母指CM関節症

ビンの蓋をあけるときや、コップをもったときなどに親指の付け根が痛むことはありませんか?

こういったときに、親指の付け根が痛む疾患の一つに「母指CM関節症」があります。

なかなか覚えにくい名前の疾患ですが、親指の付け根が痛いという場合にはよく見られる疾患です。

このページでは、「母指CM関節症」について御説明したいと思います。

上の絵にあるように、親指の付け根の関節で生じる変形性関節症のことを「母指CM関節症」といいます。

CM関節とは、手根骨と呼ばれる手首を構成する骨の列と、

指を構成する中手骨との間で作られれる関節のことを言います。

上の図で示した水色の線のようにCM関節は親指側から小指側にかけて存在します。

中でも、母指のCM関節は可動性が大きく、物を握りしめたり、

母指の先で物をつまんだりする動作でCM関節に負担がかかります。

ですので、CM関節での変形性関節症と言えば、「母指CM関節症」ということになります。

母指CM関節症の病態

上の図は、母指CM関節症の原因と、病態について表したものです。

やはり原因として多いのは、手の使い過ぎであると考えられ、
そこへ加齢による関節軟骨の変性が加わって変形関節症になると考えられます。

また、骨折や脱臼などの外傷により、関節が何らかの不具合を生じた時、
その後、変形関節症に移行するケースもあります。

関節症変化が進行すると、場合によっては関節が亜脱臼を起こし、
見た目にも変形している状態がはっきりとわかる場合もあります。

母指CM関節症の診断

上の絵は母指CM関節症を診るときの検査法です。

患者さんの母指を握って、母指の付け根にめがけて軸圧を加えると、

CM関節付近で痛みを誘発することで、診断できます。

湯のみ茶碗や、太めのビンなどを持ったときに、母指の付け根に痛みを誘発する場合にも、診断がつきます。

母指CM関節症のステージ分類
ステージⅠ

レントゲンでの変化はほとんど見られず、関節の隙間が保たれている状態。

ステージⅡ

関節の隙間が、やや狭くなり、関節症変化の兆しとして、骨硬化が若干見られる状態。

ステージⅢ

関節の隙間がほとんどなくなり、骨硬化が進み、骨棘の形成も見られる状態。

ステージⅣ

完全に関節の隙間が無くなり、骨棘の形成も見られる状態。

上のレントゲン写真の表は、母指CM関節症の進行度合いによって分類されたものです。

関節症の状態がたとえ軽度であっても、痛みが出る場合もありますし、
関節症の状態が重度であっても、痛みが出ない場合もあります。

症状の誘発されるような動作をよく行われる場合には、痛みが多くみられるようです。

母指CM関節症の治療
CM関節装具(掌側より)
CM関節装具(背側より)

上の写真は、母指CM関節症の患者さんに対して作った装具です。

来院していただいて、その場で御作りできます。

患者さんご自身の手に合わせて形をとっているので、違和感もあまりないと思います。

取り外しが可能ですので、状況に合わせて取り外して生活に不自由がないようにしています。

できるだけ、関節に負担がかからないように固定したいのですが、
夜、寝るときだけ装具をしていただくだけでもかまいません。

CM関節サポーター(背側より)
CM関節サポーター(掌側より)

上の写真も、患部の安静を保つ目的で行う、CM関節サポーターです。

先に紹介した装具と比べて母指の動きを強く制限するものではないので、

お仕事中や日頃から母指を休めることができない方におすすめです。

2~3週間固定していただくと、当初あった痛みはかなり軽減します。

1~2か月ぐらいで、痛みはほとんど気にならないぐらいにほとんどの方がなっておられます。

しかし、こういった治療を続けても、痛みが強すぎて仕事にならないとか、
日常生活に支障が出る場合などは、手術療法を選択します。

手術の方法は色々ありますが、代表的なものは下の絵にあるように、
CM関節を固定してしまうことで、痛みをなくしてしまう方法がとられます。

では、以下で実際の患者さんについて御覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

57歳の女性です。

左母指の痛みと腫れを訴えて来院されました。

外見上は、母指球部が腫れているのがよくわかりました。

別の角度から見ると、矢印の先で示した部分が腫れていて、CM関節を押さえると、強い痛みがありました。

レントゲン写真を撮ってみると、赤い丸で囲んだ部分が関節症変化を起こしていました。

さらに、別の角度から見てみると、CM関節の隙間が無くなっており、亜脱臼を起こしていました。

母指CM関節症で、グレードも少し進行していたタイプでしたが、固定療法を行うことで、軽快しました。

〜症例2〜

68歳の男性です。

左母指の付け根の腫れと、痛みがあって来院されました。

赤矢印で示したところが、右側と比べて若干腫れているように見えます。

レントゲン写真を撮ってみると、CM関節の変形性関節症がわかりました。

別の角度でレントゲン写真を撮ってみると、亜脱臼していることがわかりました。

この方も、装具を使った固定療法で症状は軽快しました。

〜症例3〜

67歳の女性です。

両手母指の付け根の痛みを訴えて来院されました。

手をよくつかわれるお仕事をされているそうです。

外見上は、それほどはっきりとした変形は見られませんが・・・。

上の写真と同じような角度で撮ったレントゲン写真と比べてみると、母指CM関節の変形がわかります。

特に左側の変形が強く見えていました。

別の角度から見た写真ですが・・・。

赤い丸で囲んだ部分の関節症変化がはっきりとレントゲン写真に写っていました。

この方は、両手のCM関節症であったので、まず、痛みの強いほうの手に固定療法を行うことにしました。

手を使うお仕事をされているので、日中は固定できないので、夜間、装具をして固定していただくことで、

症状は徐々に軽快していかれました。

〜症例4〜

91歳の女性です。両手母指の変形と痛みを訴えて来院されました。

赤矢印で示したところの関節部分はかなり変形していました。

レントゲン写真を撮ってみると、関節の隙間は完全に消失して、亜脱臼していることがわかりました。

さらに別の角度から見た写真では、突出した中手骨によって、母指を伸ばす腱の走行が変わり、

指の先が曲がったままになっていることがわかります。

同じ角度で、レントゲン写真を撮ってみると、

やはり、指の変形はCM関節症の変形が強く残っていたことによって、

中手骨の向きが変わって、指先が曲がってしまっているのだということがわかります。

この方も、装具で固定することで、症状が軽快されました。

母指CM関節症は見た目に変形がはっきりしていたとしても、患部を固定することで痛みが和らぎます。

大多数の患者さんが固定療法を行うことで、症状が軽快していきます。

ですので、心配しないで、まずは病院へ行って、固定療法を行ってください。

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