子供さんの股関節疾患の一つに「ペルテス病」があります。
この疾患は子供さんの股関節疾患で多くみられる、単純性股関節炎とは違い、
股関節の軟骨に変形が生じてしまう疾患です。
ですので、早めに発見をして治療に取り掛かる必要があります。
このページでは「ペルテス病」とは、いったいどんな疾患なのか、
患者さんの症例を御紹介しながら御説明したいと思います。
上の図は股関節の大腿骨頭の成長過程を表しています。
赤い矢印は大腿骨頭に栄養を運ぶ血管の流れを示しています。
学童期、思春期に至っては骨頭軟骨に対して3方向からの栄養血管が入っています。
しかし、乳児期や中間期の骨頭軟骨には2方向からしか栄養血管が入っていません。
しかも、中間期には骨端核と呼ばれる部分に栄養血管が1方向からしかはいりません。
ですので、この1方向だけの血管からの栄養が途絶えてしまうと、
骨端核に栄養がいきわたらなくなり、成長障害の原因になります。
ペルテス病にみられる症状
ペルテス病の発症年齢は6歳をピークに、だいたい4歳から7歳に多く見られます。
男女比では6:1の割合で、男の子に多見られます。
骨端軟骨の変形によって股関節の運動制限が見られます。
上の写真は右の股関節のペルテス病の患者さんです。
同じように膝を曲げているのに、
患側の股関節は外に開いてしまいます。
お子さんの股関節が上の写真のようになっている場合には注意が必要です!
また、歩き方は下のビデオのようになります。
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このような歩き方になっている場合には注意が必要です!
以下に実際の患者さんの症例を見ていただきたいと思います。
左の写真は10歳の男の子です。
左の股関節が痛むということで接骨院を受診し、
当院を紹介されました。
普段は違和感はなく、野球をすると痛むということでした。
しかし、歩き方を見てみると問題があるということがわかりました。
そして、レントゲンを撮ってみると、
左の股関節に異常が発見されました。(赤色矢印の先)
角度を変えて、レントゲンを撮ってみると、
赤色矢印の先の部分が扁平化していることがわかります。
股関節の隙間も右に比べて広がっています。
健側(右)の股関節は曲げると足が胸に付くぐらいまで深く曲がります。
しかし、患側(左)の股関節は深く曲がりません。
足を横に広げてみると、健側(右)は膝がベッドに付くぐらい広がります。
しかし、患側(左)は股関節が広がりません。
患側(左)だけの動作を見てみると、
踵を外側へ出すような捻り動作は、比較的スムーズに動きます。
しかし、逆に踵を内側へ入れるような捻り動作は、痛みのためにうまく動きません。
このように、ペルテス病の場合は股関節の動きは痛みを伴い、運動制限もはっきりと出てきます。
エコーを撮ってみると、患側(左)の骨頭の幅は健側(右)の幅と比べて
狭くなっていることがわかります。
また、患側(左)の黄色矢印の先に水がたまっている黒い画像が見えます。
MRIを撮ってみると、左右の大腿骨頭の軟骨部分の色が違うことがわかります。
左右の血流が違うために、このような色の差が出てきます。
違う角度からMRIを撮ってみると、患側の骨頭部分に
白い映像(黄色矢印の先)が見えます。
これによって、水がたまっていることがわかります。
骨頭の色も健側と比べると、色がまだらになっていて、
血流が乏しくなってることがわかります。
この患者さんは直ちに医大病院へ紹介し、適切な治療に入っていただきました。
ペルテス病の治療の目的は、少しでも大腿骨頭の変形を防止し、
将来変形性股関節症に移行することを予防することにあります。
一般的には発症年齢が5歳未満の方は予後が良好であるといわれています。
それ以降の発症では、骨頭の壊死の範囲が広くなるにつれ、
予後も悪くなるといわれています。
ですので、早期に発見して、早期治療に入ることが大切です!
お子さんに、股関節の違和感があり、
上の写真のような関節可動域の違いや、
ビデオにあったような歩き方がある場合には、
是非早い目に整形外科を受診されることをお勧めします!