足首をねんざしてなかなか痛みがとれないとか、スポーツ活動を続けていて、
足首の外側(くるぶしの後ろ)が痛いというようなとき、
レントゲンを撮っても異常がないなどという場合には、今回取り上げる腓骨筋腱炎という病態である可能性があります。
このページでは、腓骨筋腱炎が起こる原因や、症状、治療方法などを
実際の患者さんの例を踏まえて詳しくご説明していきたいと思います。
腓骨筋腱とは?
腓骨筋腱とは、以下の図で示した通り、腓骨の外側に付着している長腓骨筋腱と、短腓骨筋腱を合わせて腓骨筋腱と呼んでいます。
腓骨筋腱は上の図で示した緑○印の部分から角度を変えて、前足部の外側と、足底部に付着しています。
腓骨筋の作用として、つま先立ちの動作や、足首を外側に返す動作などで主に働きます。
腓骨筋腱炎が起こる原因
①足関節の不安定性
足関節のねんざを繰り返すことによって
不安定になった足関節を 安定させようとして
腓骨筋が過度に収縮する。
②運動によるオーバーユース
スポーツによる腓骨筋への過度な
繰り返されるストレス。
③足のアライメント異常
踵骨の回内が原因で起こる足のアライメント異常。
(踵骨が外へ向かって斜めに傾いている。)
④踵骨の形態的異常
踵骨腓骨筋結節の過形成による。
上に示した要因が腓骨筋腱炎を引き起こすものと考えられ、報告例もありますが、
実際は①や③にみられるような身体的な要因に加え、②のような外的な要因が重なって発症することが多いようです。
腓骨筋腱炎の症状
腓骨筋腱炎は外くるぶしの後周辺が腫れて、痛みを訴えることが多く見られます。
以下の外観写真は腓骨筋腱炎で痛みを訴える場所です。
外くるぶしの後ろを通る腓骨筋腱沿いに、腫れや押さえたときの痛みが見られます。
また、歩くとき、蹴りだし動作を行うときに痛みが出ることが多いようです。
他には、しゃがみ込んだ際に、くるぶしの後ろで、腓骨筋腱が伸張されるような時にも痛みが生じます。
腓骨筋腱炎の治療法
腓骨筋腱炎の治療方法は主に足底板を利用して、腓骨筋腱にかかるストレスを軽減していくことです。
初診時は、腓骨筋腱の炎症を抑えるため、また腓骨筋腱炎の診断を兼ねて、患部に注射を行います。
腓骨筋腱炎に使用する足底板
ヒールパッド
ウェッジパッド
以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
72歳の女性です。
右足関節外側の痛みを訴えて来院されました。
半年前から特に誘因なく、体重をかけると右足関節の外側が痛いという事でした。
左の外観写真は初診時のものです。
赤色矢印の部分に痛みを訴えておられました。
お住まいの近くの整形外科を受診されていたそうですが、
痛みが変わらないため、当院へ来院されたそうです。
左の写真は足を横から見た外観写真です。
赤色矢印で示した部分がピンポイントで痛いとのことです。
歩行時の蹴りだしで痛みがあり、長時間歩くと腫れてくるとのことでした。
左の写真は初診時のレントゲン画像です。
痛みを訴えている部位は、赤色矢印で示した所です。
レントゲンでは、骨や関節に異常は見られませんでした。
そこで、痛みの原因を調べるため、立位の状態を後ろから確認してみました。
すると、左足に比べ、右足はやや回内傾向にあり、扁平足傾向が見られました。
そこで、治療はヒールパッドと3軸アーチパッドを用いて、蹴りだし時に腓骨筋腱にストレスがかからないように処置しました。
25歳の男性です。
左外くるぶしの後ろの痛みを訴えて来院されました。
5年前から左足関節に痛みがあるとのことでした。
4年前に足関節の捻挫を繰り返すことによって不安定性が生じていたため、左足関節の靭帯再建術を行ったそうです。
しかし、その後もなかなか痛みが引かないという事でした。
左の外観写真は初診時のものです。
赤色矢印で示した部分に圧痛があり、その部分に痛みを訴えておられました。
スポーツはボクシングをされているとのことでした。
左のレントゲン写真は初診時のものです。
赤色矢印で示した部分が痛みを訴えておられる場所です。
レントゲンでは骨や関節に異常は見られませんでした。
そこで、足関節の不安定性を確認するため、左足関節のストレス撮影を行いました。
手術を行っていたためか、不安定性は確認できませんでした。
しかし、歩行時の蹴りだしや、つま先立ちで痛みがあるということで、ボクシングによるオーバーユースが原因である腓骨筋腱炎と考えました。
痛みが引かない場合は、腓骨筋腱の縦断裂である可能性も念頭に置き ながら、足底板による処置を行い、スポーツ中止を指示して経過を見ることにしました。
腓骨筋腱炎は色々な原因で生じるため、治療もさまざまです。
当院では、少しでも腓骨筋腱へのストレスを軽減する目的で、足底板を処方しています。
しかし、人間の足は十人十色であり、足底板の処置の仕方も色々なパターンがあります。
ですので、実際に足のアライメント、歩き方、痛みを引き起こしている原因を探り、
一人一人にあった足底板を処方することが大切であると当院では考えています。
外くるぶしの後ろが痛いなど、腓骨筋腱炎と思われる症状でお悩みの方は、一度ご相談ください。