尺側手根伸筋腱腱鞘炎

手首の外側が痛むのはなぜ?

手首に生じる腱鞘炎は、ゴルフやテニス等の道具を握り締めたまま

手首をかえす運動を繰り返すことでよくみられます。

一般に腱鞘炎といえば指を使うことが多くなることで生じると思われていますが、

手首をかえす動作を頻繁に繰り返すことが続くことでも生じます。

今回、ご紹介する『尺側手根伸筋腱腱鞘炎』は手関節の外側に生じる腱鞘炎で、

早期に診断して適切な治療を行うことで、良くなる疾患です。

このページでは、『尺側手根伸筋腱腱鞘炎』について詳しくご紹介したいと思います。

尺側手根伸筋腱とは?

尺側手根伸筋腱は、下の図で示すように、手関節の尺側(赤丸印の部分)にある腱をいいます。

この腱は、手関節にいくつか存在する腱鞘区画のうち、

第6区画というトンネルの中を通っており、

尺骨の腱溝(少しくぼんだ部分)の上を通っています。

下の2つの図は、手関節を上から見たものです。

手関節の尺側にある腱鞘は2つあります。

その一番尺側にあるのが、尺側手根伸筋腱鞘で、

その中を尺側手根伸筋腱が滑走しています。

この腱鞘は、手関節の親指側にある腱鞘に比べて、

ゆとりがあり、かなり自由に位置を変えられるという特徴があります。

ですので、発生頻度としては親指側で生じる腱鞘炎よりも少ないといわれています。

上の図は、尺側手根伸筋腱の走行を示したものです。

腱の走行上にはTFCCと呼ばれる靭帯と軟骨からなる複合体が存在します。

尺側手根伸筋腱腱鞘とTFCCは密接な関係にあり、

TFCCが損傷された場合、手関節の尺側の支持機構が破綻するので、

尺側手根伸筋腱にも負担が及ぶとされています。

このように、尺側手根伸筋腱腱鞘炎とTFCC損傷も合併することもあります。

どのような動作で生じるのか?

先にも述べたように、尺側手根伸筋腱腱鞘炎は、

ラケットなどの道具を握りしめた状態で手首をかえすことで生じます。

上の写真は、バットを握った状態で、手関節を背屈(手の甲を上に上げる動作)し尺屈(青矢印の方向)している写真です。

この状態から手のひらを上に向けるような動作を頻繁に繰返すことにより、腱鞘炎が発生し、赤丸矢印の部分に痛みが生じます。

尺側手根伸筋腱腱鞘炎の症状は?

尺側手根伸筋腱腱鞘炎には以下の症状があります。

上の写真は、実際に尺側手根伸筋腱腱鞘炎を発症し、来院された患者さんの手です。

尺側手根伸筋腱腱鞘炎の症状は、①尺側手根伸筋腱の圧痛②尺側手根伸筋腱の腫脹です。

赤丸印の部分に腫脹がみられ、✖️印の部分に圧痛を認めました。

徒手検査法としては、以下のものがあります。

合掌回外テスト

合掌した手を、離さずにそのままゆっくりと下に向けていきます。

その際に、手関節の尺側に痛みが誘発されれば陽性とします。

抵抗下自動伸展・尺屈テスト

上の手順でテストを行った際に、手関節尺側に痛みが誘発されれば陽性とします。

画像診断

画像診断として、超音波検査があります。

上の写真は、黒枠で囲んだ部分を描出したものです。

さらに、拡大した写真が下のものになります。

超音波画像では、尺側手根伸筋腱が少し腫れている所見があります。

(赤矢印で示した部分)

このように、尺側手根伸筋腱腱鞘炎は比較的表層でみられる疾患なので、

診断がつきやすいと思われます。

尺側手根伸筋腱腱鞘炎の治療法は?

尺側手根伸筋腱腱鞘炎の治療方針としては、

まず痛みを引き起こす原因となる動作を休止します。

症状が軽ければサポーターをつけて、手関節の簡易な固定を行います。

痛みが強く、手関節尺側の腫脹がみられる場合は、装具固定や腱鞘内注射を行います。

実際に行なっている固定療法には、以下のようなものがあります。

上の写真は、患部の安静を保つ目的の装具です。

装着期間は、約1ヶ月を目安に日中と夜間につけて経過をみていきますが、

日中の装着が困難な場合は夜間のみつけていただきます。

この装具は、脱着が可能なので入浴も出来ます。

上の写真も、患部の安静を保つ目的で行う装具ですが、

先に紹介した装具と比べて手関節の動きを強く制限するものではないので、

どうしても手を休めることができない方におすすめです。

以上のような、装具療法と並行して指先を使うようなリハビリを行なっていきます。

尺側手根伸筋腱腱鞘炎の経過をみる限りでは、

初診時の腱鞘内注射と装具療法で1〜2ヶ月くらいで痛みが消失しておられると思います。

尺側手根伸筋腱腱鞘炎は、初めは痛みが強くないために様子をみておられる方が多いようです。

しかし、繰り返しの手作業が長く続くことにより医療機関を受診されています。

お仕事や、スポーツなどで手関節尺側の痛みが長く続く場合は尺側手根伸筋腱腱鞘炎が考えられるので、

早めの受診をお勧めします。

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