腰部脊柱管狭窄症(歩いていると、足がしびれて歩けない!)

足の痺れを訴える疾患の一つに腰部脊柱管狭窄症があります。

足がしびれると言っても、腰部脊柱管狭窄症の場合は、歩くことで症状が増悪するため、

長く歩けないことが大きな悩みの一つになっています。

このページでは、なぜ長く歩けないのか、腰部脊柱管狭窄症とはいったいどんな病気なのかをご説明したいと思います。

腰部脊柱管狭窄症には、以下のような症状が特徴として見られますので、
一度、ご自分でチェックなさってみてください。

腰部脊柱管狭窄症とは?

以下の図は、腰椎部を横から見たものです。

左の図は、正常な腰椎部の図で、年齢とともに、椎間板などの変性により、右図のようになります。

右図のように、背骨の中にある脊柱管が腰の部分で、
加齢的な変化によって、靭帯の肥厚や骨の変形などにより、神経が圧迫されると、腰痛や足のしびれ、痛みが生じてきます。

下図の左の絵は背骨を横から見た図です。脊柱管をとおっている大きな神経が馬尾です。

椎間板のせり出しや、椎間関節の骨棘、黄色靭帯のたわみなどが原因で脊柱管のトンネルが狭くなり、
神経が圧迫されているのが脊柱管狭窄症の病態です。

上図の右の絵は椎間板の部分で背骨を輪切りにしたものです。

右半分は正常な図ですが、左は加齢的変化(退行性変性)が生じた図です。

見比べると、一目瞭然で、脊柱管が狭くなっていることが分かります。

腰部脊柱管狭窄症の症状

腰部脊柱管狭窄症の特徴的症状は、「間欠性跛行」と言われています。

「間欠性跛行」とは下の図のように、歩き出してしばらくすると、足にしびれや痛みが出て、歩きづらくなります。

前かがみで休んだり、しゃがみこんで休憩すると、楽になり 、再びまた歩けるようになります。

病変部の程度が重度なほど、歩ける時間や、距離が短くなります。

間欠性跛行が起こる原因

「間欠性跛行」が起こる原因は、姿勢的なものが関与しています。

なぜ歩くと症状が出現し、前かがみで休憩すると症状が軽減、もしくは消失するのか下の図でご説明します。

向かって右側の図は腰をそらせた姿勢の図です。

歩行時はこれに近い形で歩行しています。

ですので、椎間板繊維輪と黄色靭帯が脊柱管内へたわみ出し、下肢症状が出現します。

向かって左の図は、前かがみ(座り込んだ姿勢)になることで脊柱管が広くなり症状は軽減・消失するのです。

下の図のように、足の痛みや痺れは、姿勢によって変化します。

前屈位の姿勢をとればとる程、圧迫される力が弱くなり、足がしびれる人も、自転車に乗ると症状の消失が見られます。

腰部脊柱管狭窄症のタイプ分類

腰部脊柱管狭窄症には色々なタイプがあります。

いちばん左の図のような脊髄神経から枝分かれした神経の部分で圧迫を受けているタイプを「神経根型」といいます。

真ん中の図のように脊髄神経そのものが圧迫を受けているタイプを「馬尾型」といいます。

両方タイプが混在したものを「混合型」といいます。

「神経根型」、「馬尾型」ではそれぞれ下肢に出現する痺れや知覚異常の範囲が異なってきます。

神経根型は右図のように、下肢症状は片側性に現れるのが特徴です。

馬尾型は左の図のように、下肢症状は両側性に現れるのが特徴です。

それぞれ、障害されている腰椎レベルによって下肢症状は異なってきます。

図はほんの一例で、圧迫される部位によって症状が違います。 

腰部脊柱管狭窄症の治療

治療はストレッチング、理学療法、薬物療法など多種多様にあります。

当院では、保存療法として、、腰部にかかるストレスを少しでも軽減する目的で、腸腰筋を伸ばすストレッチングを行っています。

保存療法を行っても、効果がない場合には、手術の適用になることもあります。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

69歳の男性です。

右腰、右下肢の痛みを訴えて、来院されました。

受診当日の朝、自転車に乗った時、右下肢の痺れが出現したそうです。

左の写真は、初診時のレントゲン画像です。

左側の後屈位のレントゲン画像で、
脊柱管の方に向かって骨棘があるのが確認できました。

また、前屈位のレントゲン画像では、
椎体間が狭くなっていることから、変形が起こっていることがわかりました。

左の写真は、腰椎部のMRI画像です。

椎間板が突出する事で、後縦靭帯と黄色靭帯の肥厚が赤矢印の部分で見られ、脊柱管が狭窄していることがわかります。

左の写真は、狭窄が起こっている脊柱管を輪切りにしたMRI画像です。

輪切りにしてみると、
脊柱管から神経が右足の方に枝分かれするところで、
狭窄されていることがわかりました。

これらの画像所見と、症状を照らし合わせ、
この部分が原因で腰部脊柱管狭窄症が起こっていることがわかりました。 

66歳の男性です。

左股関節の痛みを訴えて来院されました。

1週間前より、200m歩くと左股関節が痛くなり、
休まないと歩くことができないという事でした。

左の写真は初診時のレントゲン画像です。

赤色の線で示したとおり、腰椎がずれていることがわかりました。

左の写真は、腰椎部のMRI画像です。

レントゲンでずれていた腰椎部のところで、
脊柱管が狭窄されていることがわかりました。(赤色矢印の部分)

左の写真は、狭窄されている部分を輪切りにしたMRI画像です。

脊柱管から枝分かれしている神経のところで狭窄されていることがわかります。

今回、股関節の痛みを訴えてこられましたが、
股関節そのものは全く異常はなく、
腰椎部が原因で、痛みが起こっていたのだという事がわかりました。

75歳の男性です。

両臀部から両下肢後面の痛みと痺れを訴えて来院されました。

3か月前より、症状が出現したという事です。

200mぐらい歩くと、両下肢後面がしびれて歩けなくなり、
座って休むと、再び歩くことができるようになるとのことでした。

左の写真は、初診時のレントゲン画像です。

腰椎部全体に、骨棘が見られ、脊柱管の通り道が狭くなっていることがわかります。 

左の写真は、腰椎部のMRI画像です。

赤色矢印で示した2か所で、脊柱管が狭窄されていることがわかりました。

左の写真は、狭窄されている脊柱管の部分を輪切りにしたMRI画像です。

脊柱管そのものの通り道が非常に狭くなっていることがわかります。

これらの画像所見と、症状を照らし合わせ、
この部分が原因で腰部脊柱管狭窄症が起こっていることがわかりました。 

腰部脊柱管狭窄症は、腰椎部が原因で起こる疾患ですが、
ほとんどの患者さんは、腰痛ではなく、足の痺れや股関節の痛みを訴えて来院されることが多く見受けられます。

また、特徴的な症状は、長い距離を歩けない、もしくは長い距離を歩くと足が痺れるといったことが挙げられます。

上記に書かれたような症状がある場合には、腰部脊柱管狭窄症であることが考えられますので、
お早めに、お近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。

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