今までのページでは膝蓋骨が不安定だということで、
痛みが生じたり、違和感を覚えたりということについて述べてきました。
このページでは、外傷によって発生した膝蓋骨の疾患について述べたいと思います。
ここでは、スポーツでの外傷によって生じた膝の疾患について主に述べていきます。
左の図では、立っている時の足の軸を
赤い線であらわしています。
立っている時には、膝は軽く「くの字状」になって
体重を支えています。
右の図では、一般に言う「内股」になっています。
こういう形状は女性に多く見られます。
ジャンプから着地した瞬間や、階段から降りたときなどに、
足が内側に倒れることで、膝にはさらに「くの字状」に内側に力がかかります。(右側の青色矢印の様な力が膝にかかります。)
このようなかたちになると、膝のお皿が引っ張られて、
外れるようになります。
実際のスポーツの場面で、どんなことが起こるのか、
以下でご覧いただきたいと思います。
左の写真は、14歳の女子バスケットボール部の選手が練習中ジャンプして、着地したときに痛みを覚えて、転倒し、来院された時のものです。
特に相手とぶつかったわけでもないのに、
膝の内側が少し腫れています。
しかも、そこをおさえると、痛みが強く見られます。
所見では、膝蓋骨を動かすと、痛みが増強していました。
レントゲンを撮ってみると、
怪我をした側の膝蓋骨と大腿骨の間(赤色矢印)が
広いことがわかります。
ところが、怪我をしていない方の隙間(水色矢印)も、
同じぐらいの幅であることがわかります。
つまり、もともと膝蓋骨が不安定な素因があって、
軸足で踏ん張って着地したことにより、
不安定だった膝蓋骨が外れてしまったことがわかります。
処置としては、痛みと腫れがある間は運動を中止し、
経過を見ます。
痛みが落ち着いたら、左の写真の様に、
膝蓋骨が外へ移動するのを制御するサポーターを
つけて部活動に復帰してもらいました。
サポーターを着用し、
膝蓋骨を安定させることで、
スポーツ復帰が可能になります。
この患者さんは受傷後約1か月で、
痛みもなく、運動復帰されました。
左の写真は、18歳の女子陸上部の方です。
ハードルを飛び越して、着地したときに、
お皿の脱臼感を覚えて転倒したそうです。
直後から、、腫れと痛みが強くて、
歩く時も痛みで歩きづらかったそうです。
レントゲンを撮ってみると、
右の膝蓋骨が外へ移動してしまっているのがわかりました。
痛みも強く、はっきりとレントゲンで
膝蓋骨が移動していることもわかったのですが 、
さらに詳しく病態を把握するためにMRIを撮りました。
赤丸で囲んだ部分が薄く写っていますが、
これは骨に傷が入っていることを示しています。
外側へ移動した膝蓋骨と大腿骨がぶつかって、
双方に傷がついたことがわかります。
そうなった要因は、
膝蓋骨が外に行かないように、
内側からつなぎ止める靭帯が切れて、
(赤色矢印の部分)
膝蓋骨がずれたときに大腿骨とぶつかって
生じた傷だとわかります。
この患者さんは、
膝蓋骨が外側へ逃げていかないように
切れた靭帯を縫う手術をされました。
術後は、左の写真の様に、
膝蓋骨も安定しました。
3コマ上の左側の受傷直後の写真と比べていただくと、
膝蓋骨が内側に戻ってきていることがわかります。
19歳の男性、ボクシング部所属の方です。
この方の場合は3年前に
膝蓋骨脱臼を経験しておられて、
最近、膝が膝がひっかかる感覚を覚えたので、
来院されました。
レントゲンを撮って良く見ると、
小さな丸い骨片(赤矢印の先)が写っていました。
骨片の位置と大きさを確認するために、
CTを撮ったところ、
膝蓋骨と大腿骨の間に
骨片が挟まるような形でありました。
別の角度から見てみると、
もう一つ小さな骨片が見つかりました。
これらは今生じたものではなくて、
3年前に膝蓋骨脱臼をした際に、
骨同士がぶつかってできた軟骨のかけらが
少しずつ大きくなって 膝の中で浮遊して、
ボクシングのプレー中に
引っかかる感覚を生じていたのだとわかりました。
膝間接鏡で見てみると、
御覧のように、ちょうど骨の間に挟まる形で、
骨片がありました。
ですので、
この骨片を取り除きました。
手術後のレントゲンでは、
膝の中の骨片は消えて、
膝のひっかかり感もなくなりました。
スポーツ時に、膝蓋骨の脱臼感があった場合には、
程度が軽い場合にはサポーター療法で十分対処できます。
しかし、怪我が重症になってくると、靭帯の一部が切れたり、
軟骨を傷めている場合があるので、しっかり診る必要があります。
また、昔脱臼したものが、時間をおいて、
全く違う症状ででてくる場合もあります。
膝の脱臼感といってもいろいろな病態がありますので、
膝に違和感があった場合には、甘く見ずに、
早い目に専門医に御相談ください!