歩くとこんなに良いことがあります! 〜「フレイル」にならないために〜

日頃の体調がなんとなくすぐれなかったり、身体が疲れやすくなったりしていませんか?

少し休んで、元気が戻ってくるならば、心配ありませんが、
長く体調がすぐれない状態が続くのは、もしかしたら「フレイル」といった身体の状態かもしれません。

「フレイル」ってなんですか?

聞きなれない疾患の名前ですが、「フレイル」は、近年高齢化が進む社会の中で、医学会等で
高齢期に生理的予備能が低下することで、ストレスに対する脆弱性が亢進して、
不健康を起こしやすい状態」と定義されています。
海外医学では「Frailty(フレイルティ)」と呼ばれています。

一般に病院や、診療所では「○○病」とか、「○○症」といった、疾患名から病気を定義していきますが、
この「フレイル」はそういった疾患概念にとらわれないものです。

昔は、加齢によって身体が衰えてきたとか、足腰が弱くなってきたのは加齢のせいだなど、
言葉にならない病気ともいえないような身体の状態だと考えられます。

この「フレイル」は要介護状態になる可能性が高まっている状態なので、
注意が必要だといわれています。

どうやって「フレイル」と判定するのでしょうか?
「身体的フレイル」の判定基準

上記の5項目のうち、3つ以上に該当する場合には「フレイル」、
1つもしくは2つに該当する場合には「プレフレイル」の状態であるとされています。

研究発表の中には、「フレイル」と判定された方は、健常の高齢者の方と比べて、
将来に要介護もしくは要支援になる確率が高いとの報告もあります。

また、上記の基準にある身体的な面だけでなく、
独居であることや、他者とのかかわりが少ないなどの社会的な「フレイル」という概念もあります。

いずれにしても、今後介護状態へ移行しないようにするためには、
少しでも早い段階で、「フレイル」の基準から逸脱できるように予防することが大切です。

では、実際にどういうことが予防として効果があるのでしょうか?

歩くことが大切です!

予防策の一つとして、「フレイル」の判定基準である5つの構成要素のうち
「歩行速度の低下」に対してアプローチすることが大切であるとされています。

若者と高齢者の歩行の違い

上の図にもあるように、年齢の違いによって歩行に関連する動作にも違いがあります。

このような歩行動作の違いは、筋力・平行性・身体の柔軟性の低下が原因であると考えられています。

下の動画は、デイサービス内でウオーキングマシーンに乗っていただいた利用者さんのものです。

https://www.youtube.com/watch?v=3yA-QrZIqh8

上の動画では、一見、膝が上がっていないように見えますが、
つま先が上がり踵から接地ができているので歩幅も広く、
スピードに乗って腕ふりもできるくらいに安定した歩行ができています。

https://www.youtube.com/watch?v=PgEmMES-IsM

一方で、上の動画では膝はよく上がっていますが、着地は踵からではなく、つま先から降りているように見えます。

膝が上がっている分、足が前に出ないので、歩幅もせまくなっています。

この歩き方も、膝や股関節がよく動いているという点では良いのですが、
実際に、外を歩くときの歩行姿勢としては、修正する部分があると思われます。

実際に歩くことをしておられる方は、こんな結果が出ています!

デイサービスをご利用いただいている方の中で、日頃から歩いておられる方の事例をご紹介します。

下のグラフは、98歳の女性利用者さんのものです。

2010年から2016年までの体力測定のデータをグラフ化したものです。

歩くことに関連するとされる下肢筋力、バランス能力、歩行能力の3つを評価してみました。

このテストは、下肢筋力を図るために椅子から立ちがある動作が30秒間で何回できたかを示したものです。

上のグラフから、7年間で下肢筋力は利用当初に比べて向上していることがわかります。

このテストは、立位のバランス保持能力をみるために前方へ伸ばした手がどれだけ前に出せるかを計測したものです。

7年間の間で、調子の波はありますが、今もなお手が前によく出せる状態であることがわかります。

このテストは、椅子から立ち上がった瞬間から3m先まで歩いてUターンし、
再び椅子に座るという一連の動作を行うのにどれぐらい時間がかかったのかを計測したものです。

この7年間では、歩行の動作は徐々に時間がかかっていることがわかります。

この方の日常生活は家族と同居されていますが、押し車を使って週に2回程度買い物にご自分で行ってらっしゃいます。

買い物に行く際には、必ず万歩計をつけて行かれます。

そして、デイサービスへ来られた時に、万歩計の数値と買い物に行った時のレシートを見せてくださいます。

こうやって、いつどれぐらい歩いたのかをずっと続けて計測しておられます。

デイサービスでも、歩数を記録して残しています。

以上のように、日頃から自分がどのくらい歩くことができたのかを目の当たりに数値化することで、意欲的に歩くことができ、
それを誰かに伝えることで、ほめられると、さらに意欲がわくという良い循環ができていて、
そういう成功体験が積み重なることで、楽しく人生を過ごしておられるのではないでしょうか?

歩くことで、フレイルの状態にならないように予防して、人生を謳歌しましょう!

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