先のページでも出てきましたが、
変形性膝関節症の方が多く訴えられる痛みは
階段昇降時や立ち座りなどの動作開始時におこります。
その主たる原因は、膝の急激な横ぶれ(スラスト)現象によるものです。
では、横ぶれがどのようにして起こるのか、以下で見て頂きたいと思います。
左の絵は、膝の軟骨が磨り減って不安定な状態の膝です。
体重がかかったときに、靭帯が緩んでいるので、骨が外側(←の方向)にずれてしうのがわかります。
このような現象は、歩行開始時や、階段を降りるときなどのように、膝に体重がかかっていない状態から、急に体重がかかるような状態になる場面で見られます。
左のレントゲンは、実際の患者さんの膝です。
このレントゲンは、台の上に座り、足を投げ出した状態(非荷重状態)で撮影されたものです。
骨と骨の間に隙間があって、変形の度合いが一見低いかのように見えます。
しかし、立ち上がった状態でレントゲンを撮ると、骨が左右に横滑り状態になることがわかります。
上のレントゲン写真と同じ患者さんの膝ですが、荷重すると、膝関節が全く違う状態になることがお分かりいただけると思います。
このように、荷重によって骨が横ずれするので、膝が痛むのです。
当院では、痛みが長引いておられる方や、最近になって痛みが強くなりだした方など、
膝の状態をより詳しく調べたいとき、
このように非荷重状態と、荷重状態の膝のレントゲンを撮り比べてより詳しく診断します。
上の膝と人体の絵は「膝の臨床」
メジカルビュー社 p213より引用させていただきました。
では、横ぶれ現象は頻繁に出るものなのでしょうか?
上のグラフは、横ぶれ現象の出現率を表したグラフです。
横軸は右へ行けば行くほど膝関節の変形が進んでいることを表しています。
縦軸は、横ぶれ現象がどの程度でるかということを表しています。
この表からもわかるように、
膝関節の変形が進めば進むほど横ぶれ現象が出てくるということがわかります。
装具療法
上の表から見てもわかるように、膝変形の程度が小さい方と、
変形が大きな方ではかなり症状に違いがあります。
では、変形が進み、膝関節の横ぶれ現象が顕著な方に
どういった治療があるのかということを以下で見ていただきます。
横ぶれ現象がある方には、以下のようなサポーターを処方してお勧めしています。
治療の一環として、サポーターの料金は健康保険でカバーできます。
このサポーターが一般に市販されているものと異なる点は、単なる保温だけでなく、
膝の横に支柱がついている点です。
支柱によって不安定な膝を支えます。
素材はバネ状コイルやアルミ素材を用いているので、軽くて、丈夫です。
このようなサポーターによって膝の横ぶれを止めることで、痛み無く歩いていただくことができます。
どちらのサポーターにするのかは、患者さんに試着していただいて、
使用した感覚の良い物に決めていただいています。
こういうサポーターなどで膝の横ぶれを防ぐことで、痛みを押さえ、楽に歩いていただきたいと思います。
サポーターの写真は、
(株)アルケア社パンフレットより引用させていただきました。
次のページでは「レントゲンからわかること」について見ていただきたいと思います。