男性の骨粗鬆症患者さんが増えています
骨粗鬆症は、主に閉経後女性と認識されていますが、
国内における骨粗鬆症患者の内、約4分1は男性と言われています。
統計では70歳後半では男性の18%、80歳以上では約20%が骨粗鬆症であるといわれています。
今後、超高齢男性の人口が急速に拡大するため、男性骨粗鬆症の患者さんが増加することが、予測されます。
このページでは、実際の男性骨粗鬆症の例をご紹介して、男性骨粗鬆症にみられる特徴についてご説明します。
男性骨粗鬆症の原因について
骨粗鬆症には、原発性骨粗鬆症と二次性骨粗鬆症があります。
原発性骨粗鬆症の原因には、加齢、エストロゲン欠乏(女性ホルモンの低下)、カルシウム、
ビタミンDの栄養素不足、運動不足などがあげられます。
二次性の骨粗鬆症の原因には、過剰な飲酒、薬剤、内科的な疾患
(腎不全、胃の疾患、呼吸器疾患、糖尿病、関節リウマチなど)が
あげられます。
男性の骨粗鬆症では、その約半分から3分の2が二次性の骨粗鬆症と言われています。
男性骨粗鬆症と女性骨粗鬆症の比較すると
原発性骨粗鬆症の方を例に上げて男性と女性の違いをご紹介させていただきます
原発性骨粗鬆症(女性)の症例
86歳の女性です。
腰痛を訴えて来院されました。
6日前に荷物を持った際、急に腰が痛くなったそうです。
理学所見では、棘突起の叩打痛が陽性でしたが、神経学的所見はありませんでした。
左の写真は、初診時のレントゲン写真です
第11胸椎の椎体圧迫骨折を認めました。(赤矢印で示した部分)
椎体の圧迫骨折があったため、骨粗鬆症の程度を調べるために血液検査を行いました。同時に骨密度の検査もしました。
左の写真は、その結果、TRACP-5bは、615と高く破骨細胞の活性度を示しています。今回の数値は、平均値を大幅に上回る数値でした。
骨密度は、若成人の平均骨密度と比較すると43%と低い値でした。
この方のように骨密度が低く、破骨細胞の活性度が高いのが女性にみられる骨粗鬆症の特徴です。
原発性骨粗鬆症(男性)の症例
81歳男性です
腰痛を訴えて来院されました。
約1ヶ月前より誘因なく痛み出したので
近医を受診されましたが、痛みが改善しないので当院を受診されました。
左の写真は、初診時のレントゲン写真です。画像所見として第2腰椎の圧迫骨折を認めました。
以上のように、誘因がないにもかかわらず椎体の圧迫骨折を認めたので、骨粗鬆症を基盤とする骨脆弱性骨折を疑って検査をしました。
左の写真は、血液検査と骨密度検査の結果です。
この方の場合、若年成人の平均骨密度と比較して87%の値を示しています。
また、TRACP-5bの数値は、491で男性の基準値からすると平均よりやや高い値でした。
このように、骨密度が年齢相応の数値で破骨細胞の活性度もそれほど高い値でなく、明らかな外力が加わっていないのにもかかわらず、椎体の圧迫骨折があれば骨粗鬆症と診断されます。
これが男性にみられる骨粗鬆症の特徴です。
以下は、原発性骨粗鬆症の診断基準です。
男性女性を問わず診断基準は同じです。
男性の二次性骨粗鬆症の症例
72歳の男性です
3日前より特に思いあたる誘因なく、起床時から痛みだしました。
問診で、毎日、日本酒を5合飲んでおられるそうです。
右の写真は、初診のレントゲン写真です。画像所見として、第12胸椎の椎体圧迫骨折を認めました。
以上のように、外傷歴がなく椎体の圧迫骨折が生じた原因を確かめるとともに、全身状態の確認のため血液検査しました。
骨密度は、若年成人の平均骨密度と比較すると83%を示していました。
また、血液検査の結果では、基準値を超える数値が多数見られました。
中でも肝機能の状態を示す項目が高く、栄養状態を示す項目が低い値を示していました。
しかし、TRACP-5bは、基準以内でした。
以上のことから、全身状態をみた場合、食事や生活習慣に何らかの原因があるのではないかと思われます。
問診でも聴取していたアルコール摂取の量も多いと考えられるので、普段の食事は栄養が偏り、十分に摂取できないことが考えられました。
このようにアルコール性の骨粗鬆症が、原因で今回の椎体圧迫骨折にいたったものと思われます。
今後、超高齢男性の人口が急速に拡大するため、男性骨粗鬆症の患者さんが増加することが、予測されます。
骨密度が低くなくても、内科的な疾患がきっかけとなったり、
アルコール摂取によって栄養状態が悪くなり、骨粗鬆症が発症する場合があります。
男性の方では、潜在的に骨粗鬆症があるかもしれませんので、医療機関の受診をおすすめします。