肩の周辺が痛くなって、腕が上げにくくなるなどの症状で多いのは、
いわゆる五十肩や、腱板損傷といわれる疾患です。
しかし、それ以外にも少し違った部位で炎症を起こして腕が上がらなくなるという疾患があります。
その一つに、肩鎖関節症があります。
このページでは、どの部位で起こり、どのような症状があるのかなどをご説明したいと思います。
肩鎖関節とは?
上の図は肩関節を前方から見た図です。
赤い丸で囲んだ部分が肩鎖関節ですが、
この関節は腕を一番上まで上げたときや、腕を水平に動かす時強いストレスを受けます。
ですので、そのような動作を繰り返しているうちに、
関節の軟骨が傷んだり、関節の炎症が引き金となって急に激しい痛みが出る場合があります。
上の図は肩鎖関節症と診断された患者さんの外観写真です。
×印で示した部分に、強い圧痛があり、腕を動かしたときに強い痛みがありました。
上の写真は、同じ患者さんのレントゲン写真です。
赤矢印で示した部分に骨棘が形成され、肩鎖関節の隙間が少し狭くなっています。
このように、小さな関節ですが、繰り返しストレスがかかることで、
他の関節と同様に変形が生じることになります。
肩鎖関節症の治療
炎症が強い急性期は三角巾などで肩を安静にするのが良いと思います。
さらに、痛みが強いので、痛み止めを服用することをお勧めいたします。
それでも痛みが変わらないときは、肩鎖関節への痛み止めの注射が有効です。
そこで、当院では以下のようになるべく痛みが生じにくいように一工夫をした注射をしております。
まず、肩鎖関節周辺の皮下に局所麻酔をします。
これは、肩鎖関節のような小さな関節への直接の注射は内圧を急に高めてしまうので、
まずは、関節部の麻酔効果を得るために行います。
局所麻酔をしてから5分後ぐらいに、肩鎖関節に直接痛み止めの注射を行います。
この手順で行うと、肩鎖関節周囲の炎症を抑えつつ、注射による痛みも無いので、
患者さんにとっては負担が少ない治療を受けていただくことができます。
肩鎖関節症の予後は痛み止めの注射をすることで、痛みはすぐに収まります。
多くの場合、このような保存療法で治ります。
しかし、また腕を上げるなどの動作を繰り返し行うと再発する場合があるので、気をつけてください。
肩の痛みとして肩鎖関節症は他の関節症と比べて、発生頻度が低いため、
最初は五十肩と思われるかもしれません。
ですが、圧痛部位が肩鎖関節に限局しているので、鑑別は容易です。
肩の痛みがなかなか引かない場合には、肩鎖関節症も考えてみてください。