自転車走行時に転倒したり、膝を他の原因で強打した直後、
病院へ行ってレントゲンを撮ったときに異常は見つからず、打撲と判断され、
しかし、何日たっても痛みや腫れが引かない場合があります。
そういう場合にうたがわれるのが、
「膝関節内骨折(不顕性骨折)」です。
骨の折れ方のイメージは下の図のように、
脛骨がひび割れてしまう骨折です。
上の図では脛骨がひび割れているのがわかりますが、
実際にはレントゲンにこの骨折線が写りません。
そこがこの骨折の厄介なところです。
したがって、打撲と判断される場合が多く見受けられます。
治療や処置も、打撲に準じたものが行われ、
放置されることもあります。
以下で、当院に来られた方の症例を具体的に御覧頂き、
御参考になさっていただきたいと思います。
左は66歳男性の方のレントゲン写真です。
自転車走行中に転倒し、左膝を強打されました。
翌日、近くの病院へ行かれ、レントゲンを撮った結果、
打撲と診断され、様子を見ておられましたが、
2週間たっても痛みがとれないので、
当院を受診されました。
確かにレントゲンを撮ってみても、
骨の形は整っていて、異常なく見えましたが、
押さえて痛い場所が骨の上っだり、
膝の曲げ伸ばしの制限などが残っていたので、
関節の中に原因があるのではないかと思ったので、
MRI を撮ってみました。
MRIの画像を見てみると、
前出の図のように、
脛骨が逆Y字型にひび割れているのがわかり、
膝関節内骨折と診断されました。
受傷後2週間たっておられるので、
ギプス固定はせず、サポーターをして膝を保護しました。
約1か月後には、違和感もなくなり、
完治されました。
70歳の女性です。
この方も自転車で転倒し、そのまま御家へ帰られました。
来院時には、膝に血腫がみられたので、
膝の中になにか問題があるのではないかと思い、
取り外し式のギプス固定を行いました。
レントゲンだけでは、
膝関節の中に異常は写っていませんでした。
しかし、初診時の状況から考えると、
骨折の疑いもあったので、
MRIを撮ってみました。
すると、脛骨にひび割れが見られました。
横から見てみると、
後ろまでひび割れが入っていることがわかります。
から見てみると、
まさに地震の時に地面がひび割れるように、
脛骨がひび割れています。
このようにMRIでいろんな角度から見ると、
どれだけ骨折が及んでいるのか、
その範囲まで具体的にわかるので、
治療方針を立てるのにも役立ちます。
この患者さんは、初診時から2週間取り外しギプスで固定し、
その後は包帯固定に切り替えました。
ただ、体重をかけると痛みがあったので、
松葉杖を使って部分的に体重をかけるように指導しました。
この方も約2カ月ぐらいで違和感もなく、完治されました。
85歳の男性です。
この方も自転車走行中に転倒され、受傷されました。
初診時歩くと痛みがあり、膝に血腫があったので、
すぐにMRIを撮っていただきました。
レントゲンの見た目は、変形性関節症ですが、
明らかに怪我によって、
変形性関節症以外の要因があることがわかりました。
MRIを撮って見ると、
脛骨の上面が陥凹していることがわかります。
上から見てみると、
脛骨の真ん中から、後ろにかけて陥凹しています。
横からMRIを撮ってみると、
赤矢印で示した先が放射状に割れていることがわかりました。
実際に骨が砕けているわけではないのですが、
これによって、矢印の先端部分に衝撃が加わったことがわかります。
そして、その衝撃で、赤丸部分の骨が割れてしまったことがわかります。
このように膝を前から打って、膝の後ろの骨が割れてしまうことがあります。
若い人ならば、同じ向きに衝撃がくわわったときには、
後十字靱帯という靭帯が切れてしまいますが、
高齢者の方の場合、靭帯の付いている骨が引っ張られて
骨ごととれてしまいます。
この方は、包帯固定を行って、
松葉杖をついて膝への荷重を軽減していただきました。
そして、包帯固定だけで、完治しました。
このように、単なる打撲だと思っていたのに、
いつまでも痛みが取れない場合、
「膝関節内骨折(不顕性骨折)」をうたがってみる必要があります。
この骨折は、長いギプス固定など必要なく、経過の良い骨折です。
早く骨折と気づいて、骨折としての処置をしてあげることで、
治りも早くなります。
打撲と思っていていつまでも痛みや腫れが引かないときには、
まず、専門医に御相談ください。