転倒して手をつき、肘関節や手関節周辺の骨折や脱臼を起こすことがありますが、
今回ご紹介するモンデジア骨折は、骨折と脱臼両方を伴った怪我です。
成人にも起こりますが、特に小児に多くみられる脱臼骨折です。
このページでは、モンデジア骨折がどういったものか、どのような治療をすればよいのか、詳しくご説明していきたいと思います。
モンテジア骨折とは?
モンテジア骨折とは、下の図で示したように、橈骨が肘関節から脱臼し、尺骨が骨折している状態です。
尺骨は、中央部分で骨折する場合もあれば、肘関節周辺で骨折する場合もあります。
橈骨頭は肘関節から前方へ脱臼したり、後方または、側方に脱臼する場合とさまざまあります。
いろいろなモンテジア骨折のタイプがあり、タイプによって治療の仕方も異なってきます。
モンテジア骨折のタイプ別分類として、Badoのものが有名であり、以下でご紹介したいと思います。
モンデジア骨折の分類
以下の図はモンデジア骨折のBadoの分類です。
今回は、Badoの分類Ⅰ~Ⅳに加えて、橈骨頭頚部骨折を伴う尺骨骨折(青色□で囲んでいるタイプ)も、
モンテジア骨折に含まれるとされているAltnerの分類も一緒に付け加えてみました。
赤色矢印で示しているのは、骨折を示しており、青色矢印で示した部分は脱臼を示しています。
Ⅰ型から、順番にご説明していきたいと思います。
Ⅰ型は前方凸変形のある尺骨骨折に、橈骨頭前脱臼を伴い、小児モンテジア骨折で最も多い型(70~60%)といわれています。
また、橈骨頭の脱臼がなく、橈骨頚部骨折と尺骨骨折を合併したものはⅠ型の亜型とされています。
Ⅱ型は後方凸変形のある尺骨骨折に橈骨頭後方脱臼を伴うものです。
比較的稀で、小児モンテジア骨折の5%にすぎません。
Ⅲ型は、外側方凸変形のある尺骨骨折に橈骨頭外側脱臼を伴い、小児モンテジア骨折の15~25%を占るといわれ、
成人モンテジア骨折に比べて、小児の方が成人よりも多いのが特徴です。
Ⅳ型は、尺骨骨折のみならず、橈骨も骨折し、橈骨頭前方脱臼が合併したもので。
その発生頻度は、極めて少ないといわれています。
モンテジア骨折のレントゲン画像
レントゲンでは、橈骨頭の脱臼の診断が重要です。
そのためには、正確なレントゲンの側面像が必要です。
下の図は、肘関節を側面から見た図です。
橈骨頭が脱臼しているかどうかは、以下で説明するような点で判断します。
正常な場合、橈骨頭・頚部の中心線は、肘の屈曲伸展に関わらず、
上の図の赤色矢印で示したように、上腕骨小頭の中心を通過します。
もし、肘の曲げ伸ばしでこの関係が乱れていれば、橈骨頭脱臼であると診断できます。
下の右のレントゲン写真は、実際に橈骨頭が脱臼している患者さんのものです。
正常な場合には、上の左の写真のように橈骨頭・頚部の中心線は、上腕骨小頭の中心を通っていることがわかります(赤色矢印)。
モンテジア骨折の場合には、上の右の写真のように、中心線は上腕骨小頭を通過していないことがわかります(青色矢印)。
レントゲンでは、こういったところを注意して観察することで、橈骨頭脱臼の有無を判断することができます。
モンデジア骨折の治療
モンテジア骨折の治療は、Ⅳ型を除いてⅠ~Ⅲ型は、徒手整復とギプス固定による治療が可能といわれています。
ほとんど、上記で記載したように、手術をせずに治療可能ですが、
稀に橈骨頭の徒手整復が不能・整復位の保持が不可能な場合・受傷後2週以上経過した陳旧例などは、
手術が必要になる場合もあります。
以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
8歳の女の子です。
昨日滑り台より転倒し、右手をついて受傷されました。
受傷日当日、近隣の整形外科を受診し、尺骨骨折と診断を受けたそうです。
他院でギプス固定をされまそうですが、翌日になっても痛みが軽減しないため、当院を受診されました。
左のレントゲンは、初診時のものです。
赤色矢印で示した部分は、尺骨の骨折が認められ、
青色矢印の部分では、橈骨頭の脱臼が確認されました。
以上のことから、モンデジア骨折と診断し、脱臼骨折を元に戻す整復を行いました。
左のレントゲンは、整復後のものです。
赤色矢印で示した橈骨頭は、元の位置に整復されていることがわかります。
左のレントゲンは受傷後2ヵ月のものです。
骨折部は新しい骨ができていることが確認でき、
橈骨頭の脱臼も認められませんでした。
左の写真は、2ヶ月後の外観写真です。
前腕の回内、回外運動の制限は特に見られません。
左のレントゲンは受傷後4カ月のものです。
骨折していた部分は、新しい骨が旺盛にできており、骨癒合が認められました。
脱臼していた橈骨頭も正常の位置にあり、
学校生活などの日常生活でも、支障なく普通に過ごしておられます。
10歳の男の子です。
左肘・前腕の痛みを訴えて来院されました。
2日前、サッカーの練習中に転倒し、左手をついてから、
左肘から前腕にかけての痛みが出たそうです。
左の写真は初診時のものです。
左肘から前腕部分にかけて腫れが認められました。
本人は、指でさしている所が痛いそうです。
左の写真は初診時のレントゲン画像です。
赤色矢印で示した尺骨の骨幹部の骨折と、橈骨頭頚部骨折が認められました。
橈骨頭の脱臼は認められませんが、
2か所の骨折部分からモンデジア骨折と考え、ギプス固定を行いました。
左のレントゲンはギプス固定後のレントゲン画像です。
肘関節を約90度屈曲させ、手関節を含んでギプス固定を行いました。
左のレントゲンは受傷後約6週間後のものです。
この時点で、骨折部分に仮骨が認められたため、ギプス固定を完全に除去しました。
少しわかりにくいので、レントゲン画像を拡大したものが左の写真です。
橈骨頚部骨折の部分は、赤色矢印で示した部分に仮骨が認められます。
尺骨骨幹部骨折の部分にも、赤色矢印で示した所に仮骨が認められます。
ご本人も、この時点では、骨折部分には全く痛みがないと言っていました。
左のレントゲンは受傷後約10週のものです。
骨折部は、もうほとんどわかりません。
サッカーも再開しており、日常生活に支障なくすごしているとのことでした。
モンテジア骨折は小児に多く見られる疾患です。
受傷後2週間以上経過してしまうと、手術をしなければ治らないこともありますので、早期の治療が重要です!
子供さんの肘や、前腕部分に腫れや強い痛みなどがあれば、我慢せずに、お近くの整形外科を受診されることをお勧めします!