「アキレス腱皮下滑液包炎」とは、
アキレス腱の踵骨に付く付近に炎症を生じて、
痛みが出る疾患のことをいいます。
アキレス腱そのものが腫れてしまうのではありません。
もともと、アキレス腱と皮膚、そして踵骨の間には、
滑液包という摩擦防止のクッション材のようなものが存在して、
それが何らかの原因で炎症を起こしてしまいます。
そこで、このページでは
「アキレス腱皮下滑液包炎」に対する対処法をご説明します。
下のが赤い丸で囲んだ部分に
腫れと痛みが生じた場合、
この疾患を疑います。
発生の原因
この絵は、アキレス腱と踵骨の継ぎ目の部分を表したものです。
アキレス腱は踵骨の一点につくのではなくて、幅広く踵骨隆起のやや下あたりについています。
この部分では、アキレス腱と隆起部分が直接当たると困るので、
この図で示した二つのクッションがアキレス腱と踵骨の緩衝材となります。
また、アキレス腱皮下滑液包は字のごとく、皮膚との境界を埋めていて、
靴などによって、そとから皮膚が刺激を受けてこすれるときに、緩衝材として働きます。
この図は、靴を履いた状態で踵が床についたときに、踵骨の動きがどうなっているのかを表したものです。
靴をはいて歩くと踵骨は上下運動をします。
踵骨が上下運動をするときに、ピンク色の矢印で示したようになります。
そこで、踵を圧迫するような靴をはいていると、
踵骨隆起の部分と、靴の間で摩擦が起こり、滑液包炎をおこします。
また、土踏まずが高い傾向にあると踵骨も高くなり、滑液包炎をおこしやすい傾向にあると考えられます。
実際の症例
〜16歳 女性〜
実際、どのような症状が起こるのか、
以下で見てみましょう。
一般的には10~30歳の女性に好発する
といわれ、
両側性が多いと報告されています。
つまり、ハイヒールを履いておしゃれをする世代に多く見られるようです。
また、スポーツ時にタイトなスパイクシューズを履いたりすると、運動時に痛みをおこすことが見られます。
特に新しい靴に変えたときなどをきっかけに発症することがあります。
写真は16歳女性の患者さんが御来院になった時のものです。
左足の黄色矢印の先と右足の赤色矢印の先を比べてみると、
右足の赤色矢印の先で示されている部分が、腫れていることがわかります。
後ろから見ると、明らかに赤色矢印の先の方が、赤く腫れていることがわかります。
同じ角度のレントゲンを撮ってみると、
赤丸で囲んだ部分が若干骨が隆起して、
皮膚が腫れているのがわかります。
横から撮ったレントゲンを見てみると、
赤色矢印の先に、踵骨がとがっているのがわかります。
そして、土踏まずもしっかりとありますので、アーチが高いことによって、
隆起部分が靴に当たっているのがわかります。
治療はどうするのかというと、
ヒールパッドを入れて、踵骨の角度を変えて、
隆起部分が前方へ角度を変えるように調整します。
(この写真は別の患者さんの写真です。)
〜28歳 女性〜
次は、28歳の女性の方です。
1か月前より営業で歩きまわることが多くなり、痛みが生じて来院されました。
現在履いておられる靴は2カ月前に買われた靴だそうで、外出される際に履いておられたのですが、
仕事で歩くことが増えたことによって、
滑液包炎が起こっていたようです。
別の角度から見てみると、
踵に靴が当たる部分
(黒の×印のついている部分)が常に当たっていることがわかります。
靴を脱いで見てみると、
右踵の外側が腫れていることがわかります。
レントゲンを撮ったところ、
赤色矢印の先にはっきりとした骨の隆起は無いですが、骨と皮膚との境界部分が少し腫れています。
この方には痛い間だけ、靴を変えることを指導しました。
また、痛みが出ないように、別の履きなれた靴を痛む間は履かれるように指導しました。
皮下での滑液包炎は直接幹部にかかる負担を軽減してあげることで、痛みは軽減します。
原因を調べるために、どういった靴を履いているのか、
また、どういう生活をしておられるのかということが重要になります。
ですので、病院に御来院になる場合には、
日頃履いておられる靴を御持参の上、診察を受けていただきたいと思います。
踵の部分の痛みで好きな靴が履けなかったり、痛みが出たりして問題がある方は、
早い目に足の専門医まで御相談ください。