モートン病

足の裏のしびれ感や痛みの中で、
多く見られるのが「モートン病」です。

靴が原因であることが多く、足の裏の前のあたりに繰り返される衝撃があると、
そこで炎症が起こって、神経が圧迫されて、症状が出てきます。

モートン病」という病気はあまり聞きなれないものですが、
このページでは、その病気について詳しくご紹介します。

モートン病の症状は、下の図の赤い×印のところをおさえると痛み、
水色斜線部分がしびれたり、感覚が鈍くなっています。

下の図は第3趾と第4趾の間または、第2趾と第3趾で起こるようにかかれていますが、
他の指の間でも起こります。

この病気の特徴は、
下の図でお分かりいただけるように、
2本の趾にまたがって症状が出てくる点にあります。

モートン病でみられる、足裏のしびれる範囲


モートン病の病態

この図は足の神経と足指の関節の位置関係を示したものです。

足指の中足骨は深横中足靭帯によってつなぎ止められていて、その間を指神経と呼ばれる感覚の神経が通っています

3番目の足指と4番目の足指の間には指神経が交錯して神経腫と呼ばれる神経のかたまりがあります。

モートン病は神経腫が圧迫されて出るものもありますが、多くは赤丸で囲んだように滑液包と呼ばれるクッションが繰り返される刺激によって炎症を起こして、指神経を圧迫してしまい、足の指の裏が痺れます。

この図は、足指の並びを前から見た絵です。

足の指の間には指神経が通っています。

細い神経なので、少しの力で圧迫されてしまいます。

この絵のように、体重がかかり足の横アーチがつぶれてしまうと、支える力を緩衝する滑液包との間で指神経が圧迫され、足の裏のしびれ感が生じます。

つまり、繰り返し衝撃が加わることや、幅の狭い靴によって横アーチが狭くなると、指神経が圧迫されて、しびれが出るのです。


指神経は正式には「固有底側指神経」といいます。

足の神経図でわかるように、足の指の神経は指の付け根で二股に分かれます。

そして、各指の右側と左側はそれぞれ違う神経が担当しています。

ですので、足の神経図の水色の丸の部分で圧迫を受けたら、3番目の指の外側と、4番目の指の内側の部分がしびれてしまいます。

この神経は感覚神経なので、指の動きが悪くなることはありません。

では、どうしてこのように足の裏に衝撃が加わるのでしょうか?

この図で示したのは、歩く時の足の裏の体重移動を示したものです。

まず踵に体重がかかり(①)、足の裏を通って足の親指の付け根(②)に体重は移動します。

そして、親指の付け根からそれぞれの指に向かって体重移動して、力が抜けていきます。

ところが、幅の狭い靴を履いたり、足の動きが制限されるような靴などであると、十分にスムーズな体重移動ができず、×印のところに圧がかかってしまいます。

また、外反母趾や扁平足があると、親指側で蹴ることが無くなり、足の②と③の体重移動が×印のところに移動してしまい、滑液包炎になり、指神経を圧迫してしまいます。

モートン病の診断

では、実際の症例でモートン病の診断はどのようにつくのでしょうか?

こちらの写真の患者さんは、裸足ではしびれは軽快するのですが、靴を履くと痺れが強くなるという訴えがありました。

モートン病の特徴でもある、足指間部に広がる痛みと痺れがあり、中足骨頭間の圧痛が認められました。


レントゲンを撮りましたが、特に関節症の所見や外反母趾の傾向はありませんでした。

上の写真は足指の列を撮ったものです。若干、足指の皮膚の部分が腫れています。

このようにレントゲンでは、はっきりとした骨や関節の異常所見を認めず、一般的には「異常なし」と言われてしまう場合が、しばしば見受けられます。

次の患者さんは、左足の足の指の痛みを訴えて御来院になりました。

×印の周囲が少し腫れているのがわかります。

痛みと痺れがある個所は、黒い斜線部です。

この方は、仕事でしゃがんで前足部に体重がかかることが多く、ヒールをはくと痛みが増強していました。

こちらの写真は、症状を誘発するように、両サイドから足に力を加えて、痛みが出るかどうかを確かめるテストです。

この方は、このテストを行うと痛みが出ました。

ですので、靴を変えて、様子を見ることにしました。

モートン病の治療は3段階に分かれています。

1段階、靴の指導や、足底板による治療を行います。
2段階、局所麻酔薬を注射して、痛みを和らげて行きます。
3段階、1・2の段階の治療で経過を見て、効果がない場合は、手術適応になります。

しかし、1段階の治療で、治る方がほとんどです。

確定診断を兼ねて、局所麻酔を打つこともあります。

では、実際に来院された患者さんの様子をご覧いただきます。

〜症例1〜

19歳の女性です。

右第3、第4趾の痺れを訴えて来院されました。

ヒールを履いて長く歩くと 、第3/第4趾間が痺れのため痛くなり、歩けなくなるそうです。

赤い矢印の部分を叩くと、第3/第4趾間に放散痛が出ました。

痺れるとおっしゃっている患部をアップにした写真です。

どこが痺れるのか、詳細に伺ったところ、こちらの写真の斜線部が痺れて痛いそうで、その部分に知覚低下が認められました。

痺れの原因を追究してみると・・・。

こちらの写真で示すヒールの靴を履いて歩くと、痺れが増強し、長く歩けないという事でした。

若い女性はファッション性の高い靴を履きたいと思いますが、靴によっては、こういった障害が出てしまう場合があります。

ですので、おしゃれも大事ですが、自分の足に合った靴選びをすることが、こういった疾患への予防や治療にもなります。

今回の治療は、こういった靴への指導をさせていただきました。

〜症例2〜

次は41歳の男性です。

訴えは、右前足部のしびれと痛みですが、赤丸で囲んだ足の甲の部分も少し腫れています。

歩行時に痛みが増強するとのことでした。

訴えのある場所を確認すると、×印のところに圧痛があり、その周囲は赤矢印で示したように少し腫れていました。

靴を履いて痛みが強いとのことで、実際に靴を履いて見せてもらいました。

そうすると、足を蹴りだす際に、革靴の上部と下部の間にできるシワで足が圧迫されていることがわかりました。

御本人の訴えでも、最近靴がきつく感じていて、足の裏も痛いが、足の甲の部分にも痛みがあるとおっしゃっていました。

このように裸足になったときにははっきりとわからない症状も、靴を履いてみるとよくわかるようになります。

この患者さんも、この靴を履かないようにされると、症状が改善されました。



モートン病の治療法は靴による障害があるので、まず原因になっている靴を履かないように指導します。

かといって、そうもいかない場合もありますので、そういう場合には足底板療法を行います。

1枚目の絵のように、足の横アーチを支える足底板を用いて、体重が×印のところにかからないようにします。

実際には、靴のインソールにずれないように、パットを貼りつけます。

あるいは、サポーターに足底パッドが付いている製品もありますので、患者さんの生活スタイルに合わせて使い分けをしています。

靴をはく生活時間が増えることによって、
近年モートン病が増加する傾向にあると言われています。

先ほど述べたように、ほとんどが保存療法で治ります。

発症から治療までの期間が短ければ短いほど、
保存療法で治る割合が高くなっています。

ですので、足の指や足の裏が痛んだら、
まずは、今履いている靴を疑ってみてください。

靴を変えても治らない場合には、
早い目に足の専門医に御相談ください。

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