聞きなれない名前だと思いますが、
実は足にあるリスフラン関節と呼ばれる関節の一部分での損傷をいいます。
もともとは足の甲のあたりの捻挫だと思われて、
見過ごされているケースもあったようですが、
詳しく検査をすることで、この疾患がわかるようになってきました。
このページではリスフラン関節部分の構造から、当院で経験したリスフラン靭帯損傷を御紹介します。
上の図で示したように、足の甲の真ん中付近での痛みがあります。
でも、実際は体重をかけた時に痛みが増強するので、
はっきりとどのあたりが痛いのかわかりづらいこともあります。
以下で、この疾患がどういったものであるのか御紹介します。
リスフラン関節は左の図で示したように
足の甲の中央付近にある関節です。
赤い線で示したように、
足の5本の骨と
積み木のように細かい骨で組み合わさった
井桁のような構造をしています。
足のいろんな動きを支える部分です。
横から見た足の骨です。
リスフラン関節部分の頂点の部分は
足のアーチの頂点と一致していて、
この関節が体重がかかった時にクッションの構造を保ちます。
足のアーチを輪切りにして、
正面から見た略図が左の図です。
体重がかかると…。
体重がかかった時には、
②の部分が下がり、
他の部分も広がるようにアーチがさがります。
このようにしてクッションの働きをしています。
足のアーチのたわみは互いに均等になっていて、
走ったり、つま先立ちになったり、
スポーツ動作の中でも重要な役割をしています。
リスフラン関節部分を詳しく見てみると、
それぞれの骨をつなぎ止める靭帯が存在しています。
赤い丸で囲んだ靭帯が「リスフラン靭帯」です。
水色で囲んだ靭帯は
隣り合う骨どうしを互いにつなぎ止めていますが、
リスフラン靭帯だけは斜めに走って、
斜め下にある第2中足骨と楔状骨を連結しています。
どういう時にこのリスフラン靭帯を傷めてしまうかというと、
足がつま先立ちになって、
体重が上から乗る状態で受傷する場合がほとんどです。
リスフラン靭帯が損傷すると、
つなぎ止めていた骨同士の連結が無くなり、
みどり色の矢印の様に骨の間の隙間が開くようになります。
これを「中足楔状骨間離開」といいます。
つまり、靭帯が切れて、
骨どうしをつなぎ止めることができないので、
リスフラン関節部分が不安定な状態になってしまいます。
ですので、アーチ構造が崩れて、
体重をかけた時に痛みを生じます。
レントゲンを撮ってみると、
左の写真のようになります。
赤い丸で囲んだ部分に隙間ができています。
右の健常な足の骨の間隔と比べてみると
違いが良くわかります。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
では、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
14歳の剣道部所属の女性です。
剣道の試合中に後ずさりしたとき、
左足が爪先立ちの状態になり、体重が乗って受傷しました。
足の甲の部分に激痛が走り、試合ができないぐらい歩行時の痛みが強かったため、受診されました。
足の甲が腫れ、
×印の部分に押さえると痛みがありました。
上の写真の×印周辺をエコー撮影してみると、
赤矢印で示した様に広がっていました。
右脚の同じ部分(水色矢印)と比べてみると、
広がり方の違いが良くわかります。
実際に体重をかけてレントゲンを撮ってみると、
赤色の丸で囲んだリスフラン関節部分に
広がりが見られます。
この方には患部の痛みどめをした状態で、
ギプスを用いて隙間を寄せた状態にして固定しました。
約1か月の間体重をかけないようにして、
ギプス固定しながらリハビリを行いました。
ギプス固定解除後は、
左図のような足底板を使って、
1カ月ぐらいかけて体重をかける練習と、
歩行練習を行っていきました。
受傷後約2~3月かけてスポーツ復帰できるようになりました。
次の写真は、骨折を伴ったリスフラン靭帯損傷の方です。
赤矢印で示したように第3・4中足骨の骨折がありましたが、
角度を変えてレントゲンを撮ってみると…。
リスフラン関節部分が広がっていることがわかりました。
(黄色矢印の部分が広がっています。)
この方もギプス固定をして、
体重をかけないようにして治療していきました。
骨折は受傷後約1カ月ぐらい、
リスフラン靭帯に関しては、
先ほどの方と同じぐらいの期間で治癒されました。
リスフラン靭帯損傷は早期に診断して治療に取り掛かれば経過の良い疾患です。
しかし、最初わからなくて、
しばらく放置しておくと靭帯の修復もままならないので、手術に至るケースもあります。
足首のねんざと混同してしまって、軽視しがちなのですが、
力を入れた時に、足の甲が痛い場合には、
一度このリスフラン靭帯損傷を疑ってみてください。
また、そういった場合には、できるだけ早いうちに足の専門医に御相談ください!