使い過ぎ、いわゆるオーバーユースによる股関節の痛みは色々ありますが、
「パキパキ」と股関節がなり、痛みが出る疾患があります。
発生の頻度としては少ない疾患ですが、音だけではなく、痛みが強くなって我慢できず、
来院されて、弾発股だとわかる場合があります。
このページでは、あまり聞きなれない「弾発股」という疾患について、以下で詳しくご説明したいと思います。
弾発股とは?
弾発股とは、股関節を曲げたり伸ばしたりする運動に伴って、
その周辺で音がなったり、弾発を起こしている状態のことをいいます。
以下の図で示したように、弾発股のタイプは股関節の外側で起こる「外側型」と、股関節の内側で起こる「内側型」があります。
外側型の方が比較的多く見られます。
また、走ったり、股関節の屈伸が多い職業の方によく見られます。
以下で、「外側型」と「内側型」について詳しくご説明していきます。
弾発股外側型の起こるメカニズム
外側型の弾発現象は、以下の図で示したように、
股関節の曲げ伸ばしによって、腸脛靭帯が大転子部を前後に滑動する際に、
何らかの原因で大転子部でひっかかり、弾発が起こるといわれています。
特に股関節、内転・内旋位で弾発が著明となり、
逆に股関節外転・外旋では、腸脛靭帯の緊張が減少するため、弾発は軽減もしくは消失する傾向があります。
以下は、外側型の弾発股の動画です。
大転子部で腸脛靭帯が乗り越え、弾発が生じているのがわかります。
https://www.youtube.com/embed/-XAHd_I66FU
弾発が起こる原因は、スポーツや職業上のオーバーユースや、内反股や大転子の形態異常、
大転子周辺骨折後の変形治癒など様々です。
弾発が起こると、大転子部に痛みが発生するので、痛みが出ないように小股で歩くなど、疼痛を回避する行動が見られます。
弾発股内側型の起こるメカニズム
内側型の弾発現象は、以下の図で示したように、
股関節の屈曲・伸展動作で腸恥隆起もしくは、大腿骨頭部で腸腰筋が引っ掛かり生じるといわれています。
股関節を屈曲・外転・外旋位から、伸展・内転・内旋位にすると腸腰筋は外側から内側へ、
伸展位から屈曲位にすると、内側から外側へ移動する際に弾発が生じます。
引っかかりが生じるのは上の図の緑○で示した大腿骨頭や、青色○で示した腸恥隆起で起こるとされています。
弾発が起こる原因には、腱の肥厚や腸腰筋滑液包炎など、さまざまなです。
以下で実際の外側型の弾発股の症例をご覧いただきたいと思います。
13歳の男性です。
右股関節の痛みを訴えて来院されました。
2週間前より、走っていて、徐々に痛みが出現してきたそうです。
走る時間や、量が多くなればなるほど、痛みが増してくるとのことです。
大股で走ると右大転子部に弾発現象が見られるとのことでした。
左の写真は、初診時のものです。
赤色矢印で示した×印の部分に痛みを訴えておられました。
左の写真は、初診時のレントゲンです。
右股関節周辺に、骨折や骨の形態異常などは特に見られませんでした。
https://www.youtube.com/embed/-XAHd_I66FU
左の動画は、走っているときに起こる大転子部での弾発現象を再現したものです。
痛みが起こっている大転子部で、腸脛靭帯が乗り越えて、
弾発現象が生じていることがわかります。
また、弾発現象とともに、痛みを訴えておられました。
左の股関節(健側)も同様に確認したところ、
弾発現象は確認できましたが、痛みは特に訴えておられませんでした。
以上のことから、大転子部で腸脛靭帯が前後に乗り越える際に、
弾発現象と、痛みが出現する弾発股外側型であるとわかりました。
痛みを少しでも軽減するために、腸脛靭帯のストレッチを指導しました。
弾発股は、あまりよく見られない疾患です。
したがって、どんな疾患であるのかイメージしにくい疾患です。
しかし、この疾患の存在を知っていれば、十分に対応できる疾患でもあります。
また、音がするからと言って、痛くない場合もあります。
股関節に違和感を覚える場合には、一度この疾患も疑ってみて、
整形外科へご相談ください。