乾癬性関節炎 (かんせんせいかんせつえん)頭皮や全身に赤い発疹を伴う、関節の痛み

乾癬性関節炎とは、皮膚の疾患である乾癬にともなって関節炎を生じた状態をいいます。

関節が腫れたり、動かしにくくなっていて、関節部分にのみに注目されがちなのですが、
この疾患は、皮膚の病気である乾癬に対する治療が必要なので、
最初に来院された時の判断が重要なのです。

一見、関節が腫れて指も動かしにくくなるので、
関節リウマチと誤解されやすいのですが、実は似て非なる疾患です。

このページでは乾癬性関節炎がどういった疾患なのか、
そして、その治療についても御覧いただきたいと思います。

下の写真は右中指の付け根に腫れと痛みがあり、さらに左親指の痛みもあって来院された方の写真です。
特に、怪我等もなく、2か月前から痛みが続いておられるそうです。

上の写真で赤丸印を付けた指の関節が腫れているのがわかりますか?

レントゲンを撮ってみると、明らかに赤丸印の指に関節症がみられます。

血液検査等も行いましたが、頭皮の乾癬の罹患が見られたので、乾癬由来の関節炎を疑いました。

乾癬の好発年齢は5~15歳であるのに対して、
乾癬性関節炎の好発年齢は20~50歳ぐらいであるといわれています。、

欧米では患者さんの男女比はほぼ男女同率であるといわれていますが、
日本では男性例が多いとの報告もあります。

この病気の原因は不明ですが、免疫異常によって起こると考えられています。

また、家族性の発症が多いことから、
何らかの遺伝因子(HLA-B27)が関与していると考えられています。

以下で、症例を御覧いただきたいと思います。

81歳女性、約半年前より皮膚の湿疹が出たので、近くの皮膚科で相談し、

抗アレルギー剤が処方されていましたが、発疹が悪化してきました。

当院では乾癬を疑って、乾癬治療のお薬を投与しました。

投与後、4カ月後の足です。

赤い発疹が消えてしまいました。

この方は、もともと膝関節症の治療で当院に来られていたので、
引き続き膝関節症の治療を続けました。 

次は59歳の男性です。

左足の腫れを訴えて来院されました。

ところが、足背部に乾癬を認めたので、
乾癬性関節症を疑って、レントゲンを撮りました。

一般に、乾癬性関節炎の診断基準には、
明らかな皮膚、爪の乾癬があり、少なくとも一つの関節に腫れと痛みが生じていることがあげられます。

またこれらの症状が、6週間以上続いていることが必須項目であるとされています。 

レントゲンを撮ってみると、左の足指の付け根(赤丸部分)に
関節症が見受けられました。 

他にも罹患がないかと見てみると、膝にも、乾癬を認めました。 

乾癬性関節炎は主に抹消の小さな関節から変形が起こってくるのが一般的です。

他に、関節リウマチとよく似ていて、手関節、膝関節などにも見られるので、

血液検査によって鑑別が必要となります。

この方は関節リウマチの血液反応は陰性でした。

23歳の女性です。
全身の関節の腫脹をともなって、倦怠感もあるので、
当院に治療の相談に来られました。 

別の病院で投薬指導を受け、近くの内科を受診されていたのですが、鎮痛剤だけを投与されているのみでした。

特に膝は1年前から痛みがあり、
階段昇降が辛く、正座はできないとのことでした。

左の写真は初診時の膝の写真ですが、
両膝に腫脹が認められます。

向こうずねを見ると、両足に赤い発疹が見られました。

こういった、扁平して皮膚が赤く炎症をおこしている状態を「紅斑(こうはん)」といいます。

手にも右手に腫れがあり、1週間前より腫れて来て、
指にもこわばりがあります。 

握力の低下があり、お仕事にも支障をきたしていました。

左手の側面を見せていただくと、赤い発疹が見受けられました。

この方は18歳ごろから乾癬と診断されており、別の病院で投薬治療を受けていました。

当院では、今回の関節の腫れは乾癬性の関節炎であると考え、
メトトレキサートと呼ばれる免疫疾患に作用するお薬と、抗リウマチ薬を投与しました。 

こういった皮膚が盛り上がった状態の発疹を「浸潤(しんじゅん)」といいます。

投与後1か月半が経過した時点で、皮膚の赤みは消失して、
両手の腫れも引いてきました。

発疹は白くなって、乾燥した皮膚がポロポロと剥がれおちるようになってきます。

こういった状態を「鱗屑(りんせつ)」または「落屑(らくせつ)」といいます。

しかし、右手の指の関節症変化は若干進んでいました。

右手指の尺側偏位という変形が少し見受けられるようになりました。

一般に、乾癬性関節炎はほとんどが手指や足指の小さな関節から発症しますが、
関節破壊は進行性で、日常生活動作にも障害が生じると報告されています。

投薬後2か月半の写真です。

発疹が白くなってきて、治って来ていることがわかります。

手にあった発疹も、だいぶ良くなって、赤みが引いてきています。

倦怠感も無くなり、体調もだいぶ良くなってきたそうです。 

投薬治療を開始して4ヶ月目の写真です。

首から背中にかけての発疹がほとんど引いてしまいました。 

手の発疹も、ほとんど引きました。 

しかし、指関節の変形は少々残ってしまいました。 

が、全体的症状としては軽くなってきたので、薬の種類を変えました。

投薬開始から半年後の写真です。

乾癬による発疹はほとんどなくなりました。

アトピー性皮膚炎も合併していたので、そちらには塗り薬を処方しました。 

検査の数値に関しては、初診時にはCRP定量が3+でした。

また、滑膜炎の活動状態を表すマトリックスメタロプロテイナーゼが高値を示していました。 

投薬治療開始後、4か月の数値です。

CRP定量の数値はマイナスになりました。

また、滑膜炎の活動状態を示す数値も正常値になりました。

このように、うまく投薬治療すれば、乾癬性関節炎は良好に改善していきます。 

乾癬性関節炎の患者さんは、最初皮膚科に行かれる方が多く、
関節に異変が起こってもなかなか整形外科に来られない方が多く見受けられます。

乾癬症がある方で、関節の痛みが出て何かおかしいなと思われた場合には、
なるべく早く整形外科を受診されることをお勧めします。

どの病気でも同じですが、早く治療に入れば、早く治ります!

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