デイサービスで、機能訓練をしておられる方の中には、心疾患をお持ちの方も多数おられます。
病院でリハビリをしてから、在宅生活に戻ったら、その後の運動はなかなか習慣付いてできるものではありません。
ですので、デイサービスのような環境で、週に何回か回数を決めて、定期的に運動する習慣をつけて頑張っておられます。
このページでは、どういった運動をどの程度ぐらい負荷をかけて行ったら良いかについてご紹介していきたいと思います。
心臓の仕組みと働き
心臓は左右の心房と心室を持っていて、全身あるいは肺へ血液を送り出すため、強力なポンプの役割をしています。
上の図にあるように、心臓内においては、右側の心房・心室には静脈血が入り、
左側の心房・心室は動脈血で満たされています。
このように、肺でガス交換が終わって、酸素や栄養分を含む血液を全身へ送り出し、
再び静脈血として、心臓に引き込んでくる働きをしています。
血液は、上の図にあるような2つの経路をたどって体中を巡っています。
すなわち、肺循環と体循環に分かれています。
心臓が何らかの原因によって、ポンプの働きとしての機能が低下した場合、
上記の循環が滞ることになり、症状として、手足にむくみが生じたり、動作時の息切れが症状として出てきます。
このような症状が出てきている状態を「心不全」と呼んでいます。
心疾患の概要と症状
心臓に起こる病気の中でも、心臓へ血液を送る冠動脈の障害によって起こる病気は、油断なりません。
下に示したように、狭心症と心筋梗塞は共に胸の痛みを訴えて、非常に重篤な状態に陥ることのある疾患です。
心疾患の中でも、特に多いのは狭心症ですが、冠動脈が一時的に狭窄することで起こり、
心筋への酸素供給がしばらくの間滞るので、胸の痛みや、圧迫感を覚えます。
一方、心筋梗塞は、冠動脈が完全に閉塞してしまった状態であり、
心筋への酸素供給が失われて、心筋は壊死を起こしてしまいます。
症状は、胸の痛みに加えて、呼吸困難や、意識消失などの状態に陥り、迅速な処置を要します。
そのほかの心不全によって出る症状は、上の図の静脈血の流れや、動脈血の流れが滞ることで出てきます。
例えば、左心不全の場合は、全身へ血液を送り出すための圧力が発揮できないので、
血圧の低下や、末梢に血液が十分に届かないチアノーゼが見られます。
また、右心不全の場合は、末梢から戻ってくる血液を心臓がくみ取る機能が弱くなっているので、
浮腫が生じてくることになります。
心不全の治療
心不全がある場合には、全身に巡る酸素の供給量が落ちているので、
運動能力が低下してしまって、すぐに疲れてしまったり、息切れが出やすくなります。
そこで、治療としては、症状を軽くするために投薬をしたり、
根本的に冠動脈の狭窄や、梗塞を治すための手術などを行います。
いったん弱くなった心臓を元と同じように強くすることはなかなか難しいので、
リハビリとしては、再発予防を目的に、身体を動かすことで、
骨格筋をうまく使って、心臓に負担をかけないような負荷で、運動するということが大事になってきます。
運動療法の効果
①骨格筋の筋量が増えることで、筋力もついて、楽に運動ができるようになり、心臓への負担が軽減できます。
②運動による血管への刺激が自律神経の働きを促して、血管が自分で広がろうとする能力が向上します。
従って、動脈硬化の進行を予防できます。
③身体を動かすことで、今まで心臓に負担をかけてはいけないと思っていた不安や、鬱状態が改善し、
快適に生活が送れるようになります。
運動療法の効果
デイサービスきずなでは、グループで行う体操があります。
これは、椅子に座って行うエアロビクスのことで、一般に有酸素運動と呼ばれるものです。
私たちは、以下のようなプログラムを組んで、その体操に取り組んでいます。
上のグラフは、横軸が利用者さんが体操をしている時間で、縦軸が心拍数を示しています。
70歳以上の方が楽であると感じる運動強度は、心拍数がおよそ80~100ぐらいの運動です。
楽すぎても、運動にはなりませんし、きつすぎてもしんどくて効果が出ません。
そこで、初めの10分ぐらいは、準備体操をして、徐々に心拍数を上げていきます。
そして、20分ぐらいの間、声を出して体操をしたり、道具を使った運動をしていきます。
心拍数のピークは、音楽に合わせて行う体操(リズム体操)です。
なるべく、強い疲労感が残らないように、休憩を挟みながら、進めていきます。
その後、5~10分はクーリングダウンをして、息を整えることで、心拍数を落ち着かせてすべての運動を終了します。
このような一連のプログラムを組んで、利用者さんに運動をしていただいています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZM4eZ2PHSpg
レジスタンストレーニング(低負荷トレーニング)
心不全の方に対して、筋トレは負荷を軽めにして行うことが重要です。
理由としては、腕立て伏せや、重いものを息をこらえて上げるような運動は、
急に血圧が上昇して心臓に負担が増えるからです。
そこで、上に述べた有酸素運動の他に、軽い負荷で行う筋力トレーニングは、
筋萎縮の予防や、筋肉量の減少を食い止めるのに効果的です。
低負荷といっても、どれぐらいの強度がいいのかということは、
個人差がありますので、下の表の基準を参考にしていただければと思います。
Borg Scale
指数 (Scale) |
自覚的運動強度 | 運動強度 (%) |
20 | もう限界 | 100 |
19 | 非常につらい | 95 |
18 | ||
17 | かなりつらい | 85 |
16 | ||
15 | つらい | 70 |
14 | ||
13 | ややつらい | 55 |
12 | ||
11 | 楽である | 40 |
10 | ||
9 | かなり楽である | 20 |
8 | ||
7 | 非常に楽である | 5 |
6 |
運動強度が、40%と言われるレベルは自覚的には「楽である」と感じる程度だとされています。
まずは、このレベルでできるくらいの負荷で回数を10~20回、1日2回ぐらいを目標にして見ると良いと思います。
なれてきたら、1週間で3日運動をされてみてはいかがでしょうか?
この程度ならば、心不全を患っておられる方でも、適度な運動になると思います。
以下の動画の運動などを参考になさってください。
https://www.youtube.com/watch?v=rxTAW3VbeTshttps://www.youtube.com/watch?v=ergAx5E9Kg4https://www.youtube.com/watch?v=D4PGOHWsc9Mhttps://www.youtube.com/watch?v=RsTy-XfvHYo
お家でできる心不全の予防
通院・通所をしながら運動することがなかなか難しい方や、
さらにお家でも運動をしたいと思われる方には、下の動画のような運動をおすすめいたします。
ただし、負荷や、回数などは主治医の指導の下で、調整しながら行ってください。
https://www.youtube.com/watch?v=vfYhGHhmm9whttps://www.youtube.com/watch?v=YIP3qIfhNhUhttps://www.youtube.com/watch?v=9Oj0UUxKcJ4
心疾患がある方でも、リハビリは大事です。
身体の調子が優れないときは、決して無理をせずに、できる範囲で動かせるところを動かすという感じで結構です。
気持ち良く、外の空気が吸えるように、無理せず、マイペースで気長に続けていきましょう!