はだしで遊んでいて怪我をしたり、はだしで行うスポーツで誤って足趾をついてしまった時、足趾での骨端線損傷が起こりえます。
手指ほど可動性がない代わりに、足趾は立つ・歩くなど体重がかかる場所なので、骨端線損傷が生じたときには痛くて足が付けないケースもあります。
時には、足趾が変形して、整復手技を要する場合もあります。
このページでは、足趾に生じた骨端線損傷の例をご紹介していきたいと思います。
足趾で見られる骨端線損傷
足趾は以下の図で示すように、骨端線損傷が起こる部位は比較的限られているようです。
主に母趾と小趾に多い傾向がみられるようです。
その理由として、母趾と小趾は他の足趾に比べて、可動性があるため、
はだしの状態でつま先立ちのような姿勢で受傷したり、
小趾だけが物にぶつかって外側へ伸ばされたりする機会に遭遇することが多いからだと思われます。
足趾でおこる骨端線損傷の治療法としては、手指の場合と同様に副子やギプスを用いた固定を2~3週間行います。
受傷時は、体重が欠けれないぐらいの痛みがあっても、固定をすることで、痛みはかなり軽減します。
子供さんの場合、固定が終われば、日常動作へすぐに戻れるので、特別なリハビリもほとんど必要ありません。
では、以下で実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
末節骨骨端線損傷
12歳の男の子です。
右母趾の痛みと腫れを訴えて来院されました。
サッカーをしていて、あやまって地面を蹴ってしまい、受傷されたそうです。
左の写真は、初診時の上から見た外観写真です。
赤色矢印で示した部分に痛みと腫れを訴えておられました。
左の写真は足を横から見たものです。
赤色矢印の部分が痛く、健側と比較しても、腫れていることがわかります。
レントゲン撮影を行ったところ、赤色矢印で示した右母趾末節骨で
骨端線損傷(Salter-HarrisⅠ型)が認められました。
治療としては、アルミ副子での固定を行いました。
基節骨骨端線損傷
13歳の男の子です。
右母趾の痛みと腫れを訴えて来院されました。
陸上競技の練習中、走っていて人にぶつかり転倒し、受傷されたそうです。
左のレントゲンは初診時のものです。
赤色矢印で示した右母趾基節骨に、骨端線損傷が確認できました。
角度を変えてレントゲンを撮ると、
赤色矢印で示しているように、
骨端線にまたがるように骨折線が認められたため、
アルミ副子を用いて、しっかりと固定を行いました。
左のレントゲンは約1ヶ月後のものです。
赤色矢印で示す骨折部は、安定ているため、固定を除去し、
少しずつ運動復帰を許可しました。
角度を変えて撮影したレントゲン画像でも、
骨端線をまたがるように入っていた骨折線は消失しており、
痛みも消失しており、骨癒合が確認できました。
9歳の男の子です。
左小趾の痛みと腫れを訴えて来院されました。
昨日、空手の練習中に、走りこみをしているときに、
マットに足を引っ掛けて受傷されたそうです。
左のレントゲンは初診時のものです。
健側と比較すると、
赤色矢印で示す部分に骨端線損傷(Salter-HarrisⅡ型)が確認できました。
骨端線損傷による転位が大きかったため、
元の位置に戻すよう徒手整復手技を行った後に、
ギプス固定を行いました。
ギプス固定を行った後で、レントゲンで、
骨がきちんと戻っているか確認したところ、
左の赤色矢印で示すように、骨は元の位置に戻っていることが確認できました。
ギプス固定の期間は3週間行いました。
上の写真は初診から約5週間後(11月22日)まで骨折部分の治癒過程を示したレントゲン写真です。
緑色矢印で示している骨幹部骨皮質の仮骨形成が完成し、
痛みがなくなったので損傷部が修復されたと判断しました。
足趾にみられる怪我は、手指ほど変形が見られるわけでもなく、
後に機能的な障害があまり見られるわけでもないので、
捻挫や打撲と判断される場合があります。
しかし、詳しくレントゲン写真で左右の足を比較することで、違いが発見できます。
骨端線損傷と判断できた場合には、早く痛みをとるために、しっかりと固定による治療を行う事を行いましょう!
お子さんが足趾を怪我された時には、安易に考えず、早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。