肉離れはどうやって治すの?

スポーツ動作中に起こる怪我の1つに、『肉離れ』があります。

これは、自らの筋力、あるいは他からの外力によって筋肉が抵抗しきれずに、過伸展して起こる疾患です。

スポーツ現場では、「動作中に瞬時に筋肉が離れた様に感じ、急激な脱力や痛みを伴う状態」と称されています。

このページでは、『肉離れ』のことについて概要をお伝えし、リハビリではどういったことをするのかについてご説明していきます。

肉離れの起こりやすい部位

肉離れは、全身のあらゆる筋に起こりうるものです。

発生頻度が多いとされている筋肉は、ハムストリングス(大腿の後面)が約4割を占めているとされ、次いで下腿三頭筋(ふくらはぎ)、大腿四頭筋(大腿の前面)です。

どのような場面で肉離れは起こるの?

下の図は、ハムストリングが肉離れを起こした場面を表しています。

疾走中に肉離れが生じやすいとされる、ハムストリングスが損傷される一場面です。

疾走中の振り出し動作(①)においてハムストリングスは、収縮しながらも伸ばされるという遠心性収縮(②)を強いられます。このように、強力にストレッチされることでハムストリングスは肉離れを起こすことになります。


上の図は、大腿部を後ろから見た図です。

大腿後面の肉離れで最も多いとされるのは、大腿二頭筋(長頭)です。

この筋肉は、羽状筋の形態をしており、パワーを発揮することに関与するとされています。そのため、より大きな負荷がかかり易いので、他の筋肉に比べて、損傷する頻度が高くなります。

肉離れの損傷度はどのように診断するの?

肉離れは、その損傷度合いは理学所見や画像所見を基に診断します。

上の画像は、エコーを用いて健側と患側を比較したものです。

ハムストリングスの損傷部位(✖︎印の部分)をエコーで診てみると、健側と比べて筋繊維の走行が乱れ、出血と思われる低エコー像を認めます。(黄色矢印の部分)

上の画像は、肩周辺の筋肉の損傷を確認するためにMRI を用いて撮影したものです。

大円筋の一部に出血所見が確認でき、筋繊維に沿って高信号域を認めました。

このようにMRIでは、筋繊維の損傷を広範囲かつ、深層まで確認できる利点があります。

そこで、以下のような損傷度分類ができます。

MRIによる肉離れの分類(奥脇の分類を引用)

上の表は、肉離れを損傷部位の違いによって、TypeⅠ〜Ⅲまでの重症度に分けてそれぞれの治療方針とスポーツ復帰時期を示しています。

このように、肉離れの損傷度合いを確認することは、のちのスポーツ復帰時期の目安となり、復帰に向けたリハビリプログラムをたてることにも役立ちます。

以下で、当院で治療を行った方々の例をご紹介します。

50歳代、男性です。

右大腿後面部の痛みで来院されました。

運動会で走った際、急に大腿後面に激痛を覚え、走れなくなったそうです。

左の写真は、初診時の外観写真です。

大腿二頭筋や半腱様筋の周辺に皮下出血斑と腫脹を認めます。

左の写真は、大腿後面部のエコー検査をした際の画像です。

❌印の周辺で圧痛がみられたので、肉離れであると考えて同部位の状態を確認したところ、筋肉を損傷した箇所に血腫形成を認めました。(黄色矢印の部分)

このように、損傷した箇所の状態をすぐに確認できるのがエコー検査の利点です。


50歳、男性の方です。

左下腿の痛みを訴えて来院されました。

左の写真は、初診時の外観写真で、ふくらはぎに力を入れた状態を診ています。

右側の腓腹筋は収縮して筋肉が隆起しているようにみえますが、左側の腓腹筋は力を入れても筋繊維が損傷されているので、収縮できなくなっています。

また、❌印の部分に圧痛があり、同部位のエコーでは筋肉の繊維配列が乱れていることが確認できました。

治療は、踵を上げた状態で腓腹筋に負担をかけないポジションを保つために、ヒールパッドを用いました。


左の外観写真は、初診から約1ヶ月後の写真です。

初診時と同様にふくらはぎに力を入れた状態ですが、腓腹筋の収縮が確認できました。この時点で痛みは、ほとんど無くなっていました。

しかし、エコー検査ではまだ血腫が残っていました。(黄色矢印の部分)そこで、もうしばらく経過観察することにしました。

左の写真は、初診時より約2ヶ月後のエコー写真です。

血腫は消退し、筋繊維の配列が修復されつつありました。(黄色矢印の部分)この時点で、治療を終了しました。


40代男性、右肩の痛みを訴えて来院されました。

来院の1週間前にテニスのサーブを打つ際に激痛を覚えてから痛みが続いているそうです。

左の写真は、初診時の外観写真です。右脇から上腕にかけて皮下出血斑を認めます。(赤丸の部分)

腕を上げていく途中で、肩の後方部の痛みが増強します。圧痛の箇所から大円筋の損傷を疑いました。


圧痛部位の周辺をエコーで診てみると、血腫と思われる低エコー像が確認できました。

後日、他の肩周辺の疾患を除外診断するためにMRI撮影をしました。

MRI画像では腱板損傷は認めず、大円筋周囲に輝度変化を認めました。(黄色矢印の部分)

肉離れの発症は、柔軟性が欠如していたり、ウォーミングアップ不足で筋肉の伸張性が十分でない場面などで起こり得ます。

そこで、次のページでは肉離れのリハビリテーションと再発予防についてご紹介したいと思います。

PAGE TOP