思春期の子供さんに多くみられるスポーツ傷害の一つに
膝の皿の部分に痛みが出る「有痛性分裂膝蓋骨」といわれる病気があります。
一般には、膝のお皿が分裂しているということはイメージしにくいですよね?
このページでは、この障害の見つけ方や治療の方法についてご説明いたします。
通常この疾患は手術によって分裂部分の骨を摘出したり、骨を癒合(骨をくっつけること)させます。
しかし、当院では積極的に「保存療法」を行うことで、良好な状態で骨を癒合させています。
左の図は分裂膝蓋骨の種類をあらわしています。
Ⅰ型~ⅴ型まで分類されていますが、一番多いのはⅢ型でお皿の外側の上側が分裂していることが多いのです。
分裂しているからといって痛みがあるとは限りません。
繰り返される激しい運動によって、
分裂部分が引っ張られて痛みを生じたり、
分裂部分を打つなどということがあって、痛みがが誘発されます。
この状態が「有痛性分裂膝蓋骨」です。
左の絵は膝の痛みを訴えて来院された患者さんの写真です。
少し右膝が腫れて、お皿の上外側の部分に痛みがあります。
この病気の原因には色々な説がありますが、
成長期に激しいスポーツを続けていると、
膝を伸ばす筋肉(外側広筋)によって繰り返される強い牽引力(青矢印)が作用して、
膝のお皿が割れるのではないかといわれています。
この疾患を発見するには、左の絵のように「打鍵槌」とよばれる道具で膝の上を叩いてみます。
そして、その部位に痛みがあれば「分裂膝蓋骨」の疑いがあります。
また、レントゲンを撮ることで、すぐに分裂部分が確認できます。
リハビリの指導としては、膝周囲の筋肉のストレッチングをおこなって、筋肉の緊張が強く作用しないようにします。
運動を休止することで、痛みは1~2週間もすればなくなります。
しかし、運動に復帰して痛みが再発する場合もあります。
左の写真は11歳の男児でサッカーチームに所属している患者さんです。
右膝の上側の痛みと運動時の違和感を覚えて来院されました。
痛みが出てから1週間ぐらい経過し、当院を受診されました。
レントゲンを撮って、分裂膝蓋骨を確認し、さらにCTを撮影して、分裂部分の状態を詳しく確認しました。
左の写真はCTの画像です。
レントゲンで状態の確認は十分出来ますが、分裂している骨の大きさや、位置関係を知るにはCTが好都合です。
真ん中の白い○の部分が膝のお皿です。お皿の上外側に分裂がみられます。
このCTは膝を並べて足の下側から見た図です。
ですので、左右が逆になっています。
赤丸で囲んだところが、分裂している部分です。
左膝(写真では右側の方)と比べて、違いが分かりますか?
この患者さんに対しては、運動の休止を指導しました。
左のCT写真は治療後3ヶ月のものです。
分裂していた部分がくっついているのが分かりますか?
この時点で、痛みも無く、ジョギングから徐々に運動を始めて、無事サッカーに復帰しました。
現時点でも経過は良好です。
若い年代では、手術しなくても、骨の形成力も旺盛なので、
早期治療すれば、骨の癒合が見られる場合があります。
早期発見が、早期治療につながります。
スポーツをしておられるお子さんで、膝周りの痛みを訴えられる場合には、
早い段階で医療機関へ行かれ、適切な処置を受けられることをお勧めします。