の多くで圧痛が出る場所でもあります。
しかし、直接痛みのある肩関節前方部位に注射すると非常に痛いので、
肩関節腔の後ろ側から注射をします。
上の写真にあるように、肩関節の後方で関節腔付近を目指して注射をします。
この部位は、神経終末が疎であるので、注射をしてもほとんど痛くありません。
上の写真は、実際に注射しているところです。
後ろ側から関節腔内に注射液を入れても、関節腔内全体に注射液がいきわたります。
では、他の小さな関節の場合はどうしているのか、
他のページで、それについても詳しくご覧いただきたいと思います。