ばね指は足の指にも起こります!(弾発母趾)

日頃整形外科疾患でよく見られるばね指は、手の指がほとんどです。

しかし稀ではありますが、足の指にもばね指は起こります。

このページでは、足の母趾でばね現象が生じた患者さんのれいをご紹介していきたいと思います。

足関節周辺の腱の走行

下の図は、足関節の内側を横から見た図です。

足関節の内くるぶし(内果)のそばを長母趾屈筋腱、後脛骨筋腱、長趾屈筋腱が走り、足底の方に向かっていきます。

中でも、長母趾屈筋腱は母趾の先端まで走り、母趾を曲げる動作と爪先立ちのような動作(底屈)に関与します。

また、足関節の内返し(内反)動作にも関与しています。

上の図は、足の裏を見た図です。

足関節の内側を通った腱は、足の裏でそれぞれの指に向かって枝分かれしていきます。

長母趾屈筋腱だけは、母趾の先端に向かって独立して走行していますが、

稀に他の指の腱と結合(腱間結合)している場合があります。

弾発母趾の病態

弾発母趾の生じるメカニズムは、「長母趾屈筋腱そのものの肥厚」と「足関節の肢位」が関与すると言われています。

上の図は、長母趾屈筋と腱に変わっていくところを示しています。

長母趾屈筋腱は、屈筋支帯の下を通り、母趾を曲げる働きがあります。その際、足関節内果後方でけんが滑走します。

爪先立ち強いを強制され続けると、長母趾屈筋腱は過緊張となり、腱そのものが肥大してきます。

上の図の赤色☆印は、長母趾屈筋腱の肥厚部位を示しています。

左の図のように足関節背屈位では、腱の肥厚部位は腱鞘の遠位に存在します。

しかし、右の図のように足関節底屈位では腱の肥厚部位が、腱鞘内に入り込みます。

弾発母趾は、母趾の動きだけでなく、足関節の動きも大きく関与しています。

弾発母趾の外観

以下の写真は、弾発母趾の方の外観写真です。

主な症状は、足関節内果後方に痛みと圧痛が認められます。

左右の足関節を比べると、患側は内果後方に(赤色矢印部分)に腫脹が認められます。

実際の患者さんを紹介します。

症例1 12歳女性 左母趾の弾発現象を訴えて来院されました。半年前よりクラシックバレエの動作中に左母趾の弾発現象が主訴で、来院されました。つま先立ち動作時に痛みは伴わないものの弾発現象が生じていることを自覚しておられました。

初診時の弾発現象がこちらになります。

上の動画で生じる弾発現象は、内果の後方に索状の硬結を触知できていたので同部位での狭窄性腱鞘炎が原因であると考えました。そこで、下の写真で示した丸印の箇所にステロイド注射を行って経過観察をしました。

上の動画は初診時から約一か月後のものです。初診時に比べて母趾の動きは一旦は滑らかになりました。

上の動画では、当院で撮影した最終調査時点のものです。初診時と比べて母趾の弾発現象を認めるものの顕著ではありませんでした。この時点で実際にクラシックバレエの動作において支障もなく、コンテストにも出場されました。

症例2 50歳の男性です。

右足関節後面の痛みを訴えて来院されました。

半年前よりゴルフの練習中に右アキレス腱部に違和感を覚えたそうです。

下の動画は初診時のものです。

下の写真は初診時の外観写真です。

赤色矢印で示した部分に痛みと腫れが見られ、押さえると痛みがあるとのことでした。

上のレントゲン画像は、右足関節を撮影したものです。

右足関節の内くるぶしのあたりの痛みを訴えていたため、有痛性三角骨障害なども疑いましたが、異常はありませんでした。

お話を伺っているうちに、右母趾に弾発現象が生じると訴えておられていたので、母趾の曲げ伸ばしを確認しました。

下の動画がその動画です。

母趾を深く曲げた時から伸ばしたときに弾発現象が生じているのがわかります。

弾発母趾が足関節内果後方で生じているとわかり、痛み止めの注射を行いました。

その結果、曲げ伸ばし時の痛みが軽減しました。

足関節周辺の痛みを訴えてこられる患者さんの中には、上記でご説明しました弾発母趾もありえます。

非常に稀ではありますが足関節の動きだけでなく、母趾の動きを確認し、弾発現象が見られたら、

お近くの整形外科の受診をお勧めいたします。

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