滑液包炎(かつえきほうえん)は、主に膝の前面や、くるぶし周辺など、
床にずっと座ったりして圧力がかかり続けることでおこります。
上肢では、肘の滑液包炎が最も多くみられるのですが、
今回ご紹介する手首周辺で生じた滑液包炎がどのようにして発症したのかについてご覧いただきたいと思います。
この図で示す圧痛点は、豆状骨の部分を指しています。
普段、ここが痛くなるとすれば、手首の使い過ぎによって生じる腱付着部炎が考えられます。
上の図で示すように、豆状骨に付着する尺側手根屈筋腱の牽引による炎症が、上でいう「腱付着部炎」です。
しかし、この部分が痛くても、今回ご紹介する豆状骨下滑液包炎は豆状骨を押さえると痛いのですが、
尺側手根屈筋腱のように、手首を動かしても痛いわけではありません。
では、どうしてこういった疾患が起こったのでしょうか?
以下で実際の患者さんについてご覧いただきたいと思います。
34歳の男性です。
現在、お仕事でパソコン作業を1日5時間ほどされていて、その際、左手をつくと、写真の赤色矢印の部分が2ヵ月前より痛くなり、来院されました。
パソコン作業をしなければ痛くないとおっしゃっていました。
レントゲン画像では、赤矢印の部分が痛い部分と一致する場所ですが 、特に異常は見つかりませんでした。
そこで、エコー検査を行ったところ、この写真のように、豆状骨上に水溶性と思われる低エコー像が確認できました。
どういう姿勢でパソコン作業をしておられるのか再現していただくと、この写真のように手をついて作業しておられたそうです。
さらに、お話を伺うと、右手はマウスを使うので、ときどき手を動かすこともありますが、作業中、左手をこの位置から動かすことなく、長時間過ごしておられたそうです。
写真で見てもわかるように、痛みの出る赤丸印の部分が、長時間にわたって机と当たり続けている事がわかりました。
ですので、軟らかい素材のパッドに穴をあけ、患部を除圧できるものを作成しました。
パソコン作業のときに、この写真のようにパッドを使っていただくようにしたところ、痛みは消失しました。
こういった疾患は非常にめずらしいのですが、
パソコンを多用する現代社会では、こういった疾患もこれから増えてくるような気がします。
もし、この患者さんと同じ部位が痛むというお悩みをお持ちの方は、
一度上の写真のようなパッドなどをお試しになることをお勧めいたします。