前のページで、MP関節の靭帯損傷について御話しましたが、
同じく、母趾のMP関節でおこる外傷の一つに、
Turf Toe(ターフ トゥ)があります。
痛む個所は母趾のMP関節なのですが、
おさえて痛い場所が、足の裏にあります。
この疾患は、こういった疾患もあると意識していないと、
なかなかわかりにくい疾患です。
今回はこの「Turf Toe」について御覧頂きたいと思います。
上図の赤丸で囲んだ部分が痛みます。足の裏が特に痛みます。
Turf Toeとは、左の図のように爪先立ち状態で上の方向(赤色矢印方向)から過度の力がかかると、母趾のMP関節が過度に伸展され、足底にある靭帯が損傷されてしまうことをいいます。
母趾のMP関節の構造は足の裏に種子骨というクッションの役割をする骨が存在します。
その骨は、足指の骨とプランタールプレートというバンドでつながっています。
母趾の底の構造は種子骨が移動したり、プランタールプレートの伸び縮みがあるので、スムーズな足の蹴りだしなどの動きが可能です。
ところが、左の図のように、アメリカンフットボールや、ラグビーなどのコンタクトスポーツにおいては、踏ん張りながら相手からのタックルを受けることがあるので、つま先の一か所に過度な力がかかり、受傷するケースが多く見られます。
特に、人工芝の環境では、天然芝に比べてやわらかい底のスパイクシューズが用いられるので、左の図の様な受傷シーンが起こりがちです。
フィールドに合わせて、シューズは選ばれますが、
図の左側のグラスシューズ(天然芝用シューズ)はポイントが少なく、地面をしっかりとらえるために、底が硬く なっています。
それに反して、右側のターフシューズ(人工芝用シューズ)はポイントが小さくて数が多く、靴底がゴム系の素材でできています。
人工芝用シューズは衝撃を吸収するために底が軟らかく、曲がりやすくなっています。
ですので、過度に底が曲がってしまい、この怪我の下になってしまいます。
左の写真は一般にいう「トレーニングシューズ」といわれているのですが、シューズの底が軟らかく、衝撃吸収力が高くなっています。
競技を行う環境に応じてシューズは選ばなければなりません。
その環境に合うシューズを選んだとしても、どうしても防ぐことのできない怪我というものもあります。
今回の怪我も、決してシューズが悪いわけではなく、こういった機能の良い靴を履いていても、起こってしまう怪我であるという点を意識しておけば、こういった怪我も早期発見することができるという点です。
重症度を判断しにくい疾患ですが、この疾患の重症度を図るのには、左の図のように母趾を背屈させてレントゲンを撮ると、以下のように状態の判断ができます。
ちゃんと、プランタールプレートが切れずにつながっていると、左の図のように、種子骨は引っ張られて、つま先の方に移動します。
ところが、プランタールプレートが切れていると、左の図のように種子骨がその場に残っていたり、足底の方向へ移動します。
このようにプランタールプレートが損傷されている場合は、腫れや皮下出血も見られ、体重をかけることもつらい状態です。
母趾MTP関節の不安定性の動画
https://www.youtube.com/embed/w2I4d_kph8Y
プランタールプレートの損傷があるので、中足骨に対して、
基節骨が上方へ大きく移動しています。
https://www.youtube.com/embed/x8M1obG0bsw
こちらでは、上方へストレスをかけても、
基節骨は途中で止まってしまいます。
17歳、少林寺拳法部の女性の患者さんの足です。
強く踏み出して足を踏ん張った時に、足の底に自分の体重がかかり、受傷されました。
体重をかけると痛みがあり、動かすとつらいということで、母趾MP関節を固定する治療を行いました。
固定具は足の底が硬くできていて、足が背屈できないようになっています。
固定期間は2~3週ぐらいで、その後テーピング療法に切り替えました。
この患者さんは症状が軽かったので、こういった固定療法で済みましたが、重症の患者さんは、ギプス固定します。
Turf Toeのテーピング
初めに、親指と土踏まずにテーピングします。 (水色部分)
次に、親指から縦にテープを張ります。 (緑の部分)
さらに、土踏まずの中央に向かってテープを張ります。(赤色部分)
赤いテープに交差する形で上からテープを張ります。(紫色部分)
強度が弱い場合には、クロスするテープの枚数を増やしてもかまいません。
最後に、最初と同じように、親指と、土踏まずの部分にテーピングします。(紺色部分)
これで完成です!
こういった疾患は競技特性や、特定の環境で起こりうるということを意識しておくことが大切です。
あまり見受けられない疾患なので、
見つけられにくいという特徴もあります。
足のけがで、このTurf Toeはあまり見受けられない疾患ですが、
コンタクトスポーツを行う方にはありえる疾患です。
コンタクトスポーツをしておられる方で、
足の裏が痛いという方は、一度この疾患を疑ってみてください。
そして、そういった場合には、
足の専門医に御相談ください。